創造か、想像か、妄想か
前後の描写がないですが、町が魔物(獣型)の群れに襲われてる状況からのスタートです。なんで襲われてるのかとかは考えてないです笑
戦闘描写の練習で書いたけど、戦闘描写じゃないよなぁこれは
その様子は正面から見ても、街を囲う壁の上から見ても圧巻の光景だった。幾千種、幾万もの魔物がところ狭しとひしめき合い、この街へと向かっていた。対する人族は一万に満たないほど。突然の魔物の進撃に普段、危険などなかった街に十分な兵力など存在しなかった。しかし、この街に暮らす人々の顔はまだ深い絶望に堕ちてはいなかった。城壁の上に杖を突いて立つ一人の老父が街の住人の唯一にして絶対の希望。"創造魔法学会"学長、クラステス=ギルディナス。今は一線を退いたものの未だ現役の“創造士”。その力は世界中に轟き、人族のみならず、多種族にまで知れ渡っていた。
壁の上に杖を突いて立つその老人は杖などいらぬのではないかというほどに壮健であった。長い白髪を後ろに伸ばし、頭上には帽子、そして黒のローブと戦場には不似合いな魔法使い然とした格好であった。
「こんな老兵を借り出すなど最近の若者は仕方ないのぅ…。」
「も、申し訳ありません、ギルディナス学長殿…!」
クラステスの嘆息に固まって返事をする現場責任者。彼は若くして功績を積み取り立てられた優秀な指揮官であったが、生きる伝説が目の前におり、なおかつ戦闘前とあっては緊張せざるを得なかった。その反応を前にクラステスは悪戯っぽく笑う。
「くくく、そう固くならんでよい。精神の固さは創造の狭さと小ささを誘う。行ける伝説といえどもただの爺じゃ。こちらは、久方振りの戦闘じゃ、案内頼むぞ、指揮官殿?」
「はっ!こちらも微力ながら、協力させていただきます!!」
未だ固いが先ほどよりはマシな表情に、満足した表情を浮かべ前を見据える。
そして間もなく、戦端が開かれた。
戦闘部隊との距離が百メートルを切ると同時にクラステスは跳んだ。呆気に取られる指揮官を置き去りに着地したのは魔物の眼前。
「やあ、いい天気じゃな。」
突然降ってきた謎の人間に戸惑う魔物を眼前にして恐れる様子もなく話しかけ、そして杖を向ける。
「では、さらばじゃ。」
魔物の首から上がはじけ飛んだ。ちぎれた首から大量の血があふれ出るもクラステスにかかる様子はなかった。
「目の前がふさがって邪魔じゃの……。」
杖を横に一振り。瞬間、目の前の死体は杖を振った方向へと飛んでいく。進行射線上にいた魔物を巻き添えに。
魔物の群れの端まで行ったことを見もせずに確認したクラステスは杖を回す。飛ばされた魔物たちは塊上になったまま地へと沈んだ。
「さて、次はどの魔物かの?」
仲間を吹き飛ばされ、唖然としていた魔物たちが我に返る。そして、一堂にその老父へと牙をむいてとびかかった。しかし、その攻撃がクラステスに届くことはなかった。どの方向からの攻撃も直前で謎の壁に阻まれる。創造されたのは、不可侵領域。あらゆる攻撃はその中に入ることはない。阻まれたが最後、その数秒後に待つのは先の魔物と同じ、死して仲間を吹き飛ばす運命。
城壁の上からそれを見ていた若き指揮官はこう語ったという。
「あの方の後ろの兵は全員置いていかれた。魔物は狂ったようにギルディナス様のみを狙い続けた。兵士に攻め入った方が近い者でもすべて…。群塊となった魔物が時折、一列だけ消えていく。そして一定範囲にクレーターが増え続けていた。まさに行ける伝説だった。」
そんな光景が、小一時間も続き魔物の数は半分以下にまで減じていた。
「ふむ、これ以上引き延ばしても新しい知見は得られなそうじゃの。では、終わりにするとしよう。」
これまで以上に大きく杖を振る。一振り目で魔物が30メートルほど後退し、二振り目で地面が宙に浮いた。クラステスと残るすべての魔物の乗る範囲の地面が。そして、三振り目で浮いた地面は魔物ほどの大きさに砕け、四振り目で落下する魔物へと襲い掛かった。空中にいては回避のしようもなく、硬い皮革を持つものも金剛石すら砕く固さに強化された土塊ではなすすべもなかった。
最後の魔物まで地に叩きつけられ絶命するとクラステスは杖を振る。穴が開き、巨大な岩が突き刺さっていた地面はそこにはなく、あった通りの草原へと戻っていた。
味方の兵士に感動などなかった訳が分からぬうちに攻められ、訳の分からぬうちに終わっていた。それは城壁の上から動くことのできなかった若い指揮官も同じであった。そんな彼に城壁の上まで跳んできたクラステスは笑って言う。
「創造力は無限だぞ、若者よ。」
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