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孤独の空間 ~白宮弥生~ 1話

私が生まれてきた意味ってなんだろう。

誰からも愛されない人生。

自分の誕生でさえ、祝福されなかった。



――こんな日常なんて壊れてもいい。





「――白宮。白宮弥生(シロミヤヤヨイ)!」


私を呼ぶ声が聞こえる。

「……は、はい。」

担任であり、数学教師でもある高見健(タカミ ケン)に呼ばれ、私は返事をした。


「転校したてでぼーっとする気持ちもわかるが、具合悪いなら保健室へ行け。」

……どうやら私は呆けていたらしい。


「はい。申し訳ありません。」

私がそう言うと先生は止めていた授業を再び始めた。



――そして、三限の終わりのチャイムが鳴ると、昼休みになる。



当初は、五月という珍しい時期に転校してきたせいもあって、物珍しさからか

私の周りには沢山の人が集まっていた。



しかし今では私に近づく者は誰もいない。


全ての誘いを断り続けてきたのもある。

それ以前に私は他人と関わるつもりがなかったからだ。


――誰とも関わるつもりなどない。一人が心地いい。

馴れ合いなんていらない。時間の無駄だもの。


昼食にも誘われたのだが、私は断っていた。

食事は静かに行いたい。という理由もある。


いつも素っ気無い態度を取っていたためか、

"望んだ通り"、誰も近寄らなくなり一人の学生生活を送っている。



私はいつも通り、昼食である菓子パンを持ち教室を出た。


……どこか静かで一人になれるところはないだろうか。

この学園に転校したときは、そんな事ばかり考えてた。


――最終的に、行き着いた場所は屋上だった。

私立鐘鳴学園(シリツ カネナリガクエン)には食堂があり、

殆どの人は食堂か、中庭で食事をしている。

そのためか屋上で昼食を食べる生徒は非常に少ない。


転校から一週間程経って、この屋上を見つける事ができた。

私は『屋上には沢山、人がいるだろう。』という先入観を持っていたため、

あえて近づかないようにしていた。


偶然、学園の探索も兼ねて歩いていたところ見つけられたのはラッキーだった。


誰も使っていないためか、少し埃ぽかったが、一人になれる空間があることを考えると

一向に構わない。


私は屋上の一角の埃を払い、そこで昼食を食べることにした。


"こちら"に来てからは、ずっと昼食は菓子パンを食べている。

手間がかからないのが一番の理由だ。小柄な私は二つも食べれば腹が膨れる。



幼い頃から両親に、様々なマナーを叩き込まれてきており、

食事をするたびに怒られていた自分にとって、食事などつまらなくて、一種のトラウマ。

怖いものだと認識している。

だからこそ腹を満たすための手段でしかない。そんな事を本気で考えている。




一つ目を食べ終わり、二つ目に差掛かろうとした瞬間、ふと人の気配を感じた。

私が顔を上げると目の前に一人の少年が立っていた。


「あんた、ここで何してんだ。」

少年は明らかにこちらに敵意を向けながらそう言う。



彼の名は、代ヶヨケギ ショウ

同じクラスで、成績学年トップを維持している少年だ。

その上、体育祭では全学年含めて男子総合一位を取っていた。

文字通り、文武両道、『天才』『エリート』……彼にはその言葉が似合うだろう。


彼は一人でいる事を好んでる。一見するとそこは私と同じだが、彼には友達が沢山いた。

人当たりもよく、教師からの評判もいい。


そんな彼が私に対して、いや一部の人間に対しては明らかな敵意を常に向けていた。



「何って……昼食を摂っているだけよ。」

明らかな敵意を向けられているのは気持ちいいものではない。

私はぶっきら棒にそう応えた。


――……。


無言で睨みつけてきたが、一切動じなかった。

私は、この"目"には慣れていた。

冷たい目つき、自分ではないどこか遠くを見ている――そんな気がする目を。


しばらく睨みあいが続いたが、彼が折れたらしく、

独り言のような事を呟き、私から離れた場所に腰を下ろした。

そして、不機嫌そうに本を読み始めた。


全てを聴けたわけじゃないが、一部は聞き取れていた。


――『……えが来な……ば、ゆう……悲…………った。』





『さっさと出て行け。』

口には出してはいないが、屋上にはそんな雰囲気が漂っている。

せっかく一人になれる空間を見つけたのだ。出て行く道理もない。


(誰が出て行くもんですか・・・!)

私はそう決意すると、昼休みの時間を屋上で過ごすことにした。



結果として、お互い関わりが全くないまま、

どちらが先に出て行くか――そんな子供のような勝負が、

毎日行われることになるのであった。




当初はお嬢様+誰にでも優しいキャラにしようとしたのですが、

ゆうなとキャラが被っちゃいそうなので

高二病みたいな設定になっちゃいました。


ただの悪い子ではないです。不器用なだけです。


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