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大きな世界と孤独の少年  作者: 麗琶
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4/5

episode:3

思い出せば後悔ばかりだ。

それならいっそ独りがいい。ずっとそう思っていた。

でもそれはただの言い訳であり、現実逃避だったのかもしれない。

思えばいつも逃げてばかりで、肝心な所から目を逸らし続けていた。

僕は本当に弱い奴だ。

困難な壁に目の前を塞がれても、それでも逃げずに立ち向かった人の姿ってのはとても眩しくて、太陽のようだと思った。

ねぇ、僕もいつかそんな風になれるかな?

今更そんな事、思っちゃったんだ。

自分の気持ちに気付くのに時間をかけすぎたようだ。


ー目の前には成長した兄の姿が、冷たく横たわっていた。


あぁ、今更…。

もう遅いんだ。


ー


「………」


「ユウ!!」


唐突に名前を呼ばれて目を開くと、心配そうに自分を見ているレンの姿があった。

どうやら自分は眠っていたようだ。酷い汗をかいている。


「大丈夫?凄くうなされてたようだけど。」


「あぁ、うん。…悪い夢を見た。」


眠っていて夢を見るなんていつぶりだろうか。それも、兄が死ぬ夢なんて皮肉なものだ。


「ユウ…?どうしたの?」


レンはまだ、心配そうに僕を見ていた。


「ううん…。何でもない。」


そうか。僕にはまだ、やるべきことがあった。


「ユウ!?」


二階の窓をすり抜け、家の外へと飛び出す。


「ありがとう。レン。」


そう呟いて走り出す。

レンは僕に大事なことを教えてくれた。

僕はやっと自分が確立した存在だってこと、気付けたよ。

それと同時に、今もずっと世界は周り続けている事を知った。

もう、遅いのかもしれない。

それでも走った。

夢で見た、兄の元へと。

知る筈のない目的地へと。


不思議と不安は無かった。


ー


ふと気がついたら病院の前にいた。

迷わず進み、ある病室へと向かう。

病室の扉を開けると、そこにいた一人の老人に目がいった。

見た目はかなり変わっているけど、僕には分かった。この人が自分の兄だということが。

兄はどうやら眠っているようだ。


「兄さん。」


声が届いているのかいないのか、彼はゆっくり目を開いた。

しかし、目が合う事はなかった。


「分かってたよ。兄さん。」


これは僕が犯した罪に対する罰だ。


「僕はずっと、貴方から逃げていました。きっと兄さんのことだから勘違いしたでしょう?」


僕は未熟さ故に最低な決断をした。彼を残して死んだ事がずっと、心残りだった。

こんな事を思うのは自己中心的だということは十分分かっている。

きっと、彼はずっと苦しんでいたんだろう。


「ごめんなさい。」


僕はきっと、ずっと謝りたかったのだろう。

これが死んでもなお生き続けた理由なのかもしれない。


「ありがとう。」


不意に彼は口を開いた。


「えっ?」


彼の目が僕を捉える事はない。だけど、その言葉は確実に自分へと向けられていた。


「来てくれたのでしょう?」


彼は丁寧な口調でそう言った。姿こそは変わっても、彼は何も変わっていなかった。


「ずっと…待っていました。」


彼は小さく笑って言葉を繋げる。


「貴方の事だからきっと、何も変わっていないのでしょう?またあの姿が見えないのはとても残念です。」


彼は楽しそうに笑って、そしてはっきりと僕を見て、言った。


「もう強がらなくていいよ。」


その一言で頭が真っ白になった。

僕を止めていた何かが動き出すのを感じる。

こみ上げてきたそれは頬を濡らし、彼の手に落ちた。

彼はその手を見つめ、温かな笑みを浮かべた。

それは、あの日自分で殺した僕を取り戻した瞬間だった。

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