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神様、スラムGUY!


貧民街に来た俺たちは、いきなり衝撃を受けた。

そこは廃墟と化した建物が延々と続き人が住むには厳しい環境だ。

周囲にはゴミが散乱し、昼間でも薄暗く閑散としている。


服と呼べる物は見られず、代わりにボロ布をまとった不衛生な人が沢山目に付いた。


俺たちはそのまま奥に進んで行った。すると餓死寸前の女に遭遇した。


「あの、どうされたのですか?」

直音はその絶望感にすかさず声をかけたが、もはや彼らはマトモな返事が出来なかった。


「・・・水、水を・・・」

「申し訳ないが今は手持ちがない。それより、お前たちの他に誰かいるか?」

ユミも見るに耐え兼ねて話しかけた。


「この先に・・・大勢・・・い・・・る・・・・・・・」

これが女の最後の言葉だった。


「大将。なんなのだ!ここはまるでヴァルハラではないか!」


怒りをあらわにするユミ、俺は他に動けそうな人がいないか大声で呼び掛けてみた。

するとどうだろう、ものすごい数の奴隷が地を這って来たのだ。


「俺はもう少し奥を見てくる、この場は頼んだぞ」

「おい、大将!勝手な行動は慎め」


ユミは憤り彼方に詰め寄っている。


「やはり昔から世界はこうなのか?」

(ああ。常に権力者が民を虐げていた)


「神の加護とかで何とかならないのか!」

(無理だ)


◇◆◇◆


奥に行くほど状況は凄惨であり、死体の山には無数のカラスが群がっていた。


「動ける者はいるか?」

かすかなうめき声は聞こえたがマトモな返事はなかった。むしろ返事が出来ないと言うべきだろう。


「・・・さっきの・・・兄ちゃんか?」

どこかで聞き覚えのある声がした。俺は辺りを見回した。


「誰かいるか?」

「助けて・・・兄ちゃん」


この声は。確か、直音とぶつかった泥棒少年のものだ。腐敗した人の山に押し潰されるように少年は横たわっていた。


「やっぱり、さっきの兄ちゃんだ。あの時は悔しくて言えなかったけど、一緒にいた姉ちゃんにもゴメンよって伝えてくれないか?俺は・・物心着いたときからずっと奴隷・だったから、今度・・生まれ代われたら・・奴隷じゃなきゃ・・良い・・・・な(泣)」


「おぃ、しっかりしろ!」

少年は涙が溢れる目で俺を見つめている。涙が枯れると共に絶命した。

他の奴隷たちから暴行を受けたのだろうか、死因は不明である。


俺は出来事を日記に綴った。


◇◆◇◆


急ぎ、彼方の元へ走った俺は奥の様子を説明した。


「彼方、この世界はどうにもならん。いっそ、俺たちで革命でも起こすか?」


(革命か、悪くない。だが、私が介入すれば一方的な大量虐殺となり革命とは呼べまい)


「おいおい冗談はさておき、現実的な話だとやっぱりどこかに楽園を創るしかないか・・・」


(楽園とて人間が住めばここと同じになる)


「ちょっ、ちょっと待て、お前たち。楽園を創るだと?そんなこと人間の力で出来るわけないじゃないか!」

「ユミ、落ち着けって」


「・・・若様・・・若様」


誰かを呼び止めるような声がした。


◇◆◇◆


一方、城下では異変が起こっていた。

いくつもの空砲が響き、城下の至る所に帝国の旗が掲げられた。

その様子は、俺たちがいる場所からも見えた。


「皇帝の勅命により全軍出陣する。皆の者、道を開けろ!」


ついに帝国は他国侵略に踏み出した。この報に接し、ある者は興奮し、またある者は嘆き悲しんだと言う。


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