閑話4 Side M 宮之阪 香織の日記 1ページ目
閑話4です。
本編お待ちしていた人すみません。
不定期で宮之阪 香織の日記を書いていきます。
初めて会った時からの宮之阪視点で物語を書いていきます。
「そう言えば、香織ちゃん。あ~香織ちゃんは覚えてるかな~? 小さい時仲が良かった男の子。牧野 光一くん」
ある日突然お母さんがそんな事を言ってきた。
牧野 光一……、その名前を忘れるはずが無い。
いまだに幼馴染の彼のことを思い出すと胸が張り裂けそうになる。
いまだにあの別れの日を夢で見ると悲しさに飛び起きて目から毀れる涙を止められない。
いまだに私の大好きな人……忘れられるはずが無い。
その彼の名前をなぜお母さんは今頃言い出したのか。
疑問と心の底に沸いた微かな予感に胸が高鳴るのを覚えた。
「先日光一くんのお母さん、美貴さんに商店街で久し振りにばったり会ってね。懐かしくて色々話しちゃったのよ」
お母さん! その部分はいいからこーちゃんがどうしたの?
逸る気持ちが抑えられない。
「なんか世界中仕事で飛び回ってるらしいのよ。すごいわよね」
だーかーらー! こーちゃんはどうしたの?
「この前はヨーロッパの方に行ってたんだって。パリとかフランスとか色々な国行ったらしいわよ。良いわよねぇ」
フランスの首都がパリだ!
「そんな事よりこーちゃんがどうしたの?」
なかなか話の本筋に辿り着いてくれないお母さんに対して待ちきれなくなりこーちゃんの事を問いただした。
「あーーごめんごめん。なんかねまたこの街に引っ越して来たんだって。光一君もこっちの高校に通うみたいよ」
嘘? 嘘? 本当に? 夢じゃないの? こーちゃん帰ってくるの? 小さい時の約束覚えてくれてたの? でも10年も経ってるのよ? 私のこと忘れてるかも……。いや私も覚えてるんだもの。こーちゃんも忘れてる訳無いわよ! きっとそうよ!
あまりの事に私は舞い上がってしまった。
その後お母さんが何か言っていたが耳に入ってこなかった。
日記に今日の思いを書いておこうと思う。
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3月2x日(土) 晴れ
高校生活まで2週間を迎えた今日。お母さんからとても嬉しい事を聞いたの。
あのこーちゃんがこの街に帰ってくるんだって!キャー(^o^)
うれしいうれしいうれしいよ~!
私に会いに戻ってきてくれたのかな?
でも帰ったのなら何で直ぐに会いに来てくれないんだろう?
恥ずかしいのかな? そうよね。
だったらこっちから探しに行ってあげようっと☆三
さよならしたあの日の格好と同じ服を着て出掛けよう。
同じ格好の私を見たら驚いちゃうかな?
あー楽しみ。
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「よしっと。明日本当に楽しみ」
私はあの日プレゼントとしてこーちゃんに貰ったマスコット人形の"コーちゃん"を握り締め明日来る再会に思いを馳せ眠りに付いた。
「こんな感じだったわよね?」
あの日と似たような白色のワンピースをクローゼットから探しだして姿見の前で確認する。
これ夏用の奴なんで今の季節ちょっと寒いけど今日はいい天気で暖かいって天気予報で言ってたから何とか大丈夫そうね。
「お母さ~ん。ちょっと散歩してくるね~」
「はーいって? え? ちょっとその格好寒くない? 大丈夫?」
「大丈夫! 大丈夫!」
最高の再会を演出する為だもん! 少しくらい寒いとかそんなのどうって事ないわ!
お母さんって肝心なこと聞かなかったのよね。
帰ってきたこーちゃんの家と通う高校。
私は私立の刻乃坂学園だけど、こーちゃんは何処なんだろう?
やっぱり公立かな? 引越しとかで大変だったろうし。
一緒の高校に行きたかったな。
あーーもう一年早く帰ってきてくれたら一緒の高校に行ったのに。
家も分らないし何処に行けば会えるかな?
