第53話:ゲームで学ぶアメリカ文化
「ねえ、テストどうだった?」
トレ部の朝練中、日々木さんが話しかけてきた。僕はあまり彼女と勉強の話をしたことがない。授業を見ている限りでは、先生に指されたときはいつも的確に答えているし、特に英語の発音がとてもきれいだと思う。初めて中古屋で会ったとき、『|Final Fantasy』をなめらかに発音していたのを思い出す。
「結構できたよ。総合で12位だった」
「え、ほんとに?! 私も12位!」
ということは、総得点が同じだったということになる。もしもテスト順位が廊下に貼り出されていたとしたら、二人の名前が並ぶことに……。もっとも、同点の誰かが間に挟まるかも知れないが。
「英語は100点だったよ」
「すごいなあ、僕はリスニングをいくつか間違えちゃって」
「小学生の頃に英会話教室に通ってたんだよね。前に話した友達と一緒に」
そこから、彼女との思い出を話してくれた。古いファミコンソフトは日本語フォントが入っていないので英語のみの場合も多く、そのようなソフトでも問題なく遊べるくらいには英語ができるようになったという。ゲーム画面の文字を書き取って、読み方を教えてもらったりもしたらしい。
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「お、MOTHERか。借りてきたって言ってたな」
「うん、知ってる?」
夜、久しぶりに父と「部屋飲み」だ。もちろん僕はお酒は飲まないけれど。
「父さんは2しかやったことないな。続編……ともちょっと違うみたいだけど。でも、主人公と、属性攻撃が得意な女の子と、機械が得意な男の子の組み合わせは同じだな」
「機械、ねえ……」
今のところ機械系っぽいアイテムといえば、マジカントで拾った「闇のライト」しかない。動物系の敵にはよく効いて、命中率低下でほぼ空振りしか出せなくなるようだが、ソラの素早さが低すぎるせいであまり活用できていない。
フミの属性攻撃にしても、今の段階では威力が低すぎる上に、やはり素早さが低すぎるのが致命的だ。タケルの攻撃で弱った敵のとどめを刺すくらいにしか使えない。そんな半端なことのためにPPを使うくらいならば、回復用に温存しておいたほうがマシだと思った。
というわけで、ソラとフミはその特技を活かす機会もなく、通常攻撃としてひたすらブーメランを投げまくってもらっている。ショックガンやフライパンといった専用武器も売っているのだが、現時点ではブーメランのほうが圧倒的に強い。
それどころか、1000ドルの「いいバット」よりも1100ドルのブーメランのほうが強いことに驚いた。専用武器は値段の割に強いというのが『FF1』だと鉄則だったのだが、このゲームでは値段だけで強さが比較できるようだ。というわけで、3人そろってブーメランを投げまくることになった。
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「そういえば、武器だけじゃなくて防具もみんな同じなのか」
「うん。今のところ防具屋自体もここにしかないし」
何度かマジカントと往復しながら装備を整えていると、父がつぶやく。
防具といえば、普通は服や帽子といったものを連想するが、本作ではアクセサリー類に限られているようである。また現実世界では売っていないのも特徴的で、本作における「防具」とは、何らかの魔法的な力による保護を意味しているのかも知れない。
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ダンカン工場を目指す。入口に番犬がいたが、どうやら自称番犬の野良犬らしい。弱すぎ。工場の中はロボット系の敵が多く、ボマーの爆弾攻撃で全員が50以上のダメージを受けて焦る。
「さすがに、これは耐性防具が必要じゃないか?」
「うーん、しずくのペンダントってのがそれかなぁ」
ここはもう少しお金を貯めたほうがいいのだろうか。とりあえずPPが切れるまで探索してから、パンくずで町に引き返す。
「パンくず、なかなか面白い仕組みだな」
「これ、2にはなかったの?」
「確か無かったと思う」
アイテムの「パン」を「食べる」ではなく「使う」ことで「パンくず」に変化する。そしてその「パンくず」を使うことで、最初に「パン」を使った場所に戻ることができる。イメージとしては「パンくずの跡をたどって戻る」だと思うのだが、なぜか敵の存在は無視されて安全に戻ることができる。
マジカントへのワープ時には行き先がリセットされるようだが、同じ世界であれば建物の中でも有効なのが頼もしい。ともかくアイテムを売ったりしてお金を用意し、3人にしずくのペンダントを買い揃えたら再挑戦。
ボマーは出現率も低い上に不発も多く、思っていたより脅威ではなさそうだ。タケルが攻撃、フミがサイマグネットでPP吸収、ソラがとどめ(戦闘後はフミのライフアップでHP回復)という王道の連携パターンを思いついたら、だいぶ安定してきた。素早さの関係でちょうどこの順番で行動できるのが便利だ。
奥にあるミサイルを調べたらいきなり発射。町に戻ってみると岩が壊れていた。これで先に進めるかと思いきや、橋が壊れていて結局進めない。しかし電車が通るようになったので、南東方面へのアクセスは改善された。とりあえずレインディアへ移動してセーブ。ひとまず今日はこのあたりで終わりにしよう。
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「それにしても、なんでどこの駅も町外れにあるんだろうな」
父がつぶやく。
「確かに。絶対不便だよねこれ。敵も出てくるし」
これはゲームを難しくするための調整なのか、それともリアルなアメリカの地方都市を再現したものなのか、僕にはわからない。




