第64話:洞窟で引き返して折り返し
今夜も宿題を片付けたらファミコンタイム。マンモスタンクの賞金が入ったので戦車をパワーアップさせよう。
最初にやったのは、アドベント(モスキート)にSEの穴を開けること。クインマリー(ワイルドバギー)に主砲の穴を開けてもよかったのだが、コスト的にはSEのほうが低コストで付けられるようだ。主人公タケルの素早さを活かすなら、主砲による単体攻撃とSEによる範囲攻撃は選べたほうがよい。
火炎放射器も、より上位版の火属性武器だと思われるRDナパームに載せ替える。エンジンをインパルスに、主砲を115ミリロングTに。一気にパワーアップだ。
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フリーザの町の西方面は行き止まりなので、東のほうを探索する。入り組んだ砂浜地帯にある洞窟の中には戦車があると聞いたのだが、ザコ敵のレーザーミミズの攻撃力が強すぎて、何の収穫も得られないまま引き返してきた。
レンタルタンクを借りてこようと思ったが、牽引できるのは1両だけなので予備車両としては心もとない。一部でも破損すると帰って行ってしまうが、逆に破損以外の方法で送り返す手段もない。「かばう」で攻撃を集中させることはできるが、ターンの途中で壊れたら無防備で放り出されるわけで、このような場面では使いづらい。
だいたい、すでに戦車は3人分揃っている。4両目以降の戦車になんらかの用途が存在するのならばまだしも、今の段階で無理して取りに行く価値はあまりないと思われる。いざとなったらレンタルもあるんだし。
道が途切れていたが、都合よく建っていたビルを爆破して道を作る。……いや、なんでこんなところにビルがぽつんと建ってたんだろう? ともかく、海を渡ったらイル・ミグラの町についた。今日は洞窟探索の無駄骨で疲れたので、このへんにしておこうか。
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布団に寝っ転がりながら、ハルキから送られてきたリンク集を見る。ポストアポカリプスの有名作品だ。またジャンルは少し違うとのことだが、メタルマックスへの影響が大きそうなタイトルとして『マッドマックス』も紹介されていた。
「それにしても詳しいね」
「ほとんど先輩たちの受け売りだけどな。俺も自分で見たやつはまだほとんど無いし」
文芸部では、創作のヒントとして、あるいは先例を知るために、ジャンル別に有名な作品の知識が共有されているようだ。小説だけでなく、漫画や映像作品、ゲームなどのあらゆるメディアが含まれる。
「そういや、ハルキってゲームはやらないんだっけ?」
「今はスマホで少しやってる。家には親父のスーファミとプレステがあったかな? 先輩からはゲームも紹介されてるから、色々やってみようと思ってるんだけどな。前に借りてたジャンプのやつ、あれはキツいのが多かったなぁ」
いわゆるキャラゲーと呼ばれる、漫画などのキャラを使った版権もののファミコンソフトは出来が悪いと聞いている。父が言うには、ファミコンでまともなキャラゲーはガンダムとドラえもんくらいだという。さすがにそれは大げさだと思うのだが、母の話を聞いてみても「キャラゲーはつまらない」という印象が根強い世代のようだ。
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「そうだタケル、ウィザードリィは持ってたっけ?」
「あるよ、2だけだけど」
ウィザードリィ2。これは父が大学生のころに購入してクリアしたものだと前に聞いた。なぜ2だけなのかと聞いたら、ストーリーはあって無いようなものだし、2が一番安かったからだという。
「前、部活体験の時に会った先輩覚えてるか? ウィザードリィに興味があるみたいなんだけど、プレイする環境が無いみたいなんだよな。もしかしたら世話になるかも」
その先輩、確か女子だったはず。もしかしてハルキは彼女を狙っているのだろうか。
「まあ、今やってるメタルマックスが終わってからでいいからな。ファミコンってソフトの抜き差しでデータが消えることも多いって聞いたし」
実際、その通りであった。一度は生きているのを確認したデータでも、接触不良で電源を入れ直しているうちに消えてしまった例がある。ファミコンソフトのデータはいつ消えるかわからないからこそ、集中してプレイしないといけない。
とはいえ、メタルマックスは想定よりかなり速いペースで進んでいる。まだ2日目なのにも関わらず、イル・ミグラについた時点でドッグシステムの行き先は7箇所、リストを見る限りでは全12箇所と推測されるので半分を超えた。レベルも16になり、クリア済みだと思われる伯父のデータであるレベル35の半分近くに迫っている。戦車も4両目がありそうなところを通り過ぎたし、折り返し地点はこのあたりだと思われる。




