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楽園天国・・・


俺たちが聞いた変な声は、場所を移すと言っていた。いきなりそんなことを言われても皆目見当がつかなかった。


「誰だか知らないけど、どこに連れていかれるんだ?」


返事はない。俺は隣にいた少女に話しかけてみた。


「君、無事だったんだね。俺は悶絶して死ぬかと思った(笑)」


「あなたはどちら様ですか?」

少女は溺れ死ぬところを救ってくれた恩人のことなどすっかり忘れていた。


「あぁ、俺は君が溺れているところを助けたんだけど」


「その節はありがとうございました。スミマセン、何もお礼は出来ないのです。私はあのあと、崖から身投げして死んでしまったようですから」


「???」

死んでしまったようですと言った少女の言葉に俺は自分も死んでいると錯覚した。


「ここは天国です、きっと。神様が教えてくれましたから」


「神様?君、神様が見えるのかい?」

俺は興奮して捲し立てた。


「いえ、声を聞いたんです。神様の」


「神様の声を聞いたって?それは凄い!それで神様は何と?」


「あなたは、私みたいな奴隷の言葉を信じてくださるのですか?」


「奴隷も何も、いつだって誰の言葉だって俺は信じるさ。おかげで身ぐるみ剥がされて文無しだけどね(笑)」


「うふふ、すごく嬉しいです。誰かに話を聞いてもらったのは何年ぶりだろう。それに、笑うのも。ありがとうございます」

少女は自分が死んで気持ちが楽になったこと、俺に出会えたことを感謝しているようだ。


「こっちこそ、ありがとう??俺たち、どうやら死んでるみたいだし、今更何があっても驚かないけどね(笑)」



(人間、本当に驚かないな?)


俺の頭の中に、突然声が届いた。


「うわぁっ!」

俺は自分で驚かないと言いながら、いきなりうろたえてしまった。


「どうしました?」


「頭の中に声が響いてきたんだ。これには流石の俺も驚いた(笑)」


「それ、神様ですよ」


「本当かい?もしそうなら嬉しいな!

おっと、自己紹介がまだだった。俺は小山野 大将、楽園に憧れる18歳、よろしく!」


俺は簡単に自己紹介をしてみた。


「えっと、私は奴隷の伊興直音いこうすぐね、すぐねと呼んでください、ご主人様。それと何でもお申し付け下さい。年は17歳になります」


少女は照れ臭そうに自己紹介してくれた。


「ご主人様はよしてくれ。俺のことは気軽に大将と呼んでくれ」



(人間、そろそろ良いか?移動するから目を閉じろ)


「目を?分かった」「はい閉じます」


「それにしても偉そうな奴だな」

「神様ですし、この世で一番偉いのでは?」

「そりゃ確かに、偉そうで当たり前か(笑)」

「大将さん、偉そうではありません。偉いのです」


そして薄れ行く意識の中で最後に覚えていることは、身体中の力が抜ける感覚だった。

きっとこれが天罰と言うものなのか・・・。


◇◆◇◆


(人間、目を開けろ)


「ここはどこだ?」

俺はこの世の物とは思えないほどの美しさに、ハッと息を呑んだ。同時に嫌な予感もしていた。


「大将さん、きっとここが本当の天国ですね」


「直音もそう思うか?俺もそんな気がしてたところだ」


(ここは天国などではない。我が故郷、アクセル王国だ。人間ごときが足を踏み入れるなど決して許されぬ場所だ)


「アクセル王国?うーん、どこかで聞いたような気が・・・ま、ま、まさか、あの楽園??」


「大将さん、アクセル王国とはどのあたりなんでしょう。帝国の隣りですか?」


「直音、アクセル王国は地図にはないんだ。俺がずっと憧れてた神々の国さ」


「神様の国?それを天国と言うのでは?」


「直音、直接本人に確かめてみようぜ。えーと、神様・・の眷属の方?本当にここはアクセル王国なのか?あと、姿を見せてくれるかい?」


「大将さん、そんな聞き方では神様に対して失礼ですよ」

「大丈夫、どうせ神の眷属だろ。それに神が直々にお出迎えなんてあり得ない。だからバチは当たらないと思うよ(笑)」


(良かろう、姿を見せるとしよう)


俺はどんな姿が飛び出すのかワクワクしていた。

淡い光が一点に集まりだし何かの形をなして行く。おぼろげではあったが、姿が見え始めてきた。


その出で立ちに俺は死を覚悟した。


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