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思春期を迎えた子供たちへ  作者: 櫻木サヱ
何も起きていないのに、削れていく

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何も起きてないのに、疲れている

朝、目が覚めた瞬間から、もう疲れている。

理由はない。

寝不足でもないし、熱があるわけでもない。

ただ、起きたくない。


布団の中で、天井を見ながら、スマホを触る。

通知は特に来ていない。

それでも画面を何度も更新する。

何かが変わっていないか確認するみたいに。


変わっていない。

世界は昨日のままだ。


それが、少しだけ腹が立つ。


学校に行く準備をする。

制服を着る。

鏡を見る。

昨日と同じ顔なのに、なんか違う気がする。


どこが、と聞かれても分からない。

ただ「これで外に出るのか」と思うと、気が重い。


家族の声が聞こえる。

怒っているわけでもない。

優しくないわけでもない。

普通だ。


普通が、いちばんしんどい。


学校までの道は覚えている。

目を閉じても歩ける。

なのに今日は、やけに長く感じる。


友達と会えば、ちゃんと笑う。

昨日の続きみたいな会話をする。

「それな」って言う。

タイミングを間違えないように気をつける。


一人になりたいわけじゃない。

でも、誰かといるのもしんどい。


教室はうるさい。

笑い声が反射して、耳の奥に残る。

黒板の文字は見えているのに、頭に入らない。


先生の声が遠い。

怒られているわけでもないのに、なぜか責められている気がする。


隣の席の誰かが、急に大人に見える。

自分だけが取り残されているような気がして、焦る。


でも、何をどうすればいいのかは分からない。


「将来どうするの?」


その言葉が、一番困る。

今の話をしているのに、勝手に未来を引っ張り出される感じがする。


将来なんて、考えていない。

考えたくない。

だって今が、もう手一杯だから。


放課後、帰り道。

みんなと別れて、一人になる。


さっきまでうるさかった世界が、急に静かになる。

それが少しだけ、楽。


でも同時に、何かを失った気もする。


家に帰って、部屋に入る。

ドアを閉める。

それだけで、やっと呼吸できる気がする。


ベッドに座って、天井を見る。

朝と同じ天井。

でも朝より、少しだけ重たい。


何が嫌だったのか、思い出そうとする。

特別なことは、何もない。


誰かに嫌われたわけでもない。

失敗したわけでもない。

傷つくことは、何も起きていない。


なのに、心だけが、ずっと摩耗している。


「自分、何かおかしいのかな」


その考えが浮かんで、すぐに消す。

考えたところで答えは出ない。


スマホを見る。

誰かの楽しそうな写真。

知らない誰かの成功。

流行っている言葉。


全部、自分とは関係ないはずなのに、

少しずつ、自分を削っていく。


いいねを押す指は軽い。

その軽さが、怖い。


夜になる。

布団に入る。


明日も、たぶん同じだ。

何も起きない。

でも、また疲れる。


目を閉じながら思う。


この感じが、いつまで続くんだろう。


誰にも聞かない。

聞いたら、ちゃんとした答えを返されそうだから。


今日は、それだけ。


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