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リベンジ魔王  作者: 蚊家津
33/50

閑話 頑張れ!!10魔族!! その3

閑話となりました。明日はもしかしたら更新できないかもしれません、ご了承ください。


また、閑話は補足に近い話であるため、本編と関係の無い話が多いです。なので魔王様とシュリとブラウは本編組なので今回はお休みです。許してください。


そんな本作品ですが楽しんでいただければ幸いです。


 遠き地にあるとされる魔王城……その中に無数にある施設の一つで、アグリウスは頭を抱えていた……

 目の前にあるのは……何と形容すればいいのか解らない巨大な鉄の塊……辛うじて人型の様に見えるそれを前にし、アグリウスはこの部屋の主に言葉を掛ける。


 「……これは何なんですか?サロス……」


 「芸術だ、げ・い・じゅ・つ……一日の作成ノルマは達成しているのだから、なんも問題ないだろう?」


 ……確かに、サロスはリジィー様から与えられた指示をしっかりとこなしている。だからそれ以外の時間をどう使おうが問題は無いのである。

 かくいう私も、清掃が既に趣味の領域に入ってしまったが故に、暇な時間をそれに費やしている位なのだ……文句を言える筋合いでは無いだろう……

 

 「……ですが……限りある資源は大事にしてほしい物です。」


 呆れを込めつつサロスに忠告する。それと共に、ニルブニルから聞いていたその像を……ニルブニルの話では一つだったはずが、何故か三つに増えているその像を眺め、無駄になった多くの鉄鉱石を採掘してきたであろうニルブニルが不憫に思える。

 サロスの手はアグリウスが工場に入ってから止まっていない、そこから私の忠告を聞いても、なんとも思っていないという事が解った。


 「う~んそうか?資源というのは使う為に存在する物だろう?なら使わない方が失礼じゃないか?」


 「用途を考えろと言っているんです……それに何で鉄なんですか……芸術だと言い張るのなら金を使えばいいでしょう。」


 「駄目だ駄目だ。金っていうのは自己主張が激しすぎて芸術に向かない。その点鉄が一番優秀なんだよ、こう……なんていうのかな?独特の重厚感って言うのか?それに加えて鈍く光り輝く存在感!!さらには、作り終えた後も決して気を抜かずに、手を掛けて遣らないといけない我が儘さ!!これほど儂の思いに答えてくれる金属は無いんだよ。」


 自分の孫を自慢する爺の姿が其処にあった……その思いは立派ではあると思うが、どうにも感性が私の物とは違うらしく、それを理解は出来ない。


 (……この爺に何をいっても無駄なのだろう……気は進まないが最悪、リジィー様に助力を願う必要すらもあるかもしれない……)


 ニルブニルには悪いが、自身にはどうする事も出来なそうだった……そしてこの後、ニルブニルに訪れるであろう苦労に同情を覚えながら、アグリウスは工場を後にする。

 ふと、後ろで魔法が発動される感覚を覚える。きっとサロスが連絡の魔法を使ったのだろう……


 「おい、ニルブニル!!聞いているな!?鉄取ってきてくれ!!」


 「…………ふざけんなよ!!昨日散々取ってきたじゃねぇか!!あれだけあれば、一月は持つはずだぞ!!」


 「足りない物は足りないんだ。解ったらさっさと取ってきてくれ。」


 「…………ああああああああもう!!さてはまた奇妙な物を作ったんだな!?本当にいい加減にしてくれよ!!僕だって暇じゃないんだ!!」


 サロスの無慈悲な行動に、ニルブニルは絶叫を返しながら嘆く。

 その二人の声を背に受けながら、決して届く事は無いだろうが小さく謝罪していた。


 「すまないニルブニル。もう少しだけ我慢してくれ。リジィー様がきっと何とかしてくれるはずだ。」


 二人の諍いは終わる事が無い。その諍いの声を背中に受けながら、アグリウスはその場を後にした。


◇◆◇◆◇◆◇


 魔王城には修練所という施設がある。

 かつて人間と戦争をしていた時は、昼夜を問わず、音が途絶える事が無かったその施設は、魔王敗北後……その音が戻る事は無かった……しかし500年の時を経て、小さいながらもかつての活気を取り戻していた様に、ニルブニルには思えた。


