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クラスで一番の美少女が俺と一緒に住むことになりました  作者: 紅狐
第一章 月が照らす公園の中で
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俺と姫川の将来


 電車に乗り、バスに乗る事一時間と少し。

バスは小高い山の頂上を目指している。この頂上にツインタワーがそびえたっている。

段々と見えてくるタワーは、まさに超高級。きっとこの街で一番高い建物に違いない。

高い建物で、価格的にも高い。


 バスの一番後ろに陣取り、他の乗客は前の方に数人いるだけだ。

この時間はどうやらバスを利用し、タワーに向かう乗客は少ないようだ。


「なぁ、姫川。将来の目的というか、目標ってあるか?」


 俺は今後の事を考え、姫川に問いかけてみた。

勉強ができ、教養もある姫川。今の状況を考え、もしかしたら考えが少し変わったのかと思い、気になって聞いてみた。


「い、今の時点では特に……」


 意外な答えだった。


「じゃぁ、今の学校ってなんで選んだんだ?」


「父にここに入れば良いと……」


「そうか……」


「でもピアノとか、華道とか、着物の着付けとかできますよ!」


「姫川は将来ピアニストとか華道の先生とか、着付け教室でもするのか?」


「え? 特にそんな事は……」


「何でピアノとか習ったんだ? 弾くのが好きだったのか?」


 姫川の目線は正面を向いており、膝の上に乗せた両手は拳を握っている。

そして、少し拳を震わせながら俺に答える。


「ち、父が習っておけと……」


 どうやら習い事も学校も姫川のお父さんが決めたらしい。

姫川は自分自身の事を考えたことなのか、それともそうではないのか。

俺には知る由もない。


「姫川自身習いたかったのか? 学校も今の学校が良かったのか?」


「わ、わかりません……。父はほとんど家にいなかったので、言われたことをその通りにするだけでしたので……」


「そっか。これからは自分で決めないといけないな。まだ俺達は高校一年だ。でも、すぐに将来を決める時期が来る。自分のやりたいこととか、未来の事を考えて今のうちに決めておいた方がいいぞ?」


 キッと目を吊り上げ、俺の方を向きながらやや強い口調で姫川は俺に問いかけてくる。


「だったら、天童君は決めているんですか? 将来どうするかとか、今の時点で決まっているんですか?」


「俺か? 俺は決めてるぞ。だから今の学校にしたし、親にも話している。ただボーっと学校に行ったりバイトしているわけではないぞ?」


 俺の答えが意外だったのか、姫川は俺から目線を外す。


 俺が今の進路を決めたのは、二年位前か、母方の祖母が亡くなった後に決めた。

進路の事は家族に話しているが、学校のメンツには話したことはない。

俺とは違う人種が多く、話しても意味がないし、逆に面倒が増えそうな気がするからだ。


「もし、良かったら私に教えてもらえませんか? 参考にしたいんです」


 さて、どうしようか。言うべきか、言わないべきか、嘘を言ってごまかすか。

これからしばらく一緒にいる時間も多くなる事だし、隠しても無駄な気がする。

姫川だったらクラスの奴に話すことはないだろう。


 もし、話しても姫川がそれだけの奴だったって事で、俺の人を見る目が無かったことが実証されるだけだ。


「参考程度にな。俺はあの下宿を継ぎたい。あの下宿はばーちゃんがやっていたんだけど、数年前に亡くなった。俺はばーちゃんが好きだったんだけど、そのばーちゃんが最後までいたのがあの下宿だ。親は壊してその土地を売ろうと言っていたが、俺は壊したくなかった。ばーちゃんとの思い出が詰まったあの家を残したかった。ただそれだけだ……」


「そ、そうだったんですね……。それが天童君の将来やりたいこと?」


「あぁ、俺はあの下宿を引き継いで、あそこで巣立っていく人たちを見ていきたい。ばーちゃんの葬式に世話になったって、たくさんの下宿していた人が来たんだ。俺の知らない人達ばっかりだったけど、なんかすげー嬉しくてさ。だからあの下宿はまだ壊させない」


 思わず、姫川の方を見て、力説してしまった。そんな自分がちょっと恥ずかしい。

多分顔が赤くなっているだろう。


「いいお婆さんだったんですね。私も一度会ってみたかったです」


 さっきまでの釣り上げた目線ではなく、優しさにあふれた目線に変わっている。

姫川は親戚とかいないって言っていたけど、きっと昔はばーちゃんとかじーちゃんはいただろう。

姫川にもそんな思い出がきっとあるはずだ。


 そんなちょっと恥ずかしい会話をしながら、バスはツインタワー前に止まった。

二人でバスを降りると、目がかすむくらいの高いマンションが目の前にある。

同じ人間なのに、こうも住む世界が違うのか。ここに住む奴はいったいどれだけの金を持っているんだ?


 姫川が先に歩き始め、俺はその後をついていく。

自動ドアが開き、右手にボタンが押せる機械がある。

姫川がその機械を操作し、奥に進む自動ドアが開く。床には赤いじゅうたん。

マンションの中なのに、木が生えていたり、噴水が目の前に見える。ここは遊園地ですか?


 あっけにとられながらも、今度は俺が目線を左右に、首を左右にフラフラしながら歩いている。


「そんなきょろきょろしたら危ないですよ?」


 姫川にそんな突っ込みを貰い、お互い様じゃないか!

と、俺は心の中で叫ぶ。


 エレベーターに乗り、ぐんぐん上がっていく。

最上階は三十階。姫川の押したボタンは二十九階。ほぼ最上階だ。

きっとお高いんでしょうね、地面からの距離も購入費用も。

間違っても俺には手が出ない物件だ。社長令嬢はすごい所に住んでいるんだな。


 エレベーターが止まり、廊下に出るが、ここにも絨毯が。

そして、綺麗にカットされた美しい植木や今の時期にピッタリな花などが廊下のポイントポイントに飾られている。俺の自宅に飾っている盆栽とは比べようがない。


 姫川はこんなお高いマンションから昭和時代の下宿で満足した生活ができるのだろうか?

物凄く不安でしょうがない。


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