第54話:逃げる戦と逃げられぬ運命
現代アメリカが舞台のMOTHERは、いかにもアメリカ向きに作られたゲームかと思っていたのだが、ファミコン版は日本でのみ発売されたらしい。北米向けの移植版が開発中だったようだが結局発売されることはなく、後にそれをベースにリメイクしたのがGBA版なのだという。
「ま、いわゆるインターナショナル版ってやつだな」
「なにそれ?」
「ああ。ヒット作を海外向けにリリースするとき、細かいところを調整したり追加要素を入れたりすることがあるだろ。それを逆輸入して再び日本語版として売り出すってのが、父さんが子供の頃にはあったんだよ。今のゲームは世界同時発売で言語の切替も当たり前になったから、過去の話だけどな」
そんなことを、朝食を食べながら教えてくれた。
「私も、FF7はインター版でやってたなぁ」
母が答える。インターナショナルを「インター」と略すのは違和感しかないのだが、当時はそれで通じたのだろうか。
「実はFF4のイージータイプが元祖インター版なんだってさ」
「えー、そうだったの?!」
そのまま、両親の時計が子供の頃に戻った。僕は、今のところはよくわからない会話を背中で聞きながら学校に向かった。
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「昨日の日記も見せてもらったけど、なかなか独特な進め方かも」
朝練で、日々木さんに言われた。昨日の日記に書いた、スノーマンの町まで徒歩で行ったということに驚いていた。
「だって、線路が続いていたら歩きたくならない?」
「私もそうしたけど、無限ループかと思って途中でワープしちゃった」
確かに、トンネルを歩いている時はかなり不安になったのを思い出す。
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「今は幽霊屋敷なんだけど、石化や混乱でボロボロになって全滅しちゃったよ」
「あのダンジョン、たしかに難しかったね」
「扉のつながりも謎だしね。敵の攻撃自体はそれほどでもないから、今度は逃げまくってみる」
昨夜、少しだけプレイしたが幽霊屋敷は攻略できなかった。FF1でもDQ1でも桃太郎伝説でもそうだったが、長い道のりでは「逃げる」というのが非常に重要である。サイマグネットでリソースを補給できるからつい忘れてしまっていたのだが、逃げることで避けられる脅威は多い。
光の戦士やら勇者の子孫やら勇気と愛の戦士やらが逃げまくるのは格好悪いが、MOTHERの主人公たちは普通の子供だ。むしろ、脅威からは逃げるのが当たり前なのかも知れない。
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「ねえ、今日の一限の体育、男子は何やるの?」
「バレー。……サーブの練習しとかなきゃな」
バレーボールにおいて、サーブは順番に回ってくるので逃げられない。小学校の体育では無かった競技だし、経験者は決して多くないと思うのに、なんでみんな上手に入るんだろう。
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帰宅し、ファミコンの電源を入れる。今日は町の探索から始めよう。
レインディアでは詐欺師にヤバい金を押し付けられたり、食い逃げ犯がいたり、今後の展開の布石なのか単なるお遊びなのかよくわからないイベントが続く。とりあえず、物乞いからノミとシラミがもらえたのはうれしい。
ハロウィーンの町の西半分であるゴーストタウン部分を探索してみる。いかにも怪しいホテルに泊まったらスターマンとの戦闘に。あっさり撃破したが、しかしなぜこいつは寝込みを襲わずに完全回復したタイミングで襲ってきたのだろうか。
バーボットのPKビームγで仲間が一撃で倒されてしまう。どうやらフランクリンバッジで跳ね返さない限りは確定で即死のようだ(なんでこんな恐ろしい殺人ロボットが町の近くをうろついているんだ……)。先制一撃で倒せるようになったとはいえ、空振りする確率も低くないので気が抜けない。
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線路の反対側にも目を向ける。サンクスギビング北東、サンタクロース駅の先で線路は途切れていたが、北の山のほうから先に進むことができた。広大な砂漠地帯も気になるが、まずは線路沿いに進む。敵が強いが、サイコシールドで守りを固めて、1体だけ残してサイコブロックで能力を封じ、サイマグネットでPPを吸収しながら進むと安定する。
それにしてもサイコシールドは便利だ。物理攻撃も超能力も、自爆もクリティカル(スマッシュ)もきっちり半減してくれるし、ガードや耐性との併用でさらに半減する。全体がけできるフミの素早さが低いのが難点だが、なんならタケルによる単体がけと1ターン内に併用する選択肢すらある。
線路沿いに進むと、森の中にある終着駅にたどり着いた。周辺を探索するとイースターの町があった(だから、どうして町の中に駅を作らないのか)。大人が宇宙人にさらわれて子供だけの町。「おっぱい」を求める小さい子たちの声に少しドキっとする。
赤ん坊からテレポーテーションを伝授された。助走に失敗すると丸焦げになるがダメージは受けないのか。成功すれば超高速で空間を飛び越え、今まで行った町ならどこでも行ける。マップ上を直接移動する『桃伝』の飛燕の術とはまた違う見せ方だが、これはこれで迫力がある。
さらにマジカントから現実に帰ってくることも可能! これは便利だ。釣り針でマジカントにワープしてしまえば安全な「滑走路」も使えるわけで、これでかなり自由な移動が可能になったというわけだ。
道具屋ではエアガンを購入。ソラがいち早くブーメランを卒業してちょっと強くなった。それにしてもショックガン<ブーメラン<エアガンという順に強くなっていくのは割と違和感があるような。
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移動手段を確保できたので、素直に幽霊屋敷へ向かう。現在地の把握が困難な構造だが、階段を降りたりするうちにピアノのある部屋に。見えない手がピアノを奏でて4つ目のメロディを覚えたが、幽霊屋敷はそのままであり、特にボスを倒して悪霊を退散させるとかではない模様。
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5月17日(水)
線路沿いを進んでイースターに到着。テレポーテーションを覚えた!
幽霊屋敷で4つ目のメロディを入手。幽霊のボスと戦うのかと思ったけど、特に何もなしでピアノを弾いてもらった。屋敷の幽霊はそのまま。異変を解決するわけでもなく、そのままにして終わるというのはなんとも不気味。
そもそも宇宙人によって、人間や動物が狂ったりロボットが襲ってくるのはわかるけど、ゾンビや幽霊は関係あるのかな? 人形や動物だけでなく、幽霊も含めて、地球上のあらゆる存在が(時に人間と対立しながらも)力を貸してくれている?
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僕は日記にそう書いた。自分なりの考察のようなものだ。人間や動物にだって敵と味方がいるように、幽霊に味方がいてもおかしくない。今後は協力的な宇宙人やロボっても出てくるのではないだろうか。




