EL『終わりなき禍』(1)
EL『終わりなき禍』
白い闇の中で…………やっぱり僕は独りなんだね……。
僕には何も無いの? 僕は何なの? ねぇ、誰か……僕の声に応えて……。
誰か、僕のことを「人間」と呼んで……。
僕は「化け物」だって、充分わかってるから……わかってるけど……それでも化け物の身体で、僕は望んでいるんだよ……。
あぁ、僕は、化け物と呼ばれたまま、こうやって死んでいくんだね……。
『……悪魔? 違う、俺は、』
『……何故泣いているのですか?』
『地獄、に堕ちろ……異形の者どもめ……!』
『どうしてさぁ……なんで僕に何も言わずに勝手なコトをっ』
『純也、君は幸福を掴んでくれ』
『生きろ……っ、純也あああぁぁぁぁぁー!!!!』
だれなの……?
いろんな声……でも、誰一人として思い出せないよ……。
「……ダメだよ、思い出さないで。」
「え……!?」
右も左も、上下さえも存在しないような白い闇の中、僕は振り返った。そこにいたのは、白銀の髪に空のような青い瞳、白い服を着た僕より小さい男の子。
「君は……誰?」
「僕は君だよ。でも、僕は純也じゃない。……ねぇお願い、どうか思い出さないで」
「どうして!? 僕は知りたいんだ、僕が何者なのかを! 君は知ってるのっ? 教えて、僕の過去をっ!!」
男の子は哀しそうに首を横に振り、じっと潤んだ瞳で僕を見据えてくる。……泣いてるの……?
「僕が伝えることは君の過去じゃない。君が過去を知った時、僕らは――――てしまうから」
「それ……どういう意味……?」
「決して思い出さないで、でも、どうか忘れないで。僕が存在したコトを…………君に《過去》があったことを……」
そして白に更に霧がかかり、男の子の姿は薄らいでいく。一筋の涙を流しながら、微笑んで、小さな声で「さよなら」と。
「待って! いかないで、僕を独りにしないで……っ、《君》を教えて――――!!」
『じゅんや……、純也……』
視界が歪んできた。誰かが僕を呼んでる……?
暗黒の閃光に包まれて、僕の意識は闇と光に呑まれていく――――。