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令和の中学生がファミコンやってみた  作者: 矢木羽研


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第56話:現実でも君の手を取りたい

 静かな山小屋。つかの間の休息。遥か西の彼方、アドベント砂漠の地平線に日は落ちて、遠くで鳥の声がする。ひんやりと冷たい山の空気を、パチパチと爆ぜる暖炉の薪が暖める。二人だけの世界。タケルとフミは手を取り、静かに踊り始める……。


 僕は、ゲームの限られた描写から風景を思い描いた。


 もちろん、ここでいうタケルとフミとは、僕と日々木さんのことではない。その名前を付けたゲーム内のキャラクターに過ぎない。しかし、まさか自分の名前をつけた分身が、好きな女の子の分身と踊り始めるとは思わなかった。しかもはっきりと「好き」と伝えて。


 ***


「あなた達って、もしかして小学生の頃にフォークダンスってやってなかった?」


 話は今日の午後練にさかのぼる。トレ部の顧問の先生が、明後日の土曜日の球技祭のあとに行われるフォークダンスの話を振ってきた。


 僕たちは、本来なら小学5年生のときに、林間学校のキャンプファイヤーでフォークダンスを踊るはずだった。しかし感染対策で林間学校自体が中止になったので、フォークダンスをする機会がなかったのだ。


「はい。南小では無かったし、北小でもそうだったはずですよ」

「私のいたところでもそうでした」


 日々木さんも答える。彼女は僕のいた南小でも、ハルキ達のいた北小でもなく、この春に他県から引っ越してきたのだ。


「そんなに難しい踊りじゃないんだけど、全く知らないなら先輩に教えてもらったほうがいいかも知れないわね。……あ、ごめんちょっと職員室に行かなきゃ」


 先生は時計を見ると部室を後にした。部室の隅に、二人だけ残される。


「フォークダンス、どうする?」

「……どうしよ」


 結局、その日はいつもどおりのトレーニングをするだけで終わった。フォークダンスについては、なんとなく「男女で手を繋いで踊る」くらいの理解はあったので、お互いに照れくさかったのだろうと思う。


 ***


 家に帰ったら、いつものようにMOTHERの続きを始めた。予想もしなかったタイミングで突然加入した、ブラブラ団のボスこと「ボブ」はレベル18。ここだけ見ればメンバーより低めなのだが、ステータスは十分高い。


 武器はバレンタインで売っていたサバイバルナイフを持たせたが、そういえば以前マジカントでアシガルソード(足軽ソード?)を拾ったのを思い出して、引き出してみたら装備できた。強い! この時点でタケルを上回っている。


 バレンタインの東、ホーリーローリーマウンテンを目指す。タケルとボブの攻撃でほとんどの敵は倒せる。なんといっても素早いのが偉い。レベルもガンガン上がってますます強くなっていく。


 山の中は複雑に通路が入り組んでいて厄介。上りなのか下りなのかすらわからず、気がつくと前にいた場所に戻ってきたりするので、通路の形と行き先をメモしながら進む。ここでは最高のバット、とびきりのフライパン、刀(KATANA)といった、おそらくキャラごとの最強であろう武器が手に入った。


 もう最終決戦は近いのかも知れない。敵については強いことは強いのだが、危険なのは即死のビームγを使うブルースターマンの集団くらいである。


 1つしかないフランクリンバッジは、スーパーヒーリング(蘇生)を使えるフミにもたせておく。とにかく、彼女さえ死ななければサイマグネットによるPP吸収でいくらでも立て直しができる。自分にパワーシールドをかければ無敵だ。


 そんなわけで、洞窟を抜けて屋外マップに出た。現れたのはグリズリー。ただの動物だし、しょせんは単体だと思ってナメていたら、恐ろしい威力の連続攻撃であっという間に全滅してしまった。


 再び登り直し。見たこともない敵からは、とりあえずタケルの次元スリップで逃げることにした。消費は多いが確実に逃げられるのは頼もしい。恐怖のグリズリーに出会ったらフミにビームγを使わせるのも忘れない。倒すにしても逃げるにしても、生き残ったほうが戦闘を終わらせてくれる。


 なんとか山小屋に辿り着く。回復とセーブがありがたい。ここで、冒頭のシーンである。キャラ登録の時に女の子がいた時点で恋愛要素があるような気はしてたのだが、今までそのようなイベントは無かったので不意打ちされたような気分だ。


 すごく照れくさかったが、逆にこの名前にしておいてよかったと思った。同時に、ここに父や母、友達がいなくてよかったと思った。このイベントは僕が独り占めにしたい。せっかくなので、わざわざリセットしてセリフのパターンをすべて確認してしまった(最初に「いいえ」と答えたときのセリフが最高だった)。


 ---


5月18日(木)


 ブラブラ団のボスが4人目の仲間になった。強い味方ができたと思ったら、山小屋のイベントであっという間に別れることになってしまった。戦力はダウンしたけれど、馴染みのあるメンバーが戻ってきたことのほうが嬉しい。変かな?


メモ:フランクリンバッジはスーパーヒーリングを覚えたキャラに!

メモ:ブレインガのPSIを封じればサイマグネットで吸い放題!

メモ:ロボット系以外はビームγで一撃で倒せる!


 山小屋のダンスのイベント、すごくドキドキしたんだけど、日々木さんはどう思った?


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 日記には、これだけ書いておいた。

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