守れるものを・・
悲劇を書こうとしたけど、書けなかった
最後もシリアスに書こうとしたけどかけなかった。そんな作品です
人間は非力である。これ事実はどの世界においても変わらない
2033年、ハワイの海に謎の黒い穴が現れた。
それだけなら、まだ所属するアメリカ政府だけでの対処の仕様はいくらでもあった。
だが、そんな時間はなかった。穴が出現して数分地球の南半球が謎の液体によって侵食された。
これにより、南にある国はすべて機能しなくなった。あとはどこにでもあるラノベ通り。
謎の液体から獣型モンスターが発生。南アメリカ大陸とユーラシア大陸の西側は瞬く間に壊滅、当然現存する兵器は効かなかった。
さらにアメリカは壊滅寸前、人類は絶滅の危機に陥っていた。
しかし、ある学者による一言によってモンスターとの戦線は拮抗することになる。
「一番固いモノで武器作ったら?」
一番固いモノ、といえば皆さんの頭に浮かぶものはダイヤモンドでしょう。
しかし、ダイヤモンドの武器ではモンスターの右足に傷が少しついたくらいだった。
次に使われたのはダイヤモンドより固いと言われている『ウルツァイト窒化ホウ素』
先ほど、作者がgoog○eで調べたところ(メタい)窒素とホウ素からなる固体らしい。
で、作った結果、モンスターの足を切断できた。もちろん武器を作った技術班や大喜び。
だがしかし、貴重な素材なため作れた武器は数少なく。日本の武器所持数は8だった。
そんな貴重な武器を持ったのは日本軍所属の青年であった――
獣型のモンスターの眉間に日本刀を突き刺す。
「はぁ、はぁ・・・くそっ」
まだ来る、異世界から来る招かれざる客が。大群となって押し寄せる獣のモンスターが。
「ちくしょう・・」
赤い刀身を虚空に晒し、静かに宣戦布告を行う
「残念ながら、こっちは工事中だ」
そして、モンスターの大群に突っ込んだ
数時間前――
「おい、沖田。そっちはどうだ?」
「ん?ああ、なんとかな」
2034年、ついにモンスターによって沖縄を失った日本は鹿児島に戦力を集めていた。
武器所持者3名、戦闘員約5000名が集結し防衛作戦を開始しようとしている。
「武器持ちさんは今から作戦会議か?」
「茶化すのはよしてくれ、まあそうだが」
「お互い頑張ろうぜ、死なないために」
「ああ、またな」
同僚も、同級生も今となっては少なくなった。音信不通の者もいる。状況は最悪だ。
「もたもたするな、早くしろ」
指揮官に急かされて、俺は作戦司令室に入った。
「本作戦を説明する」
今回の作戦名は『鹿児島防衛作戦』ひねりのない作戦名だ。
鹿児島をとられるということは本格的に日本が侵攻される、ということらしい。
上はそれだけはどうしても避けたい。そこで戦力をここに集めたというわけだ。
「なお、敵の数は不明だ」
当たり前だ。もはや索敵する時間すら鹿児島にはない。絶望的な未来が見える。
俺の横にいる武器持ち達も、目に希望が見えない。
「頑張ってくれたまえ」
指揮官は、無責任だ。
――現在・作戦司令室
「沖田隊員はどうなってる!?」
指揮官が怒鳴るので、私は即座に情報を伝える
「モンスターの群れに突撃した後、反応が消失しました!」
「なに!?」
指揮官の顔が驚きで埋め尽くされる。当たり前だ。今までモンスターの群れに突っ込んでいった隊員などいない。聞いたこともない。
あんな、見ただけで恐怖しか感じないバケモノと何故戦えるのか。私にはわからない。
「ざざ・・ざざざ・・・こちら・・術班・・鹿・・島・・応答せよ」
本部の技術班からの通信だ。
「すぐ繋げます」
「ああ」
周波数を本部と合わせる。ノイズがとれてちゃんと通信が開始される
「新武器が完成した。今からそちらに送る」
その通信を聞いたとたん、周りがざわめいた。当たり前だ。現在モンスターに通用する武器はダイヤモンドか窒化ホウ素で出来た武器だけだからだ。
「そちらの状況は?」
聞かれたので、私、長良野は手短に現状を話した――
――現在・鹿児島県肝付町
「はぁ・・・ゴホッ・・・っえ・・」
沖田 航はすでに満身創痍だった。左腕は上がらず、頭からは血が流れ、左目が血で見えなくなかった。