 「よし!!今日はこれまで!!各自休憩の後は、リジィー様の指示通りに活動を再開しろ。以上!!」


 その締めの言葉と共に、今日の筋力増強トレーニング……それに参加していた男子奴隷はその身を床に投げ出した。

 精神を憑依させたゴーレムの体を通し、日に日に強くなっていく奴隷達に親心に近い感情を持ち合わせながら、彼らの労を心の中で労う。

 本当は言葉として掛けてやりたいが、あくまで彼らは奴隷なのだ。まだ部下になった訳では無いのだから、必要以上の気を掛ける訳には行かなかった。

 自身の敬愛する王は、そんな事気にする事は無いというだろうが、それでも一定のラインという物は必要であると思う。だから多少辛いが、彼らが奴隷から解放されるその時まで、その感情を隠しておき、その瞬間が来たら、めい一杯お祝いしてやろうと思う。


 「ニルブニルさんはこの後どうするんです?」


 物思いに耽っていると、隣の下の方から声を掛けられる。其方の方に視線を移しながら、ニルブニルは呆れ交じりに答える。


 「僕はこの後、我が儘な爺の為に採掘に行かなきゃ駄目なんだ。だからフール、後はこの場を頼むよ。」


 最近フールは、奴隷の成長の為に一緒に訓練を行ってくれる事が多かった。まぁ彼自身……彼らと言った方が良いのだろうか?リジィー様からの明確な指示が無いので、するべき事に困っているのだろう。

 ウルフ族の皆は、とにかく仕事を探して魔王城の中を駆け回っている。それは族長であるフールも同じの様で、人語を話せる彼は、奴隷の成長の手伝いを絶好の機会だと判断したのだろう。

 僕に断りを入れてではあるが、奴隷達の相手もしてくれたりしていた。

 その中で多少なりとも培われた友好関係は、フールという存在に対し、軽い信頼程度なら持ってもいい物だった。


 「……う~ん……少しだけお時間作れませんかね?少し相談したい事が……」


 「うん、なんだい?話の内容にもよるけど、僕が解決出来る事なら力を貸すけど?」


 だから彼の相談を聞く事に躊躇いは無かった。その上で、自身が解決出来る事なら手を貸してもいいとさえ思っている。

 その僕の思いに、少しばかりすまなそうにしながらも感謝を述べ、彼は相談をして来た。


 「え~とですね……フエンさんの、女性の……いや女犬の好みを聞きたいんですよ。」


 「……女犬の好み?」


 聞きなれない言い回しの言葉に、首を捻りつつ問い返す。

 フールは行儀よく姿勢を伸ばしながら、僕の問いに肯定し、続ける。


 「はいそうです。というのも、フエンさんってお強いでしょ……いや!!別にニルブニルさんや他の皆さんが弱いって言っているのじゃなくってそれは……」


 「うん、解っているから続けて。僕も暇じゃないんだ。」


 「すみません……で、ですね。フエンさんに惚れたメスが多いんですよ……そいつらから、何とかフエンさんの好みを聞けないかと頼まれまして……」


 上に立つ者には、下の者の願いを出来る限り聞くだけの器量が求められる物なのである。その点ではフールは優秀な上司である様に思えた。

 だから出来ればその質問に答えてやりたいが、ニルブニルには、フエンの好みがどういった者なのかが解らないのが現実だった。


 「う~ん……すまない。僕では力になれそうにも無い。フエンに聞くのが手っ取り早いと思うんだけれど……それも今の状況じゃ無理か……」


 フエンはリジィー様の命を受け、人間世界に潜入している最中である。こんな事と言ってしまえば、フエンの事を思うメス達に失礼だが。それでもこんな事で連絡を取るほどの事でもなかった。

 それを理解しているのだろう。フールもその頭を縦に何度も振りながら答える。


 「ですよね……ニルブニルさん。この際何でもいいです。フエンさんが好きな物を片っ端から上げてってくれませんか?そこから、何かしらのヒントが得られるかもしれないんで。」


 「そういう事なら別に構わないけど……意味が無い様な気がするな……まぁいいか。それじゃ言っていくよ。」


 フールは元気よく返事を返す、その姿を認めながら、フエンの好物を片っ端から思い出し、羅列していく。


 「まず肉だな。それと運動。後は……毛づくろいに……たしか昼寝も好きだったはず……」


 「……ニルブニルさん……すいませんがもう少し女性に関係した事を……」


 慌てて掛けられたフールの声に遮られ、思考に耽る意識を戻す。

 ……フールの言い分も解るが……それが解らないから此方も困っているのだ。出来る事なら答えてやりたいが、そもそもそういった女性に関係する話をする事が無かったのだ。だからそれは知り得ない事なのである。

