神様、そして人間ウォッチング!
子供の頃からずっと憧れていた地上の楽園、それは寿命が縮むほどエキサイティングな場所だった。
一難去ってホッとしたのも束の間。神の奇跡によって、俺たちはまたもや知らない場所に転移していた。
なぜこんな所に来たのかは、まさに神のみぞ知ると言ったところか。
落ち着きを取り戻した俺は、改めて周囲を観察する。これが帝国とはあまりにも違いすぎて、もう笑うしかなかった。
まず、ここの気候は全体的に穏やかで、景観が素晴らしいの一言。それに人間がまるでいない。そもそも人間が絶対に立ち入ることが出来ない訳だから、当たり前の話だった。
なら、どうして俺たちはここに居るのだろう、そんな疑問が頭をよぎった。悪いことが起きなければ良いのだが。
◇◆◇◆
(人間、ひとつ聞きたい)
「何をお聞きになりたいのでしょうか?」
神様を前にすると未だに萎縮する。背格好は俺とさほど変わらないが、威圧感が半端ではない。
それと人間離れした見た目がすでに怖かったりする。
(今の姿はお前たちに合わせただけだ)
「まさか、心が読めるのですか?」
神は何も返答しなかったが、俺は頭の中を覗かれた気がして何だか恥ずかしかった。
「では、神様。本来のお姿を見せて頂けないものでしょうか?」
何を言ってるのだ俺は。相手は友人や家族じゃないんだぞ。気軽に話して良い相手ではないのだ。
(良かろう、冥土の土産に見るが良い)
「えっ、えーと。あっ、あのぉ、まだ冥土なんて行きたくないですけど。しかも手土産付きだなんて・・」
神は表情ひとつ変えずに沈黙したまま、でも確実に何かをしたようだった。ピリピリとした重たい空気が張り詰めたからだ。
次の瞬間、謎の閃光に包まれて目が眩んでしまった。
ボヤけた視界がオートフォーカスさながらに焦点が定まると、もう思考は停止寸前だった。
「・・その姿が本来の・・・そっちの方がよっぽど良いじゃん!」
はっ、しまった。またしてもタメ口になってしまった。それほどリラックスした証拠だろう。
今、目の前にいる神の姿は銀色の長髪以外、人間そのものと言えた。そして男性とは思えないほどの美しさである。
「大将さん、こちらの女性はどなたですか?」
直音はこれまでの俺たちのやり取りを知らなかった。ブラブラとどこか散歩でもしていたのだろう。
「直音。こちらは、神様本来の姿だそうで・・・こう見えても男だ。俺も驚いている」
「そうでしたか。女神様、初めまして。よろしくお願いします」
「あのぉ、直音さん。会話がおかしくないですか?さっき男って言いましたけど!」
この直音の度胸と言うか天然さに呆れてしまう。
(余興がすぎた。話を進める)
「神様、お話と言うのは?」
(人間をどう思うか?)
「どう思うって聞かれても・・」
「私は・・・これ以上生きるのが辛くて崖から身投げしました。正直人間は怖いです。今まで、自分さえ良ければ他人なんかどうなっても良いって人しか出会いませんでした。だから大将さんが私の初めての人です」
「ば、ば、ば、ば、バカなこと・・じゃなかった、誤解を招く言い方は良くないぞ、直音」
爆弾発言のような直音の言葉にチョッピリ焦ったけど、もしそうなら嬉しいなとも思った。
「神様、こんな事を聞いてどうするのですか?
人間の事がお知りになりたいのでしたら、ぜひ帝国にお越しください。きっと衝撃的ですよ(笑)」
(百聞は一見にしかず、行ってみよう)
「えっ?冗談のつもりで言ったのですけど、まさか本気で行かれるおつもりですか?」
(無論だ)
「それでは、神様。失礼ながら言います。
いくら神様とは言え、人間の世界で今までのような横柄な態度ですと、面倒事になりかねません。俺のような普通の言動でお願いします。
それと、許されるのでしたら、友達のように接して頂けると幸いです」
かなり変な言葉使いだったが、俺の言いたいことは伝わったはずである。
(わ、分かった。が、頑張るじょ!人間のつもりでな)
「あははは。神様、頑張るじょ!はないわ(笑)」
(そうか、よろしくたのむ!)
「大将さん、神様って呼び方もまずい気がしますが・・・」
「おっと、そうだな。なら彼方と呼ばせてもらうぞ」
(かまわない。僕も大将、直音、と呼ばせてもらうから)
◇◆◇◆
とにかくこんな調子で、たとえ演技とは言え、神様と友達っぽく振る舞える幸運に恵まれた俺たちは、急ぎ帝国へ戻ることになった。
神をも恐れぬこの罰当たりな言動は、きっと地獄行き確定だろうな、と今更後悔した。