針治療
A氏は、会社からの帰り道、奇妙な店を見つけた。
いつもは通らない道で偶然見つけたのだ。
その店の看板には「針」と書いてある。
その店だけ、並んでいる店よりも奥にあり、薄暗くなっている。
看板は、壊れかけている。
ドアの端には、くもの巣が張っている。
いかにもなにかがでそうだった。
とにかく、異様な雰囲気を漂わせていたのだ。
普通の人なら、自ら近づこうとはしないだろう。
しかし、何かが彼をその店に導かせた。
直感的な何かが支配したのだ。
中に入ってみると、そこにはすでに何人かの人が居た。
どうやら針治療をやっているようだ。
はり師と見える、老人が居た。
いかにもその道で何年もやってきた。と言った感じだ。
少し待っていると、自分の番が回ってきた。
「さて、今日ははじめてだね。どこか悪いところでもあるのかね?」
A氏は困った。
特に悪いところはないのだ。
「ちょっと、体調が悪いんですよ」
と、うそを言った。
すると、はり師は、
「そうですか。それでは、健康のツボを試してみませんかい?」
「健康のツボですか?」
「人生を健康な状態にするものだよ。まだ研究途中だがね。」
「では、それをお願いします。」
「副作用があるかもしれんのだが、、、」
「良いですよ。はやくやっちゃってください。」
A氏は、うつぶせになって、三ヶ所ほど針をうってもらった。
その日は、家に帰ってすぐにねた。
別に副作用も治療効果も信じてはいない。
馬鹿馬鹿しい。
無駄なお金を使ってしまったと、とも思っていた。
しかし、翌朝起きてみると気分がいいのだ。
仕事も快調で、なにもかも順調に進む。
それは健康そのものだった。
時は、一週間、二週間、、、、そして一年経った。
効き目が切れたのか、体調がすぐれなかったのだ。
しかし思い返してみると、はり師は、「人生を健康な状態にする」と言っていた。
おかしいではないか。
なぜ、もう効き目がとれるのだ?
怒っていた。
すぐにあの「針」に文句を言いに行った。
しかし、それは、望んでいた返事ではなかった。
はり師は言った。
「研究段階と言っただろぅ。人生の終わる一週間前には、効果がなくなるんだ」
それは彼の死を意味するものだった。
しかし真に受けることは出来なかった。
嘘であることを祈りながら、一週間を過ごした。
しかし、はり師の言ったことは真実であった。
A氏は、けいれんをおこし、死んだ。
はり師は、A氏の死のうわさを聞いてつぶやいた。
「失敗したなぁ。今回のツボも駄目であったか。あのツボは、一時的に健康状態にするが、ある期間を過ぎると集中的に体調が悪くなり、しまいには死んでしまう、という副作用があるのではないか、、、もっと研究する必要があるな。さて、改装してもっと電波を強くしないとだめだな。もっともっと客を集めなければいけない。」
A氏を呼び寄せたのは、はり師が開発した客を引きつける機械なのだ。
彼は、店を改装して、客を呼び集める電波を強くし、研究の対象となる患者を多く集め、研究で多くの犠牲者を出すに違いない。
世の中には何かが潜んでいることをお忘れないように。