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令和の中学生がファミコンやってみた  作者: 矢木羽研


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第67話:エクスカリバーは裏切らず

「ねえ、エクスカリバー試してみたら?」


 イーデンの戦車装備屋のラインナップを見ながらフミさんが言う。そう、今日の放課後はうちに遊びに来ているのだ。今日は設備メンテナンスの都合で部活が無かったので、思い切って誘ってみたら付いてきてくれた。


「単体攻撃なら主砲のほうがいいと思うんだよね。弾数も多いし」


 同じ武器屋で売っている15500ゴールドで売っている160ミリアモルフは、攻撃力570で62発。対して、7000ゴールドで売っているエクスカリバーは攻撃力710で4発しかない。攻撃力400のサンダーストームで20ダメージ程度しか出なかったことを考えると、大幅なダメージ増加は期待できないと思っていた。


「このゲーム、基本的に短期決戦みたいだから攻撃力重視がいいと思うんだけど」

「でも、攻撃力で見れば主砲の1.3倍くらいだから微妙じゃない?」

「多分、このゲームの計算式って引き算だと思う」


 そう言いながら、フミさんはカバンからノートを取り出す。


「例えばダメージ計算式をうんと単純化して、攻撃力-守備力=ダメージだと想定するね」

「うん」


 そして、簡単な計算式を書き込んだ。


「例えば攻撃力100で守備力80だと、100-80=20ダメージ。でも攻撃力150になると、150-80=70ダメージ。こんなふうに、相手の守備力を突き抜けると一気に強くなるんじゃない?」


「確かに……数字が大きすぎるから、てっきり割合だと思ってたけど」


 今まで遊んできたRPGでは、武器を更新してもせいぜい十数ポイントしか上がらなかった。しかし、メタルマックスでは平気で100単位も変動するのだ。


「試しにセーブしてからエクスカリバー買ってみない?」

「そうだね」


 彼女はやたらとエクスカリバーにこだわる。『ファイナルファンタジー』にも出てきた武器だが、ゲーマーにとっては心が躍る名前なのかもしれない。


 *


「お、150ダメージ!」


 攻撃力400のサンダーストームでは20くらいしか通らなかったのが、攻撃力710のエクスカリバーでは一気に130くらいも増えた。なんとなく、このゲームのダメージ計算式が見えてきた気がする。


「ほら、やっぱり!」


 予想が当たって喜ぶフミさんがかわいい。しかし、4発の砲弾を撃ち尽くしてもムカデロンは倒せなかった。HPがあまりにも高いのである。


「うーん、足りないか。でも160ミリアモルフだと攻撃しきる前に戦車が壊れそうだからなぁ」


 数値を見比べる限り、おそらくダメージは半分未満になる。それでも大破するまでに撃ち尽くせるのならトータルでは間違いなくダメージは増えるはずだ。勝てるかどうかは運次第になるけれど。


「やっぱり、主砲を試してみるか」

「……思ったんだけど、エクスカリバーを2人で撃ってもいいんじゃない?」

「ああ、でも運転レベルが低いとあんまりダメージ出ないと思うんだけど」

「たぶん、この場合は違うと思う。だって最初に見せてくれた副砲のダメージはみんな変わらなかったでしょ?」


 フミさんが部屋に上がったとき、昨日セーブしたままの「レンタ6号」軍団で挑戦してみせたのを思い出した。確かに、攻撃力400の副砲であるサンダーストームで攻撃して、誰が撃っても20ダメージ前後しか出なかったのだ。


「私の予想だと、運転レベルっていうのは相手よりも強くなってから初めて機能するんじゃないかなって」

「なるほど……確かに!」


 さっそく、トミーの乗るクインマリー(ワイルドバギー)にもエクスカリバーを搭載する。予想通り、与えるダメージはタケルと変わらない。運転レベルでは2倍近く違うにも関わらず。3ターン目に6発目、ダメージにして約900ポイントを与えたところでムカデロンは倒れていった。


「すごい、まさにエクスカリバー二刀流……!」


 圧倒的な火力に酔いしれる。しかしエクスカリバー1門だけでは4発でぎりぎりで倒せないところを、2人がかりで攻撃すれば余裕を持って倒せるというのは絶妙なバランスに思えた。


 *


「ねえ、このゲームのエクスカリバーってどんな形だと思う?」

「うーん、少なくとも剣じゃなさそうだしなぁ……」


 無事にムカデロンを討伐し、町に引き返して賞金を受け取ってセーブしたところで、フミさんが尋ねてきた。ステータス画面を開けば戦車のグラフィックが表示されるが、SEであればどれも同じ見た目として表現される。


「でも攻撃の見た目は大きな砲弾……そうだ、あれだ」


 ふと思い出し、僕はドッグシステムをポブレ・オプレにセットする。たしかこの周辺にいたはず……そう、「一発屋」だ。文字通り1発しか弾を撃てない、巨大な大砲型のモンスターである。


「こいつの攻撃がエクスカリバーと同じだと思う。ほら!」

「へえ、旧式の大砲って感じなのかな? 中世ヨーロッパみたいな」

「あー、そうかも」


 時代遅れで無骨な、しかし火力は抜群の巨大な大砲をくくりつけた戦車を想像する。これは果たしてカッコいいのだろうか。僕にはよくわからない。


「ねえ、フミさんってエクスカリバーに思い入れってあるの?」

「ファイナルファンタジーでは2や3にも出てくるし、ちょっと変わったところではファイアーエムブレムだと風の魔法として出てきたり」


「ファイヤーエンブレム?」

「シミュレーションRPGの元祖って言われてるんだけど……聞いたことある?」

「ごめん、知らない。調べてみるね」


 そろそろ、門限の都合で彼女は帰らなければならない。きりがいいところだし、今回はこのあたりで終わりにするか。


 *


「あら、もう帰っちゃうの?」


 玄関に降りてきたフミさんを見て母が言う。


「はい。牛乳ゼリー、ごちそうさまでした! ブルーベリージャムがおいしかったです」

「ちょっと甘みが足りないかと思ったから添えてみたんだけど、気に入ってもらえたならよかったわぁ」

「それじゃ、私はこれで。タケルさん、また明日ね」

「うん、気をつけて帰ってね」


 彼女を見送る。明日もいい日になりそうな気がした。

注:


『エクスカリバー』


 シリーズではミサイル系として登場することが定番だが、初代ではあくまでも「巨大な砲弾」である。現実の誘導砲弾である「M982エクスカリバー」の開発が1992年から始まったようなので、そちらに引きずられた可能性がある。

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