第77話:終わる物語と終わらない旅
ノアは破壊され、基地は崩壊する。そしてパーティは自動的に移動して、(なぜか都合よく存在していた)ワープゾーンから逃げる。もうCユニットが大破して自走不能の戦車もいるのに、これは完全にエンディング前のムーブだな。
しかし、その予想は裏切られた。ワープした先では自動操作が行われない。移動しようとしたら「自走不能です」という警告が。とりあえずドッグシステムは有効なようなので起動してみると……そこはポブレ・オプレの北、ビックキャノンが砲撃を浴びせていた地域だった。
なるほど、あの場所で作られた機械がここにワープしてきていたので、それを迎撃していたのがビックキャノンだったというわけか。ひとまずリオラドに戻り、戦車から降りて実家に向かうことにする。ドラクエならこれでエンディングのはずだ。その前に人々の話を聞いてみよう。
……しかし、セリフは変わらない。それどころかメモリーセンターも機能しているのでセーブも可能。外に出てみれば普通にモンスターも出現する。実家の父や姉の反応もいつもどおり。つまり、エンディングには入らないようだ。
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「ねえ、伯父さんいる?」
思わず、従兄のマサキ君にメッセージを送る。
「いるけど、なにか用?」
「ファミコンのメタルマックスで、ノアを倒したのにエンディングにならないんだけど、わかるかなって」
ネットで検索すればすぐに答えが出てくるのだろう。しかし、それでは見たくもないネタバレを食らってしまうかも知れない。伯父なら、そのあたりを理解して最小限の助言をくれるはずだ。
「親父に話しかけてみろ、だってさ」
アドバイスはそれだけのようだ。改めて父親(もちろん、ゲームの中の主人公の父親という意味だろう)に話しかける。いつもと同じセリフだが、本当にここでいいのだろうか。
……ここでふと気づく。話しかけた時の選択肢に「引退」があることを。いや、前からあったのかも知れないが、いままでは修理ばかりしていたので目に入らなかった。
「引退」を選ぶ。本当かと確認され、セーブまでされる。始まるスタッフロール。最後にはキャラと戦車のステータス。ノアとの戦いで乗っていた戦車には勲章マークがつくようだ。まだ入手していない2つの戦車も含めて全てに勲章を付け、あとは逃走中のミスターカミカゼを倒せばパーフェクトだろうか。
そして、ハンターを引退したタケルは、それを撤回して新たな旅に出る。ノアを破壊したことで今すぐモンスターが消えて無くなるわけではないようだが、ひとまず人類絶滅の危機は去ったということでか、世界は救われたようだ。これにて物語は終了。
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「へえ、ラスボスを倒してもエンディングにならないんだな」
夕飯の時、父に話してみる。
「うん、またラスボスのところに言ったら復活してた。勲章マークっていうのかな、倒した印は残るんだけど、ボスとその手前だけ時間が戻ってるみたいで」
既に破壊されたノアとは二度と戦えないのかと思ってラストダンジョンに再び潜ってみたが、前座であるガーディアンなども含めて復活していた。セリフなども、覚えている限りでは全く変わっていない。ノアは不死身なのだろうか。
「あー、それは多分だけどな。設定上は倒したことになってるし復活もしないけど、ゲームの都合でその部分だけ戻っている、と考えたほうがいいかもな」
「わかった、ポケモンの殿堂入りみたいなものね」
「そうそう」
母が口を挟んで、父がそれに同意をする。僕にはよくわからないので、説明してくれた。
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ポケモンこと『ポケットモンスター』のRPGシリーズにおいては、基本的には四天王とチャンピオンを打倒して「殿堂入り」することで一区切りとなり、エンディングが見られる。少なくとも両親がプレイしたというゲームボーイアドバンスまでのシリーズではそうだったとのことである。
しかし再びチャンピオンのもとへ行くと、前回と全く同じセリフで、初挑戦であるかのような展開になるようだ。それでいて、倒したことによる経験値やフラグ(ちょうどメタルマックスにおける戦車の勲章のように、仲間キャラであるポケモンごとにリボンが付いたりするらしい)は残っている。
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「へえ、ボスを倒したらそれで終わりじゃないんだ」
今までにプレイしたRPGは、どれも最後のボスを倒したらそのままエンディングモードに突入して、再びゲームに戻るにはリセットしてセーブポイントまで戻る必要があった。しかしメタルマックスでは、クリアしてもそのまま冒険が続くのだ。
「まあ、ストーリーとしてはほぼ終わりだろうな。やり残したことを片付けたり、もしかしたらクリア後限定の追加イベントなんかもあるのかも知れないけれど」
少なくとも、戦車と賞金首はまだコンプリートしていない。まだまだクリアしたとは言えないだろう。
フミさんに想いを伝えるのは、もう少しお預けになるかも知れない。




