第61話:ビックキャノンと父の背中
「次は工場行こう!」
ソラに急かされ、東の工場を目指す。仲間になったばかりのトミーはレンタ1号に乗せておけばひとまず安心だろう。長い橋には線路が引かれているが、あちこち壊れていて機能はしていないように見える。しかし意外にも工場には人間がいて、機械も動作しているようだ。
「あれ、人間いるの?」
「幽霊とかゾンビかも?」
話しかけようとして近づくと、いきなり敵が出てきた。監視カメラと、クレーンアームのようなバットシステムだ。
「工場には人殺しの機械があるって言ってたけど、このことかな」
たしかネギの村で聞いた情報だった。とはいえ戦車の前では豆鉄砲も同然。男を追いかけてみると、どうやら普通の人間のようだ。自然保護団体を恐れながら廃棄物を投棄したりしている。どう見ても廃工場にしか見えないのだが、何かを作っているのだろうか。っていうか自然保護団体なんてあるの?
「また出てきた。こいつらなんなんだろう」
「部屋の入口の固定戦闘? だとすると警備ロボットなのかも」
侵入者を撃退する機械が設置されているのに、その侵入者自身(つまり我々のパーティ)が、工場の人間とは友好的に会話できるというのが非常に奇妙で、どこかゆがんだものを感じる。花柄のカーペットで飾り立てられた社長室までたどりついて、バギーを譲ってもらえることになったが、この工場の正体はわからないままだった。
「なんかあっさり手に入ったんだけど、名前はどうしようか」
「そうだな。なにか花に関係した言葉とか?」
ピンク色のカーペットで思い出したのは、MOTHERのマジカント。そこを治めるクイーンマリーなんてどうだろうか。6文字までだから「クインマリー」と縮むけれど。
「クインマリーなんて花、あったっけ?」
「ああ、これはMOTHERに出てくる女王様の名前」
言われてみれば、ローズマリーとかマリーゴールドみたいな響きで、そういう花があってもおかしくない。ともかく、主砲は無いが強そうなガトリング砲を搭載したワイルドバギーを、主人公のタケルに乗せることにした。
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「そうだ、レンタルタンクどうしようか」
工場にはレンタルタンクを1両借りて来た。このままバギーに乗って帰ると、乗り捨てていくことになる。
「乗り捨てても回収してくれるかも知れないけど、二度手間は面倒だしな」
あれこれ試してみたら、「調べる」コマンドで牽引できることを確認。考えてみれば戦車が自走不能になるケースもあるわけで、そのような場合のためにレッカー移動ができるのは当然であった。さっそくドッグシステムで引き返す。牽引車もちゃんと付いてきてくれた。
「あ、タケルちょっと待った。レンタルの戦車は町の外に置いてみないか?」
「なんで?」
「離れたところからも回収してくれるかどうか、確認できるだろ」
なるほど、試せる時に試してみるというわけか。結果は無事に回収してくれた。これからはダンジョン内でも気にせずに乗り捨てて行こう。
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「そろそろ帰るけど、こいつを倒すところは見届けたいな」
グループ攻撃のガトリング砲が火を吹いて、賞金首のドス・ピラニアスを手下もろともあっさり蹴散らす。次の行き先はただ一つ、北の大砲陣地だ。
昔、父がプレイして挫折したというビックキャノン。セーブしてから試しに挑んでみたら、砲撃によって近づく前にSPを0にされ、戦闘に入ったらあっという間に戦車を破壊されて全滅してしまった。今回はタイルパックを買い込んで、戦闘直前に回復させる作戦だ。
「徹甲弾が効くことはわかってるからな。今回は最初から撃ち込んでいこう」
1発だけ残っていた徹甲弾をダメ元で撃ってみたら、パーツが破損して攻撃頻度が激減した。最初に食らわせておけば、ダメージはだいぶ抑えられるはずだ。運転レベルが高い(戦車での攻撃力が大きい)タケルはガトリング砲でひたすら攻撃、徹甲弾を撃たせるのはメカニックのトミーに任せることにした。
激しい攻撃の前に、タイルパックで回復させたSPはあっという間に削られていく。しかし数ターン持たせられるだけでも大破のリスクは大幅に減る。その間に徹甲弾で行動を封じ、ひたすら攻撃を続け、結果としてどのパーツも大破することなく、ビックキャノンを撃破することに成功した。大量の経験値で一気に2レベルずつ上がり、ふたりともレベル11に。思わずソラと一緒にガッツポーズをとる。
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「壊れたパーツは修理キットで直すのかな?」
「たぶんそうだけど、修理屋ってのもあるよ」
そういえば主人公タケルの実家も修理屋だった。さっそくドッグシステムで戻る。修理費を請求されたが、結果として父親は無料で修理してくれた。そういえば父の背中のスジは曲がった腰の表現かと思ったが、仲間のメカニックにも付いていることを見ると、どうやら修理用のスパナらしい。
「弾薬や装甲の補給は有料なのに、パーツ修理はタダなんだなぁ」
「いっそのこと、装甲無しで突き進むというのもアリかもな」
すっかり作戦参謀となったソラが面白いことを言う。いずれにせよ、このゲームはできることが多い。例えば、強敵にぶつかってもレベル上げ以外のアプローチがいくらでも取れそうだ。
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「それじゃ、また学校で」
「ああ、気をつけてね」
ソラを見送る。今日は彼のアイディアにずいぶん助けられた気がする。自分ひとりではここまでスムーズに進めなかったかも知れない。今後も、ボス攻略や謎解きの手助けを頼むことがあるのだろうか。