 やはり僕ではフールの望む答えを出せそうになかった。申し訳なかったが、彼には諦めて貰おう……そう思った時、一つ思い出したことがあった。


 「そういえば……フエンが伴侶に求める事を聞く機会があったな……その時、料理が旨い事が最低条件だって言っていたな……」


 「料理……ですか?」


 「うん……粗雑な様で、あれでなかなかグルメだからね。サロスの料理を食っていた事もあるし、生半可な道じゃないと思うよ。」


 だから、フエンに好意を寄せるメス達も諦めた方が身のためだと思えた。というのも、ウルフ族の体は細かな作業に……それも料理と言える様な作業に向いているとは思えなかったのだ。

 それはフールも理解している。その事実を伝えた結果を想像し、少しばかりその子達の事を不憫に思ったのだろう。耳と尻尾が元気が無い様に揺れている。


 「ありがとうございました、ニルブニルさん。あいつらも、初めから高値の花を取ろうとしていたんです。報われなくて元々でしょう。取りあえず伝えて、諦めてもらう事にします。」


 そう言い残し。僕の願いを聞いてくれるのだろう。立つだけの体力を回復し終えた奴隷達を纏め始めている。

 その姿を眺めながら、もうこれ以上自身にできる事も無かったため、……気は乗らないが……採掘場所に移動する事にする。

 フエンの話をした所為か、自身にも、かつて伴侶となり得た女性がいた事を思い出し、彼女との思い出に感傷に浸りながら。ニルブニルはその場を去った。



 後日、魔王城の至る所で小火が出る事態になったのだが……それはニルブニルとフールには予想できない結果であった。


◇◆◇◆◇◆◇


 マクジ共和国首都ウッドレス。

 緑豊かなその国では、二人の凶悪な魔族が、人間に交じり生活をしていた……

 その二人の名はスロノドールとルウワーフ。彼女達はマジックキングという名の雑貨屋を開き、高価なアイテムを販売し、多大な利益を上げていた。

 だが、多大な利益を上げる店に付き物の悩みという物もある事を、この日二人は知る事となる。


 「全員その場に伏せろ!!従わないと痛い目を見る事になるぞ!!」


 店の中に入り込んだ瞬間、その5人組は各々が手にした武器を掲げそう宣言した。スロノドールは会計席に座りながら、彼らの姿を一瞥する。

 

 (全員が覆面をしている。その上で武器を持っての理不尽な要求……確かこれって強盗……という奴だったかしら?)


 この場に溢れかえる人間達は、その全員が理不尽な指示を全うし床に伏せている。その事からも、知識の中にある存在と同じとみていいだろう。

 傍らに立つルウワーフも同じ意見に辿り着いたのだろう。目線で此方に忠告を出してくる。


 (殺すなって言われましても……彼らの目的が何か解らなければどうしようもありませんのに……)


 どうにもルウワーフは、私の事を口より先に手が出る様な野蛮人だと思っているらしい……こんなにも美しく、愛したお方に献身的に尽くす女性である私に対してである……少し怒りが込み上げてしまうのは仕方ないだろう。

 だから目線で彼女に言い返す。貴方こそ、手加減できないのだから手は出さない方が良いのでは?……と。

 その私の目線に、ルウワーフは眉根を寄せ言い返す。


 (ふん、手加減位できる。吸血鬼如きと一緒にするな。)


 (手加減位出来る……ですって!?あはは、おっかしい!!筋肉馬鹿が手加減?無理無理、絶対無理ですわ。貴方忘れましたの?昔、虫を掃おうと軽く腕を振った時、たまたま当たった大きな岩が、空高くに吹き飛んだ事を。あれは傑作でしたわ。)


 (……そういうスロノドールだって、昔はワインの瓶を掴む度に割っていた。その所為で、何本のワインが無駄になったと思っている?)


 「おい嬢ちゃんたち、この袋に店の有り金を全部入れろ!!今すぐにだ!!」


 (あら?それはいつの話でしょうか?貴方の様なお馬鹿さんには解らないでしょうが。吸血鬼という存在は成長する物なのです。今は一人でも問題なく開ける事が出来ますわ。)


 (それは此方も同じこと。腐った頭には解らないだろうけれど、人狼という存在も学習する。今なら卵だって割らずに掴める事が出来る。)


 「おい!!聞こえていないのか?早くしろ!!その綺麗な顔に傷がつく事になるぞ!!」


 (駄犬風情が言ってくれますわね……リジィー様も、こんな我が儘で卑しい犬っころに求愛されてはさぞお困りでしょうこと……あのお方はお優しいですから、その思いをおくびにも出さないでしょうけど。)


 (黙りなさい吸血鬼……リジィー様にそんな貧相な体で迫る事自体が不敬なのよ。リジィー様はお優しいから、明確に拒絶なさる事はしないでしょうが……男の喜ばせ方も知らないのでは?)