また私の家の隣に引っ越してきてくれれば良いのに……。
でも私達は運命の二人なんだから神様が絶対引き寄せてくれるわ!
本当今日は良い天気で暖かい。
街を歩いてみたがこーちゃんを見つけることは出来なかった。
ふと昔一緒に寝転がった河川敷の風景が脳裏に浮かんで来た為、その懐かしい記憶に惹かれこの道を歩いている。
本当に懐かしい。
この河川敷で二人一緒に走り回った。
一緒に寝転んで雲が流れるのも見たよね。
この春を感じさせる新緑の匂いも心地良く、小鳥達も春到来に喜びまるで優しい合唱曲を奏でているみたい。
私達の再会を祝福してくれているようだわ。
ふと立ち止まりここから見える街並みを眺める。
この10年街も変わったわね。
ゆっくり変わったところ、大きく変わったところ色々有るわ。
その度にこーちゃんとの思い出が消されていくようで悲しい気持ちになった。
堤防から見下ろすと河川敷では家族連れが楽しそうにバーベキューをしているのが見えた。
そう言えば昔幸子姉さんたちと一緒にバーベキューしたなぁ。
こーちゃんたらお肉ばっかり食べるから幸子姉さんに野菜食べろーって怒られていたのよね。
懐かしい思い出に自然に笑みがこぼれる。
視線を戻し再び歩き出した。
え? あれは?
戻した視線の先には、堤防をこちらに向かって私と同じ位の男…
こーちゃん!!
…の子が歩いてくるのが見えた。
思考より先に大好きな名前が思い浮かぶ。
間違いない! 一目で分った! あれは私の大好きなこーちゃんだ!
大きくなっているけど、あの時の……いやあの時以上に素敵になってる。
神様ありがとうございます。ここで会えるのは運命だわ。
こーちゃん気付いてくれるかな? 気付いてくれるわよね? 私もあの時の服装だし絶対気付いてくれるわ。
私を見て『綺麗になったね』とか『惚れ直したよ』とか言ってくれるかな?
今すぐ走り出して抱きつきたい衝動を抑える。
だってもしかすると私の事を忘れてたりするかもしれないし…。いやそんな事はないわね。
それにこんな素敵になってるんだったら彼女の一人や二人居ても……。そんなの嫌ぁぁぁーー!
大好きなこーちゃんの顔を見るとそんな考えが頭に浮かび急に怖くなってしまった。
ううぅ、どうしようどうしよう。
動揺は表に出さないように気をつけないと。
久し振りに会った恋人が河川敷で不審な動きしているところを見ると流石に嫌われちゃうかも。
平静を装って……。
あっ目が合った。
その時私の頭は真っ白になった。
どれだけ時間が経ったろうか気が付くと空は夕焼けで茜色に染まり出していた。
ここは何処だろう?
「やってしまったーーー!」
私は堤防の上、夕日が綺麗に写る川の水面に向けて大声で叫んだ。
周りの人がびっくりしてたけど関係無いわ。
でもここからどうやって帰ればいいのかしら?
取りあえず駅に向かいましょう。
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3月2x日(日) 晴れ
今日は失敗しちゃった……(x_x)
折角神様の思し召しでこーちゃんに会う事が出来たのに頭が真っ白になって話しかける事もできなかった。
でも良く考えるとこーちゃんも眼が会ったのに何で声を掛けてくれなかったの?(`へ´)プンプン
あっそうかこーちゃんも私と同じように運命の再会に頭が真っ白になってしまったのね!
私たち似たもの夫婦かも!
言っちゃった!キャーー☆三
明日こそ運命の再会をちゃんと出来ますように
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明日はこーちゃんとお話できますように。
そう祈りながら"コーちゃん"を抱きしめて眠りについた。
こんな感じで本編1話の半分位の長さで纏めたいと思います。
次は本編に戻ります。
皆様のご意見ご要望をお待ちしております。