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神様、女神 vs. 堕女神を傍観


「あら?ここはどこでしょう」

アリシアはキョトンとした表情で俺たちの前に現れた。


「突然、乱暴な方法でお呼び立てして申し訳ありません。少し、お話でもしませんか?」


「えっ、お話ですか?あまりお話すようなことはありませんが・・・そうですね、では少しだけ」


「長々とお引き留めするのは野暮かと思いますので単刀直入に聞きます。なぜ帝国を滅ぼしたいのです?」


「何故、いきなりその様なことをおっしゃるのかしら。滅ぼしたいなどとは・・・」


「では、次に。お父上である皇帝、それにご兄弟たちまで殺害して何をお望みか?」

「・・・そこまでお知りでしたか。最初に会ったときから少しだけおかしいと感じてました」


「若様、少しだけですが容姿と性格がおかしいのだそうですよ」

「ほっとけ(笑)俺たちで良ければ力になります。だから全てお話し下さい」


「はい。あなた方を信じてみます」


アリシアは事の顛末を話した。それによれば、帝国の、いや、人間の心の醜さに耐えられなくなったそうだ。身分や差別、権力闘争、そうしたしがらみを幼い頃から目の当たりにしてきた彼女は、皇女としては落第だが、人としてはこちら側のような気がする。


「アリシア、かつて俺の故郷は帝国に滅ぼされてしまった。今さら仕返しをしたいとは考えてないけど、せめてこの世の闇は取り除いてやりたいって思う」


「私たちはたくさんの闇を見てきて、そして体験した。だから、良かったら共に革命を起こそうではないか」

ユミが熱く語るなか、直音の表情だけは曇っていた。


「みなさん、注意してください。このアリシアさんは危険です」

直音の暗い表情の謎が解けたが、何が危険なのかさっぱりである。


「どういう事だ、直音。話の分かる姫ではないか?大将からも何とか言ってくれ!」


「ユミ様、直音様、お下がりください」

楓が臨戦態勢で二人の前に躍り出た。


「そこの小娘、よくぞ気付いたな!」

アリシアの身体が赤く光ると、中の魔石が体内から飛び出してきた。声の主は後ろに隠れていた例の老婆だった。


「ようこそ皆さん、お揃いで。またお会いしましたね、ミライ様、彼方様」


「お前は老婆!」

「若様、マーズ様です。老婆だなんて、いくらその通りだからって失礼すぎますよ」


「やはり、あなただったのね、マーズ。懲りないものね。昔から欲の塊で、ほんと劣悪な人間そのものだわ!」


「そうとも、私はこの世の全てが欲しいのさ。その為に娘を操り、負の感情で魔石を満たして覚醒までさせたのじゃからな。これさえあればあの頃の力、神々に匹敵する力が我が手中に!さすればもう怖いものなし!」


「そこのウジ・・・大将、あなた方は下がりなさい。この始末は私がつけるわ」

驚いたことにミライ様が俺の名を呼んでくれた。ちょっと感動ものである。


マーズから膨大なエネルギー反応を感じる。なにやらヤバそうな雰囲気だ。


「彼方、人気のない場所に急ぎ俺たちを転移させてくれ。このままじゃ周りの人も巻き添えになっちまう」


(分かった、行くぞ!)


◇◆◇◆


危機一髪、俺たちは人気のない砂漠に転移した。

マーズの手からミライに向け閃光が放たれた。ミライに直撃してしまったではないか。


「ミライ!」

「ゴミ・・・大将。あなた、イチイチうるさいわよ。全く問題ないわ。いいこと、冥土の土産に本物の女神の力を見せてあげる」


ここにいたら、本当に冥土の土産になりそうだった。


「マーズ、苦しまないよう一瞬で終わらせてあげるから感謝なさい」


ミライは空高く舞い上がると背中から美しい羽根を広げて輝き始めた。その神々しさに改めて神なのだと実感した。そして同時にあまりの美しさに目を奪われていた。


「うわぁー、おのれミライめ!」

マーズの身体を光の球が包みこむと、苦しそうにもがき始めた。


「これで終焉よ、醜き魂よ消えなさい。永遠にね!」


光が消え、同時にマーズの姿も跡形なく消滅していた。


「ミライ、あの老婆はどこに行ったんだ?」

「どこにも行ってないわ。文字通り消滅したのよ」


それにしても本当に呆気ない幕引きとなった。神様の力は人知を越えてるとは分かっていても目の当たりにすると凄まじいものである。


「ミライ様、本当にありがとうございました」

「もっと早く神の存在に気付いたなら、大勢の人間をお救い頂きたかった。でも、こうしてお会いする機会に恵まれ、私は幸福者です」

ユミと直音はそれぞれ感謝の意を示した。


「ミライ様、この度は若様をお助けくださり感謝の言葉もございません」


「あれ?アリシアの姿がどこにも見当たらないぞ」

「若様、先ほどまでそちらにおられましたが・・・」


忽然と姿を消したアリシア、一体どこへ行ったのだろうか。俺たちは付近を探してみたが、どこにもいなかった。ただ、魔石のみが地面に転がっていたので悪用される前に回収しておいた。


自称女神を失ったマーズ教会はどうなったのだろうか。ちょっとした興味から覗いてみることにした。


◇◆◇◆


「おや、あん時の兄ちゃんじゃねぇか。どうした?」

果物屋のおっちゃんだ。


「最近、マーズ教会に何か変化はあったかい?」

「それなんだがよ、おかしな事もあるもんで教会の門が閉ざされたままなんだよな」


どうやら教会は機能してないらしく、俺は少しホッとしていた。


「若様。あそこにいるのはアリシア様ではありませんか?」


楓がアリシアを発見した。護衛は誰もいなく一人ポツンと歩いている。


「おーい、アリシア!」

「あなたは・・・どちら様ですか?なぜ私の名を存じているのですか?」


「アリシア、俺たちはさっきまで一緒にいたじゃないか!」

「そう言えば・・・そんな気がするような」


(魔石を取り出された影響で一時的に記憶が混乱しているようだ)


「アリシア、お前は帝国のありように疑問を抱き苦悩する心優しき女性だ」

「・・・そうでした、可能な限り民を守らねば。あら、あなた方は先程の」


「思い出したのか?俺たちはお前の力になると言ったばかりだ。アリシア、俺たちに何を望む?」


「やはり、民を虐げる帝国の権力者を改心させなくてはなりません・・・」


俺たちが世界を支配して再構築することも視野にいれたが、それは最後の手段だ。その前に帝国の様子を見ておこうと思う。


◇◆◇◆


「皇帝陛下、間もなくマーズ国境に差し掛かります」


「そうか、いよいよマーズ国もわが手中に(笑)

全軍停止、攻撃準備を整えさせろ。攻撃命令があるまでは待機せよ!」


帝国軍は本格的な攻撃を仕掛ける準備を整え始めていた。



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