 「……おい、頼むから聞いてくれ!!何で二人で見つめ合ったまま何も反応しないんだよ!!俺達強盗だぞ!?解っているのか!?」


 (はん、それは貴方も同じことでしょう。知識だけ蓄えて、実戦経験も無い様な生娘が、この私……吸血鬼という種の頂点に立つスロノドールに、男の喜ばせ方を問うというの?知識など実践ではほぼ無意味ですのよ。)


 (最低限の知識すらも知らず、年だけ重ねた馬鹿な老婆が何をほざく。経験が無いのなら、せめて知識位蓄える努力をするのは当然。重要な時に失敗して、リジィー様に傷を負わせてしまうのが目に見えている。)


 「ああもう!!忠告はしたからな!!あの世で後悔しやがれ!!」


 ルウワーフとの喧嘩の最中だったが、先ほどから何かを喚き散らしている人間が、此方に向かって短剣を振り下ろして来た。

 酷く遅く、弱い力だったのできっと威嚇のつもりなのだろう。この強盗達は、どうにも行動が非合理的に思える。初めから、有無を言わさずに此方に飛びかかってくればいいのに……それをしようとはしないのだ。

 威嚇攻撃を人差し指と中指の二本で止め、ルウワーフとの話し合いが終わるまで、少し待ってもらえるようにお願いする事にしよう。


 「はっ!?えっ!?剣が……剣が動かねぇ!!なんだこの馬鹿力!!」


 「いい加減うるさい虫ですわね……今取り込み中ですから後にしてくださいませんか?」


 極めて温厚に、自身でも意識して笑顔で語り掛ける。人間世界でも、私の美貌は通用するのだと知っているからだ。

 

 「ひぃ!?ば……化け物!!退却……退却だ!!逃げろお前ら!!」


 きっと強盗達は私の美貌に委縮したのだろう。全員が手にした武器を放り出し、店から出て行ってしまった。

 思わぬ結果にはなったが、その結果を前にし、自身がルウワーフより優れている事を証明してしまったらしい。


 「ほら見なさい、私に掛かればこんなものですわ。」


 「認めたくないけれど事実は変わらない……今回は引く事にするわ。……悪かった。」


 床に伏せていた客の全員が、状況を理解できずに顔を上げてあたりを見回すのを眺めながら。

 スロノドールはルウワーフに勝った愉悦に浸っていた……



 悪しき心を浄化する笑顔……のちに広まり始めたその噂は、彼女達の店をさらに繁盛させるのであった。



◇◆◇◆◇◆◇


 シオン王国王都アクアリム……この国の中心地であるその場所で、フエンとロロス……二人の魔族は情報収集にあたっていた。

 その上で彼らは、一つの屋敷を買い、そこを拠点にして活動する事になったのだが……


 「順調なのはいいが、何というか……人間達はどれほどの粗悪品を使っていたのかが気になるな……」


 拠点の中に設けた自室。

 ロロスは目の前の机に山と積まれた金貨を目にしながら、その疑問を口にせざるをえなかった。

 彼は先ほど、サロスの作った武器を一本、試しに売ってきたところである……それがこの金の山となっていた。

 ……今でも思い返せる。あの武器屋の店長の驚愕の形相を……


 「……高品質なのは解るが、量産品に対しこんなに支払うなんてね。」


 信じ難い事実ではあるが、目の前の金貨がそれが事実であると物語っている。……いっそ、これが偽物であった方が理解できるのだが……それが本物である事は既に確認済みである。