司令部との通信もただれ、どの戦場がどうなっているのかすらわからない。
俺の周りはすでにモンスターで囲まれている。希望は、ない。
「ははは・・・我ながら馬鹿をしたものだ」
正直、死にたくなかったが。これが運命というのなら受け入れよう。
「がぃゅぁあああああ!」
モンスターが気持ち悪い声を上げる。前言撤回。やっぱこんなやつに殺されてたまるか。
「死ね」
俺は剣を振って目の前のモンスターを倒す。
残念ながら、まだやることがあるんでな。モンスターさん。死ぬわけにはいかない。
「っ・・・は」
足はまだ両方動く。右腕も動く。右目も見える。こんだけ動けば十分だ。殺れる。
「さて・・バケモノさんよ」
俺は決意を新たに、もう一度宣戦布告をする。地獄のような場所で、希望を探すかのように。
「俺、やっぱ死ねねえんだわ!」
――同時刻、香川上空・ヘリ内
「よし、最終調整完了だ」
「ありがとうございます」
私は自分の武装をしまい、お礼を言う。今からモンスターと戦闘をするから、整備を頼んだのだ。
「すでに現地では隊員が戦闘をしています」
技術班の人から情報をもらう。
「戦地の真ん中にヘリを入れますので、降下していただきます」
降下しながら戦地に入るらしい。高いところは苦手なんだけどなぁ
「味方の数はいくらほどなんですか?」
「1人です」
1人・・・ではすぐに向かわないと
「死なせるようなものではありませんか!」
思わず怒鳴ってしまう。
「すぐに向かってください!」
「り、了解!」
ヘリの操縦士は私の怒鳴り声に怯えながら返事をした
「何故、そんなに急いでいるんですか?」
平和ボケした整備士さんが聞いてきたので、野崎菫は澄ました顔で答えた。
「もう誰も、死なせたくないので」
――5分後、鹿児島県肝付町
殺しても殺しても、モンスターは近づいてくる。もう何体殺ったかわからない。
こんだけ倒したら、もう大将もんだろ。早く帰りたい。
「ちっ・・・退路がない」
一方向に全力攻撃をすれば背後や横をとられる。
かと言って、まんべんなく攻撃していると一向に埒があかない。
「ぐっ・・・ちっくしょう!」
モンスターの攻撃をよろけながら避け、カウンターを叩き込む。
「ぐぉぉぉおお・・・」
また一体、沈んでいく。
「さて、次はどいつだ・・」
威嚇が聞くとは思っていないが一応しておく。
どうやら、足も限界のようだ。もう動けそうにない。
しかも血が足りなくて・・意識が・・・くそっ。
このままじゃ死んじまう。ならば・・・
「こいお前ら、まとめて道連れにしてやんよ」
一体でも多くしとめる。そんでできるだけ生き延びる!
「っ!避けて!」
刀を前に構えていると上から声がした。
「は?」
「いいから!」
なにかわからないが、横に転がる
「隕石!(メテオ)」
転がった瞬間、俺がさっき居た場所を含め俺の周りのモンスターたちが死んでいく。
上から降ってくる弾丸によって。撃った本人はさっき俺が居た場所に降り立った。
「ふぅ・・・生きてた?」
「ん、ああ。助かっ――」
「え?――」
瞬間、俺と彼女の時が止まる。弾丸を撃ち、俺を助けた張本人は元同級生の野崎菫だった。
「なんで?」
頭の中に浮かんだ疑問がそのまま口に出る。
「貴方を助けに来たの」
野崎は真剣な顔で答えた
「貴方こそ、そんなボロボロで!」
野崎が急に涙目になって怒鳴った。おそらく俺の状態を見て心配しているのだろう。
「死にかけてたじゃない!」
野崎が怒ってくるが、今はそんな余裕はない。周りがまた、モンスターに囲まれた。
「野崎・・・話は後で。今は相手に集中・・ちっ」
どうやら、マジで足が限界を超えたようだ。もう動かない。
「大丈夫、私が守るから」
野崎が俺を見てそう言ってくる。
「守るってお前・・」
「なんで私が来たかわかっているの?」
野崎がマジで心配した顔で、告げてくる。
「貴方を守りに来たの」
さっきの言葉と変わんないよ、俺は静かに呟いた。
――その頃、作戦司令部
指揮官が新兵器のデータを見て唖然としている。
「指揮官、いったい?」
私は指揮官に声をかけた
「これは・・・なんてものを・・・」
「指揮官!」
「は!」
やっと指揮官が我に帰った。一体なにを見たんだろう?
