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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第三章 愛の旋律

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予選始まる


『それでは、出場する選手はトラックに集合して下さーい』


 夏休みも後半、ついに井上が参加する大会が始まった。

バイトが終わってからの数日間は俺達四人、課題に取り組んでいたが、井上と遠藤はそのまま合宿だった。


 合宿が終わった後も、遠藤は個人的に井上と一緒に何かに取り組んでいたらしい。

ま、詳しくは聞いていないんだけどね!


「遠藤、井上さんは勝てそうなのか?」


 隣の席に座っている遠藤はずっとトラックの方を眺め、井上が出てくるのを待っている。


「勝つに決まっているだろ? どれだけ僕が必死に……」


 すっかり真っ黒になった男らしい姿の遠藤。

気のせいか少しガチっとした体格になっている気がする。


「そっか。初めは予選、その後は決勝でいいんだよな?」


「あぁ、恐らく予選は問題ない。メンバーを予め確認したが、タイムだけ見ると井上さんが負ける要素は一つも無い」


 随分強気な発言するんだな。よっぽど自信があるんだろう。


「井上さん、きっと勝ちますよ」


 遠藤とは反対の席に座っている杏里。

膝の上に手を乗せ、少し心配そうにトラックの方を眺めている。


 選手達がトラックのスタート位置に移動し始めた。

たまたま俺達のいる応援席は選手の控えている所が近く、選手を見る事ができる。

最後に見えたのは井上。


「井上さん! 頑張れ!」


 遠藤が大声で井上に声をかけている。

珍しいな、そんなに大声出すなんて。


「遠藤君! それに姫川さんも! 頑張って来るよ!」


 井上が手を振りながら俺達に向かって返事をした。

そこに俺の名前がなかったことは気にしない。

そう、気になんかしない!


 空いている席の関係で、高山と杉本は少し離れた所に二人並んで座っている。

ふと、そっちを見てみると、なんだかいちゃこらしてるな。

おい、しっかり応援しろよな!


「井上さん! 頑張ってね! 怪我しないようにね!」


 杏里も声を出して励ましの声をかける。

俺も何か、声をかけた方がいいのかな?


「井上さん! 負けるなよっ!」


 井上は、大きく手を振っていたが、最後に拳を大きく上にあげ、トラックに向かって颯爽(さっそう)と走り出した。

きっと、大丈夫。井上だって遠藤だってやる事はやったし、それに遠藤の自信。

予選は軽く突破するだろう。


 選手がコースに着いた。

二百メートル。短いようで長い距離。

半分位がコーナーになっており、各選手が少し距離をおいてスタート位置についている。

後半はストレート。この、ストレートにどれくらいのトップスピードで入れるかがキーになるらしい。

と、遠藤がさっき解説していた。


 選手が全員座り、スタートの準備が整う。

俺が走るわけではないのに、なぜか緊張する。


――パァァン


 空砲の音がトラックに響き渡る。

井上は外側から三番目。見た感じ有利に見えるが、走る距離は皆同じ。

遠藤曰く、このコーナーをどうやって早く走るかがポイントらしい。

普通に全力で走るだけじゃダメなのか?


「いいスタートだ」


 まるで監督のセリフのようだ。

しかし、その視線は熱い。遠藤ってこんなに熱い奴だっけ?


 選手がどんどん近づき、ストレートに入る頃には四人くらい並んでいる。

しかし、ほんの数歩分、井上が飛び抜けている。


「井上さん、このままいけば予選突破だね」


 杏里も手を握りしめ、井上に熱い視線を送っている。


「井上さんだったら大丈夫。ほら、もうゴールするよ」


 トップで通過したのは予想通り井上だった。


「よし、いいタイムだ。この調子だったら優勝も狙えるぞ!」


 ガッツポーズの遠藤。


「良かった、決勝進出だね!」


「だな! 井上なんだかんだ言って、ぶっちぎりだったじゃないか」


 遠藤が俺の方を見ながら何やらニヤニヤしている。


「だろ? 彼女は彼女のスタイルがあるんだ。ただやみくもに走ってはいけない」


 いったい何をどうしたのか?

俺はあまり詳しくはないが、遠藤は結構詳しいようだ。


「遠藤さん、井上さんは決勝でも勝てそうなの?」


 少し遠藤の顔に雲がかかってくる。


「正直なところ相手次第。きっと、僕の予想するメンバーが決勝に来ると思う。二人、井上さんの自己ベスト以上の相手がいるんだ」


 自己ベスト以上の相手。それはきっと、強敵に違いない。

なんせ、自分より速いと予めわかっているんだ。


「だったら……」


 遠藤が走り終わった井上に向けて手を振っている。

井上も遠藤に応えるかのように大きく手を振っているのが見えた。


「本番は何が起きるか分からない。自己ベストを比べても本当に少しの差しかないんだ。運が味方をすれば……」


 遠藤の目が少しつらそうに見える。

口では大きく言っているが、本当は心配しているんだろうな。


「運も実力のうち。今回は遠藤が一緒に練習したんだろ? きっと土壇場でブーストでもするさ」


「運か……。彼女の為に、会長の栄養たっぷりグリーンジュースまで共同開発していたのに、結局飲んでもらえないし、何としても勝ってもらいたいな……」


 ちょ! 開発したのはお前か!

あれはダメだ、栄養があっても飲んじゃだめ!


「そ、そうか……」


 そんな、話をしていると、近くまで井上が戻ってきた。


「突破したよ!」


 笑顔を遠藤に向け、手を振っている。


「おめでとう! 次は決勝だなっ! 頑張れよ!」


「うん、頑張るよ!」


 笑顔で控室に戻っていく井上。

ランニングに短パン、首にかけたタオルがいかにも陸上少女って感じがする。

あの細い脚に小さめの体格。でも、あの速さで走る事ができるのか。


「井上さん、笑顔だったね」


「決勝に行けるのが嬉しいんだろうな」


「決勝か……。なぁ、もしもだよ、もしも彼女がトップじゃなかったら、どう声をかければいいんだ?」


 ここに来て弱気な発言をする遠藤。


「ここで、その発言か?」


「いや、万が一って事もありえるだろ?」


「その時はその時。遠藤が何とかすればいい。今は応援しようじゃないか」


「天童君……。まったく答えになってないね。ま、応援はしっかりするけどさ」


 決勝進出、井上はトップでゴールできるのか?

もし、トップになれなかったら……。

今はそんな事考えたくないな。


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