警備員ヒート
何があったかを説明しよう。
僕は森を歩いていた。その時の服装はボロボロだった。僕が約4時間後に入り、人を殺し、脳を食い散らかしたあの屋敷は僕が歩いている森のなかにあった。別に何か目的があって森に入った訳じゃあない。そこらへんをふらふらしていたらいつの間にか森に入っていた。そしてそのままふらふらと歩いていると、明かりが見えた。僕には虫の遺伝子が入っているのか何なのか、無意識のうちにその明かりに向かっていた。そのまま虫の本能に従って光のある方向に向かうと、そこには大きな屋敷があった。見たもの全てに「あ、ここは金持ちだな」と思わせる荘厳さと気品にあふれたこの屋敷に圧倒され2,3分立ち尽くして眺めていたが我に帰りまた森を彷徨おうと思った瞬間、この森全体に響き渡らんばかりの大声を誰かが挙げた。
「誰だ貴様!!!武器を捨てて両手を頭に置いて床に伏せろ!!!」急に大きな声を出されたからめちゃくちゃビビったが、声のした方に顔を向けるとスーツを着た男が警戒心剥き出しでこちらを見てくる。胸板はなんか箱でも入ってるんじゃね?と思うくらい分厚く、土管のような右腕には黒い警棒のようなものが握られている。屋敷の警備員かなんかだろう。
警棒より自分の腕を振り回した方がいいんじゃないか、とか悠長なことを考えていると
「聴こえなかったのか!!!武器を捨てて両手を頭に置いて床に伏せろ!!!」とまた怒鳴る。
さすがにちょっとイラついたが
「ハイハイ、服すらロクなもの着てないのに武器なんて持ってないですよーっと。」
と軽く馬鹿にしながら床に伏せた。(少なからず馬鹿にしたつもりだった。)
だがこいつはそんな事など気にもせずに僕の首を左手で掴み屋敷に連れて行かれる。嫌な予感がする。