長い髪と短い髪
風呂上りの混乱も落ち着き、みんなリビングでゆっくりと過ごしていた。
杏里が真奈の髪を乾かし、母さんは何か飲んでいる。
「司兄ももっとしっかりしてもらわないと、こっちが困るよっ!」
ふくれっ面の真奈は俺に何か文句を言いたいようだ。
「いやいや、俺が風呂に入っているのに勝手に入ってきたのは真奈だろ?」
「ちょっと忘れ物取りに行っただけじゃん。急に出てくる司兄が悪い!」
え? 俺が悪いのか?
「真奈が急に入ってきたんだろ?」
「しょうがないでしょ、着替え脱衣所に忘れてたんだし。それとも、真奈の温もりが残った服でも欲しかったの?」
「誰がほしいか!」
「まぁまぁ、二人ともそんなに熱くならないの」
母さんが割って入ってくる。
そもそも母さんが出てこなかったのが悪い!
と、責任転換してみる。
「司君も真奈ちゃんも、少し落ち着いたら?」
杏里まで入ってくる。まぁ、俺は大人だし、心広いし。
「次から気を付けるよ」
渋々真奈に謝る。が、腑に落ちないけどしょうがない。
「そうだよ。司兄の裸なんて見飽きてるし!」
いつの話だ。
「そ、そうなの?」
杏里さん? そこには食いつかなくていいですよ?
「そうだよ! 真奈と司兄は――」
「ストップ! 真奈、それ以上はいい。ほら、髪もそろそろ乾くだろ?」
「ほんとだ。杏里姉ありがとうー。今度は真奈が乾かしてあげるー」
ドライヤーが杏里から真奈にパスされる。
杏里の長い髪がドライヤーの風で舞い踊る。
「杏里姉の髪、長いし綺麗だね。真奈もこれくらい伸ばそうかな……」
「髪の毛長いと結構大変よ?」
「そっか。ねぇ、司兄は長い髪と短い髪どっちが好き?」
ロングかショートか。
うーん、どっちも捨てがたいですよね。
「そうだなー、やっぱり女の子は髪の毛が長い方が好きかな」
「だよね! 真奈も頑張って伸ばそう!」
「そうそう、みんな明日の予定って何かある?」
母さんがみんなに質問してきた。
特に予定とか無いんだけど、明日は近場を回ろうかなと考えていた。
「真奈は特にないよー」
「私は特に。司君何か予定立ててた?」
「んにゃ、特に何も予定はないな」
「だったら明日はみんなで出かけようか。龍一さんが仕事に行った後、みんなでお出かけっ」
突然決まった明日のイベント。
母さんは俺達をどこに連れて行くのか?
「みんなって、真奈も行くのか?」
「もちろん。真奈ちゃんも杏里ちゃんもみんなで行くよ。さぁ、そうと決まれば早く寝ましょう!」
母さんの話を聞きながら、杏里の髪も次第に乾く。
俺の髪は自動乾燥。ほとんど乾いてしまった。
それでも、最後に少しだけ髪にドライヤーをあてる。
「じゃ、おやすみ―。明日の朝はみんなでご飯食べるから、寝坊しないでね」
母さんは先に寝室に行き、俺達だけが取り残された。
みんなで歯を磨き、俺も自分の部屋に戻る。
さーて、明日の為にさっさと寝ますか!
電気を消し、天井には常夜灯だけが光る。
一体どこに連れて行かれるんだろう。
ふと、隣の部屋から話し声が聞こえてくる。
まったく、いつまで話し込んでいるんだ。
明日も早いと言うのに、しょうがないな。
『――で、杏里姉は司兄と、どこまで進んでるの?』
『えっと、真奈ちゃん?』
『ここは妹分として、気になるところでしょ? 司兄のこれからの為にも、知っておかないとねっ』
何と言う会話をしとるんですか!
気になって寝れないじゃないですか!
『ど、どうしても知りたいの?』
『どうしても。教えてくれないと、こうするっ!』
『あ、ちょっと、やめてっ。ぁん、くすぐったい! 真奈ちゃんっ』
『ほれほれ、早く話さないとその可愛いパジャマが飛んでいきますよっ』
『ダメだって、あっ、そこはだめっ。んもー、お返しっ』
『あひゃっ、あはははっ、わ、腋の下はダメー、ご、ごめんなさい! もう、聞かないっ』
『ほらほら、どうしたの? さっきの威勢はどこに? コショコショコショー』
『んっ、ダメだってばー! つ、司兄ぃー! た、助けてー!』
良し、助けを呼ばれた!
ここは男として助けにいかないとダメですよね!
まずは落ち着こう。そして冷静になれ。
すぅぅぅ、はぁぁぁ。
よし、気分は一皮むけたスーパー賢者。
今の俺ならどんな戦場でもいけます!
天童司、青春ど真ん中の男子高校生!
いざ、合戦の地に参ろうぞ!




