プロローグ(この世に神は存在してはならない)
天界、そこは神々の住む楽園。
神とは、銀色の髪と天空を駆ける翼を持ち、奇跡と呼ばれる異界の力を操る者である。
最高神である天空の神によって地上に箱庭が創られると、1人、また1人と神々は箱庭に降り立ち、あらゆる生物と自然を創造していった。
そして、最後に人間を創り箱庭は地上の楽園として完成した。
人間は神の叡智を盗むと、神の真似事まで始めた。
至る所に街を建設し、やがて数多の国が出現した。
文明の発達に伴い、豊かだった自然は破壊され、動植物は絶滅の危機に瀕し、人間同士による争いが頻発した。
神を欺き、その名を巧みに利用した人間は、本能の赴くままに権力や欲望に溺れ、食物連鎖の頂点に君臨した。
◇◆◇◆
神を疎ましく思い始めた人間は、あろうことか神に戦いを挑んだ。
戦いは苛烈を極めたが、神の奇跡の前に人間は敗北した。
幾度となく続いた戦いの末、人間は滅びの日を迎えようとしていた。だが、英雄と呼ばれる者の出現により人間は神々に勝利した。
天空の神は、人間ごときに敗れた神々を哀れんだ。
その悲しみは涙の海となり、その怒りは大地を引き裂いた。
かつての地上の楽園はいつしか失楽園と呼ばれるようになった。
神の嘆き。この天変地異によって地上は壊滅した。
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一方で天空の神は、人間がこの先どう変貌を遂げるのか興味深かった。
地上に新たな世界を創り、自らの化身であるアクセルとニークを降臨させた。
男神アクセルは破壊の象徴、女神ニークは慈悲の象徴として、ここにアクセル王国が誕生する。
神王アクセルは王国誕生に際して年号を神世紀と定めた。
また、失楽園を永久に隔絶し、人間による不測の事態に備えた。
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アクセル王国は2000余年の長きに渡り地上を監視してきた。
だが、神世紀2006年6月6日に神の子が誕生すると、その命運を子に託したのである。
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そして現在。神世紀3006年、帝国歴96年。
未だ、人間の愚行は留まることを知らなかった。