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神様、そして女神候補あらわる!



帝国軍が目前に迫っているとは知らず、俺たちはマーズ国を散策していた。やはりと言うか、この国にも人間の醜い闇が散見された。一つずつ解決したのではとてもじゃないが時間が足りない。もっと手っ取り早く世直しする方法は無いものかと俺たちは模索していた。


◇◆◇◆


「アリシア殿下。このような場所で、しかもお一人で何をなされているのでしょうか?」

帝国の将校が偶然にもアリシアを発見してしまった。


「帝国では手に入れられない貴重品を見つけにお忍びで来ております」


「警護の姿がありませんが?」

「兵は目立ちすぎるゆえ宿に待機させておきました」


「マーズがいくら治安の心配が少ない国と言われましても、御身のために護衛だけはお連れくださいませ」


「ありがとう。あなたがここにいると言うことは、まさか、もう全軍到着してしまったのですか?」

「はい、すでに国境付近で攻撃準備を整えております。殿下、急ぎの用ゆえ私はこれにて失礼いたします」


アリシアが血相を変えて戻ってきた。


「大将殿、帝国軍が国境付近で攻撃準備を整えております」


「何だって?やはり帝国軍はマーズ国に進行して来たか。あれ?老婆はもう居ないわけだからこの国の名はどうしたものか(笑)」


「兄ちゃん、そんなに慌ててどうした?」

「果物屋のおやっさん、実は相談があるんだけど。この辺で若くて器が大きく慈悲深く信頼できそうな人物に心当たりはないかい?」


「若いのに難しい言葉を使うな。うーん、そうだなぁ、いるぞ、ピッタリのが!」


「そいつは男かい?女かい?」

「聞いて驚け、見て腰抜かせ、なんと女神も逃げ出す絶世の美女よ。でもよ、女だと何か問題でもあるのか?」


「問題ない、どこに行けばその人に会える?」

「ちょっと待ってろ。おーい、ロクサーヌ。ロクサーヌはいるか?」


「ちょっと待て、まさかとは思うが。おやっさん、あんたの娘じゃなかろうな?」

「おうよ、器量よし働き者でしっかり者。母親代わりも努める文句なしの娘じゃよ(笑)」


あまりに出来すぎた話に、何だか目眩がしてきた。


「おーい、大将!そんな所で何やってるんだ?」

帰りが遅い俺の元へユミたちがしびれを切らしてやって来た。


「ユミか。帝国軍が国境付近で攻撃準備を整えたようだ。それとな、老婆が居なくなった今、この国の新たな王を探してるところさ(笑)」


「何だと?どうしてそんな面白そうなことを私に黙ってこそこそと!実にけしからんぞ!(笑)」


相変わらずユミは変なところでスイッチ入るなぁと感心する俺だった。


ふと見ると、店の奥から12~3才になろう少女が顔を覗かせている。おやっさんの戯言だ、と高を括っていたが、なるほど幼女とも美少女とも見える愛くるしい少女だ。


「パパ、呼んだ?」

「おぉ、ロクサーヌ!この兄ちゃんがお前に用があるんだとよ」


「初めまして、私はマハンムドの娘でロクサーヌと言います。私にどんなご用でしょう?」

幼い容姿の割にはしっかりした応対だ。


「俺は大将。いきなりだが、この国の名前を教えてもらえるかい?」

「えっと、ここはマーズ国の首都マーズですが・・・知らなかったですか?」


「知ってるさ、だがそれも昨日まで。マーズは俺たちがやっつけちまったんだ」

「何だって?兄ちゃん、それ本当か?でもどうして?」


「話せば長くなるが、要約するとマーズは俺たちの仲間を暗殺しようと企てた首謀者だったんだ」


「ありゃりゃ、そいつは大変だったな。そんで、兄ちゃんはうちのロクサーヌを見た目通り女神様にでもしてくれんのか?(笑)」


親バカの極みだが悪くない読みだ、さすがは商人と言ったところか。


「さすがおやっさん。話が早くて助かるよ」

「本当か、ほんとに本当なんだな?ロクサーヌが女神様かぁ、死んだ母ちゃんにも自慢できるぞ!」


「但し、条件がある・・帝国・・」

「皆まで言うな。早い話、兄ちゃんの嫁にすりゃ良いんだろ?」


「違ーう!今、帝国軍はマーズ国境付近で攻撃準備を整えている。俺たちはそいつを阻止するからロクサーヌにも同行してもらう。そこで女神としての資質を見極める」


「どうだロクサーヌ、今の話。行く行かないはお前自身が決めろ」


「もうパパったら。お嫁さんに行けだなんて・・・まだ早いわよ!」

「ロクサーヌ、お前もか!全く、親子でボケるのも大概にしろ(笑)」


「あたし、行く。実際、この目で見てから決める」

「よし決まりだ。もう一度言っとくが嫁の件じゃないぞ」


「はい、お兄ちゃん!」

「今度はお兄ちゃんときたか。まあ良い、早速出発だ!おやっさん、ロクサーヌを少しの間、借りてくぞ」


「大将の兄ちゃん、うちの大事なロクサーヌを傷物にせんでくれよ(泣)」

「そんなことせんわ!まったくあんたって人は、もう(笑)」


そんなこんなで俺たちはロクサーヌを連れ、旧マーズ国境付近に向けて出発したのである。


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