「これを見ろ」
指揮官に端末を手渡される
「あ、はい・・・っ!」
そこに表示されていたのは、あきらか人の所業とは思えないことであった。
――同時刻、鹿児島県肝付町
「一体なにを?」
航くんが私に絶望しかない目を向けてくる。
「力を手に入れたの。あなたを守れる力が」
私は静かに、現実を伝える。
「え・・・?」
私はすでに人ではない。人外だ。
「一体どういう・・・?」
「ごめん航くん、私はもう、あなたと同じじゃないの」
だけど、この力を手に入れることによってあなたを守れる。私はそれがうれしい。
だから人外にもなれた。だからどんな実験にも耐えた。
「は・・・?」
私は武装を作り出す
「お前、手が・・」
両手から銃を生み出す。
「な・・・!?」
航くんが口を開けて驚いている。まあ当たり前か。こんなの人間が出来ることじゃないしね。
「ここで待ってて、航君。すぐ片づけてくる」
私は航君にそう告げ、モンスターに向かって歩き出した
――同時刻、作戦司令部
「改造人間・・・?」
私は、端末に書いてある情報を読み上げる。
「人間の体内に窒素ホウ素を作り出す機能を備えることによって、モンスターに対抗する力を得る?」
明らか、そんなことができるはずがない。こんなのイカれてる!
「く・・まさか政府がここまで腐っているとは・・・」
指揮官が悔しそうに呟く。
「指揮官、これは・・・?」
「俺たちにも伝わっていなかった。おそらく極秘計画だ」
極秘でこんなことをやっているなんて・・日本はどうなってるの?
「とにかく、その人間をサポートしろ!」
「あ、はい!」
私はは指揮官の命令で席に着いて、周波数を合わせ始めた――
――同時刻、鹿児島県肝付町
「ザ・・ザザ・・・聞こえ・・か・・」
どこかで無線の声が聞こえる。どうやら無線機を落としたようだ
「はい、聞こえています」
野崎が歩きながら、通信に応答する。
「本・・の方・すか?」
「はい、そうです」
野崎が司令部の質問に答える。
「い・・・・ヘリを・・送り・・す!撤退を!」
「いえ、その必要はありません。」
野崎は二丁拳銃をモンスターに構えて答えた
「今から殲滅しますから」
拳銃から大量の弾丸が発砲された。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「んな!?」
現存兵器は効かないはずだが。一体どういうことだ?
「この弾丸はね、窒化ホウ素で出来てるんだ」
「は・・・何故そんな貴重なモノを?」
「私、作れるの。窒化ホウ素を」
・・・こいつ、なに言っているんだ?自分で作れる・・・え。
「私はもう、人ではないの」
絶えずモンスターに発砲しながら、言葉を続ける野崎
「あなたを守る!」
・・・・・・ああ、野崎まで、政府に侵されたのか。
俺や三条だけでよかったのに。『被害者』は出したくなかったのに。
「っ・・弾切れ!・・・・きゃぁぁぁ」
「野崎!」
生産スピードが追いつかないのか!?ちっ、動けよ!
「下がって!」
「お前がな」
はぁ・・やっぱ無理しないとダメか。俺は痛むすら感じなくなった足を動かし立ち上がった
「馬鹿言わないで!私は、あなたを守りに・・」
「失うのはごめんだからな」
もう、感覚のない右腕を上げ、剣を構える。
「航君!」
「黙れ、そして帰れ」
一歩、一歩、モンスターの群れに近づいていく。
「下がって!」
「・・・・・・・・」
もう感覚のない体を、航は動かす。守れないものを、守ろうと足掻くために。
すでに失ったものに、目を向ける暇などない。今、守れるものを守る。
今日、初めて少年は足掻いた。希望の見えないこの世界で
ここまで付き合ってくださった読者様。感謝します