 「はぁ~……もうそんなに稼いできたんですか。仕事が速いですねロロスさん。」


 気が付けばフエンが近くにやってきていた。彼も自身の仕事をこなしてきたのだろう。潮風に濡れた毛並みは、いつもある独特の艶を失っていた。

 彼に軽く返事を返しながら、これが剣一本の値段である事をロロスは告げた……


 「……そんな馬鹿な事あるんですか?私達が持ってきたの量産品ですよ。」


 「あるんだろうね。……信じ難いけれど。う~んどうするべきかな~」


 ロロスの悩みは今後の活動についてである。

 というのも、これだけ粗悪品が出回っている所に、わざわざ上質な武器を出回らせ、将来敵となる者達に武力を与えていい物なのか……と思ったのである。

 フエンもロロスの悩みを察したのだろう。自身の考えをロロスに告げた。


 「ともかく、もう少し様子を見てみましょう。最悪、あえて粗悪品を……サロスさんが作るか解りませんが……流す事も視野に入れた方が良いかもしれません。」


 「う~ん……現状はそれが最善手……かな?ありがとうフエン。君の意見に乗らせてもらうよ。」


 二人の魔族は、その後も細々とした情報のやり取りを続ける。

 長期を想定しての活動であるため、互いに認識にずれが出ない様にするためである。


 シオン王国王都アクアリム……二人の魔族は誰にも知られる事無く、情報を集め始めていた。


◇◆◇◆◇◆◇


 クルガ帝国帝都トラビア……最近その都市ではある噂で賑わっていた。


 リナシー・スロード……今まで見たことも無い、究極の美を持った女性にまつわる噂である。

 とある噂では、心を癒してくれる男性を探している。またとある噂では、彼女の娘に気に入られれば、彼女と結婚できる……

 男にとっては耳寄りで、とても都合の良い噂が蔓延していたのである。

 それがどこから出たのかは解らない……しかしそれはさも現実であるかのように語られている……

 結果として、リナシーの拠点を訪れる男性は後を絶たない。今日も今日とて、リナシーは言い寄る男性に断りを入れている所であった。


 「申し訳ございません……お気持ちは嬉しいのですが、未だ心が癒えぬため。少し静かにしてくれませんか?」


 場所は拠点に設けた応接室。その場でリナシーは三人の男性を前にし、言外に黙れ、もう来るな……と告げてみる。

 しかし全員がその顔に笑みを浮かべながら、解りました、また来ますよと各々が言い、応接室から出ていく……その背を眺めながら、自身の意思が伝わらない事に軽い苛立ちを覚える。

 最近妙にこの家を訪れる男性が多いのだ……何故かは解らないが、目的が目的の為だけに無下に扱う事も出来ない。


 「何で私が、リジィー様以外の男性に笑顔を向けなければいけないのでしょうか……」


 嘆きにも近い感情ではあるが、あれでいて、言い寄る男性共は情報収集に大きく役立っていた。

 末端に伝わる噂や情報から始まり、中にはそれなりの地位にいる者もいるのだろう……まだ一月も経っていないが、早くもこの国が手にしているマジックアイテムの情報を手にしていた。

 今は他の細かな情報を入手しようとしている最中である。だからまだ彼らに対し、きっぱりと断りを告げる訳には行かなかった……


 「本当に……身の程を弁えてほしいですね。貴方達がいくら束になろうとも、リジィー様の爪の切れ端にも劣る存在なんですから……」


 「……それには同意するが。……そうされて困るのは私達の方。無下にする訳には行かない。」


 独り言に返事を返すのは抑揚の無い平坦な声、それは今行動を共にしている仲間の物であった。


 「それぐらい解っていますわ……でもヨル……貴方もうんざりしているのでは?」


 ヨルの下に視線を移しながら彼女に問いかける。ヨルは私の向かいに見える椅子に腰かけ、高さにより宙に浮いた足を前後に揺らしながら答える。


 「……それにも同意する。……しかし嫌な事ばかりでは無い。」


 喜色を浮かべたその声と共に、ヨルはその手に握りしめた飴玉を一つ取り出し、舐め始める。きっとさっきの男共が渡した物だろう……何故かは解らないが、この家に来る男共はヨルに対して甘いのである。

 何故そうなのかは解らないが……どうにも自身が思いもしてない様な状況になっている様な気はした。


 「……ヨル……貴方何かしたのかしら?」


 ふと……何となく湧いた疑念をそのまま口に出していた。この幼女の姿をした魔族は、私以上に長生きをしているのだ。何かしらの知恵を用い、この状況を作り出しているように思えた……


 「……そう思うのならそうなのだろう。……私が何を言っても、リナシーの考えは変わるまい。」


 そして、この魔族の腹の底は見えない事も解っていた。だから結果がどっちにしても、私にはそれを知る事は……


 「……リジィー様の名を使ったんだ。それも妻として……それ位の労力で許してやろうとしているんだから、さっさと働くがいい。」


 「やっぱり何かをしたのですわね!!言いなさいヨル!!一体何をしたのですか!!」



 今日も今日とて、変わる事無く二人の生活は続いていく……彼女達の家で働く女子奴隷達は、今日も忙しく清掃作業に明け暮れていた。 


という訳で本編間の皆の活動の一部でした。


次回はこのまま本編に戻ります。本編がだんだんにシリアス路線になりはじめちゃったので、こういった閑話で息抜きをしている現状ですが。

それも楽しんでいただければ幸いです。


ではまた次回の機会に……一日空くかもしれませんのでご了承ください。

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