神様、初めての人間世界!
神と共に帝国へ行くことになった俺たちは、この時すでに波瀾万丈の予感しかしなかった。
「帝国に行く前に念を押すけど、くれぐれも人間を虫けらのように扱わないように。それとあくまで俺たちは仲間、これからは友人として接するので神様も・・・違った、彼方もそのつもりで!」
(あぁ、問題ない)
「あー、もう!その言葉使いがすでに問題なんだよ。もうちょっと、こう、普通の言い方とか出来ないわけ?
直音も何とか言ってくれよ(笑)」
「お二人とも、この先は何が起こるか分かりません。特に彼方さんの正体がバレないように注意しないと・・・」
(人間どもは神の存在など信じまい。お前たちと同郷の人間と言うことで問題なかろう)
「それなら、彼方と俺は遠縁で、初めて帝都見物に来た田舎者。こんな設定でひとまずは問題ないはず(笑)」
「大将さん、どうして問題ないのですか?」
「田舎者は疎いと相場は決まってるから、彼方のおかしな言動も説明しやすいだろ?」
「そんなに上手くいきますかね?大将さん!」
「うーん。まさに、神頼みかな(笑)」
◇◆◇◆
打ち合わせも程々に、俺たちは神の瞬間移動で帝国に戻った。
「彼方、帝国へようこそ!感想は?それで、先ずはどこに向かう?」
(負の感情に満ちてるな。先ずは普通の人間が見たい)
「うーん、俺たち普通の人間じゃないのかい?まあいいや、取り敢えず帝都に行ってみよう。あそこなら普通の人間、普通じゃない人間と色々いるから一石二鳥だ。それと、ここで転移でもして人目につくと面倒だ。時間は掛かるかもしれないが歩いて向かおう」
「大将さん、その前に寄り道しても良いですか?」
「近いのかい?」
「ここからなら歩いてすぐです」
俺たちは直音の寄り道に付き合うことにした。
◇◆◇◆
「着きました、ここです」
寄り道の行き先がこんな町外れの荒れ地だったとは驚きだ。それより、直音の様子がおかしい。何やら虚ろな表情だ。何かにとりつかれでもしたのか?
「ここが直音の目的地かい?」
ただ目の前に大きめの石が転がるだけで、他には何もなかった。
「ずっと来れなかったのです・・両親と妹の元に」
涙を浮かべた直音に俺は掛ける言葉が見つからなかった。きっと、あの石は両親たちの墓標だろう。
(さぞ、無念であろうな。私からの手向けだ)
神の奇跡で、立派な墓石と鮮やかな花で飾られた霊廟に生まれ変わった。
「彼方さん、こんな立派なお墓をありがとうございます。神様にお墓を授かるなんて、天国の両親もきっと喜んでます」
(人間が入れぬよう結界も施した。安心しろ)
直音は墓前で泣きながら、そして囁いた。
「さようなら、みんな。いつかまた会うその日まで」
神が帝国で最初に見たものは直音の両親たちの墓標だった。
そして知ることになる、帝国の深き闇を。




