神様、いざ帝都へ!
清々しい青空に迎えられた朝。
昨晩の事は誰一人として口にこそしなかったものの、それぞれの胸中はとても複雑な思いだろう。
「おはようございます!!!」
眠気も吹き飛ぶ直音の爽やかな声で俺たちの一日は始まった。
「昨夜は取り乱してすまなかったな!」
ユミは何かが吹っ切れたのか、挨拶がわりに照れくさそうな面持ちで応じる。
「ふわぁー、おはよう。みんな早起きだな。せっかくだから、このまま出発しよう!」
部屋の雰囲気から昨晩の一件は大事に至らなかったようだ。
逆に話を蒸し返して余計なトラブルを誘発しないよう、慎重を期して帝都へ向かうことにする。
◇◆◇◆
ここまでの道中に不穏な動きや怪しげな気配は無く、和気あいあいと会話が弾んだ。
しかし、そんな和やかなムードもそう長くは続かず、いつしか沈黙が続いていた。
「なぁ、大将。ちょっと良いか?」
最初に沈黙を破ったのは、険しい表情のユミである。
ドサクサに紛れて呼び捨てにしただけでなく、周りに悟られないよう小声で囁く念の入れようだ。
俺は直感的に嫌な予感しかイメージ出来なかった。
「昨夜の件も含めてお前に聞きたい事がある。この期に及んで隠し立ては許さぬぞ。まず、なぜこの時期に帝都なんかに行くのだ?」
ユミは俺たちの事情やもちろん彼方の正体を知らない。
「帝都なんかに」と少しトゲを含んだフレーズがどうも引っかかる。
「一言で言うなら、この前、久しぶりに彼方に会ったんだ。そしたら帝都に行きたいと言うから見物がてら案内する事になり、直音も行きたいと言い始めたから、今俺たちはここにいる(笑)」
全然一言になってないのは真相を伏せるためであって、パニクって支離滅裂なのではない。
「今の帝都はこの国で一番腐ってると聞くが、それを承知で行くのではあるまいな?」
「そんな話、聞いた事も無い。それに知ってたなら行かない」
・・・そうか、なら丁度良い。なおさら彼方に見せるべきだろう・・・。
俺はそんな風に頭の中で考えていたつもりだったが、どうやら無意識のうちに口にしていたようだ。
「丁度良いだと?・・・お前たちは何者だ?一体何を企んでいる?」
ユミは驚くほど冷静であり勘も鋭かった。対する俺はドキッとして思考が停止したほどだ。
「ユミ、何を藪から棒に。何者って言われてもなぁ。何処にでもいる、ちょいとイイ男だし。目的も何も、さっき話した通りだからなぁ・・・」
「まあ良い、いつかキチンと聞かせてもらうぞ」
「ああ、いつかな。・・・あっ、しまった!」
「アハハハ!(笑)本当に素直な奴だな、お前は!昨日の今日で手前勝手とは思うが、私はもうお前達の仲間のつもりでいるのだ」
「俺だって同じさ」
ユミの口から出た仲間と言う響きが心底嬉しかった。
そして少し距離感のあったユミが急に身近な存在に感じた事もまた然りだ。
◇◆◇◆
ほどなくして帝都に着いた俺たちを出迎えてくれたのは、活気溢れる人々の表情と無数のお店、そして帝都名物と書かれた看板だった。