第69話:赤い悪魔の運命に抗いたい
「なるほど、ここがゴメスのアジトだな」
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BSコントローラーのマップを見て、次の行き先を考えた。今までの冒険の舞台はマップの東側2/3ほどの、草原が広がるエリアだった。反対の西側1/3には広大な砂漠が広がっている。そして、マップの東と西をつなぐのは、川沿いのごく細い道のようだった。
この地図の欠点は、沼地や森林も草原と同じ色で表示されること。例えば、故郷であるリオラドの西にも道が開けているように見えるが、実際は深い森に覆われている(ゲーム上は「侵入不可能の木のアイコンで埋め尽くされている」)ため、進むことができない。つまり、実際に行ってみないと進めるかどうかがわからないのだ。
ともかく、イーデンから山沿いに南西方向に進むと、滝壺の湖のほとりに建物があった。これが、話に聞いていたゴメスのアジトに違いない。ここでの戦闘は必須イベントかと思い込んでいたが、道を塞いでいるわけではなかったので、今は無視して先に進むことにする。
ここから先は広大な砂漠地帯が広がる。とりあえず東の草原のあたりを進んでいると、サンタ・ポコの町を発見。一旦補給して、今度は南西の草原を目指すと、『ドラクエ1』のリムルダールの町のような地形にあるカナベルの町を発見。これで、ドッグシステムの行き先は残すところあと1つになった。
レンタルタンクも、ついに数字では足りなくなって「レンタA号」が出てきてしまった。レンタ9号ともども、エクスカリバー並の主砲を積んでいる。とりあえずSPの高いレンタ9号に乗って、ゴメスのアジトを目指すことにした。全滅しても安心だ。
ダンジョンを覚悟したが、中に入るといきなりゴメスと対面。先客はなんと「赤い悪魔」レッドウルフ! しかし、計略にハマって生身で戦わされ負けてしまった。こちらから戦いを挑むと、口ほどにもなくあっさり倒せたのだが、ウルフは助からない。赤い戦車は譲ってもらえたが……。
なにか別の方法があるかも知れない。町でセーブしておいたので、ここは電源を落としてやり直すことにした。今日はもう遅いので、また明日。
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「いわゆる負けイベントってやつだな」
翌日。休み時間に昨夜のゲームの話をすると、ソウタがそう返してきた。
「負けイベント?」
「ああ、シナリオの都合で絶対に勝てないようになっているイベント。あるいは特定の条件があれば勝てたり、戦いそのものを回避できたりする場合もある」
「なるほど。ウルフは行方不明の恋人を探していたから、ニセ者に騙されて罠にかかった。それなら、先に本物の恋人を見つけて連れてくれば……」
「メタルマックスって、自由度の高いゲームだって聞いてるからな。シナリオの分岐もあるかも知れないぞ」
「シナリオの分岐?」
「ああ、例えばあるキャラと戦うのか、それとも協力するのか。力づくで進むのか、策略でやり過ごすか。みたいなパターンが多いかな」
文芸部のハルキが言う。RPGはいろいろなパターンのシナリオがシンプルにまとまっているので、物語を書く上で参考にする場合も多いという。
「つまりこの場合、ウルフを敵の罠にハメて見殺しにするのか、罠を破るための策を立てるのか、ってことか」
ソラが言う。自分自身ではあまりゲームをやらないようだが、ソウタやハルキの後ろで作戦を考えるのが得意なのだ。
「本当は自力で助けられたらいいんだけど、それはゲームの仕様上できないからなぁ」
ウルフと最初に会った時、ボスとの戦いでピンチの時に助けに来てくれた。あの時とは逆に、主人公がウルフを助けられないだろうか。もっともウルフに言わせてみれば、戦車を探しに来た通り道にいたから倒したまでで、主人公を助けるつもりなんてなかったのかも知れないけれど。しかしそれならば、こちらとしても「賞金首を追いかけてただけ」と言えばいい。お互いに貸し借りのない、賞金稼ぎ同士のクールなやり取りだ。
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「……なかなかいい想像力してるなぁ。そうだよ、これこそがロールプレイなんだ」
僕がストーリーに対しての持論を伝えると、二人がぽかんとしている中で、ハルキだけはそう答えてくれた。
「やっぱり決められたストーリーがないと、それだけのめりこみやすいのかも。感情移入っていうんだっけ」
「そうだな。どちらかといえばコンピュータゲームよりも、テーブルトークのほうが向いてるかも知れないぞ。俺もそっちはまだまだ勉強中なんだけどさ」
ただのゲームのコマではなく、一人の人間を演じるゲーム。以前、文芸部の見学に行った時に話だけは聞いたことがある。その時はあまり実感できなかったが、今では「別の世界で冒険をするもう一人の自分」というものが想像できるようになった。
「ともかく、いろんな人物や物語を想像してみるってのは悪くないと思うぞ。心の体操みたいなものにもなるからな」
ハルキの言葉が心に残る。これからは、ゲームの世界がより色鮮やかに見えてくるような気がした。




