第49話:旅立ちは美しい音色と共に
「ゼルダ当たった!」
ソウタからのLINEに気づいたのは翌朝だった。昨夜は夢見心地のまま寝てしまったようだ。もしかすると、あのときの鐘の音はこれだったのかも知れない。
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「おはようございます!」
今度は、ソウタ本人の声が玄関から聞こえてきた。出迎えに行くと、すでに法被姿になっていた。今年は先輩に誘われて、神輿を担ぐという話を聞いている。
「お、タケル元気か? 昨日は既読も付かなかったからな。せっかくティアキン当たったのに」
ティアキンこと『ティアーズ・オブ・キングダム』とは、ちょうど一昨日の金曜日に発売されたばかりの『ゼルダの伝説』シリーズの最新作である。ゲームソフトの中でも、特に目玉賞品だったに違いない。
「すごいな、本当に最新作が当たるもんなんだなぁ。おじさんの頃なんて時代遅れの中古ソフトがせいぜいだったぞ。たぶん中古屋で100円で投げ売られてるようなやつだったな」
父が感心する。クジ引きとかギャンブルとかガチャの類が大嫌いな性格なのだが、子供の頃にさんざん嫌な目にあったのかも知れない。
「それにしても立派ねぇ。うちのタケルもお神輿担いでみればよかったのに」
「こればっかりは向き不向きもありますからね。それに、タケル君もタケル君で大人になってますよ」
昨夜の神社には、ソウタやハルキ、ソラ達も来ていたはずだが会わなかった。きっと、ハルキあたりが気を回してくれていたのだろう。ソウタは僕に向かってにやりと笑顔を作るので、僕も笑顔で返した。
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今日はハルキとソラと一緒に、縁日を巡ったりソウタを応援したりする予定だが、午後までは暇がある。昨日貸してもらった『MOTHER』をプレイすることした。
電源を入れる。1989年発売のゲームのようで、今までプレイした中では一番新しい。透明感のある音楽がきれいだ。セーブデータは3つあり、一番上の「ケン」の他は空白だったので、2番目を使わせてもらうことにする。
最初にキャラ名の登録。主人公だけでなく他のメンバーも決めるようだ。主人公は「タケル」として、2人目の女の子は少し恥ずかしかったが他に浮かばなかったので「フミ」にした。メガネを掛けた3人目の少年は「ソラ」だ。
4人目のいかつい体格の、絵に描いたようなヤンキー風の男の名前に少し迷う。ソウタかハルキにしようと思ったがイメージが違いすぎる。少し考えた末、英語の外国人教師の「ボブ」の名前を借りることにした。アメリカが舞台らしいので、一人くらいはそれっぽい名前がいてもいいだろう。
最後に、好きな献立を聞かれたのは予想外だった。6文字まで入るようなので「チキンサンド」でいいか。1900年代初頭の怪事件がプロローグとして語られ、電気スタンドが襲いかかってくるところから始まる。よくわからないが、とりあえず殴るしかできないようなので適当に戦う。
妹の部屋では人形が襲ってくる。倒した後にチェックしてみると「音を覚えた」と出て、ステータス画面のメロディのところに音符マークがついた。FF1におけるクリスタルのような扱いだろうか。妹からは話しかけるたびにジュースがもらえたので、とりあえず持ち物をいっぱいにする。
PSI(超能力?)としてテレパシーが使えるが、試しに家族に向かって使っても何も起こらない。特殊なイベント用だろうか。
地下室でボロのバットを見つけたので装備。『桃太郎伝説』同様、装備品はまずアイテムとして入手してから、使用することで装備欄に移動する方式だ。アイテムにも「使う/食べる」の区別があり、ここも『桃伝』とよく似ている。セーブは電話機、お金は敵を倒しても直接手に入るわけではなく振り込み式。現代を舞台にいろいろ考えられてるなぁ。まだ携帯電話や電子マネーは無い時代だったっけ?
外に出る。フィールドと町の区別がないようだ。穏やかな音楽の中でいきなり敵が出てきて驚く。なぜ「おじさん」が襲ってくるのかわからなかったが、話を聞いてみる限り、何者かに操られて暴れていたのを攻撃して正気にするという設定のようだ。
道中ではカラス(なぜかタバコをくわえている)がやたらと強く、たくさん持っていたジュースを全て使い切ってしまった。防具を買おうと思ったが、デパートを見ても武器と回復アイテムしか売っていない模様。公衆電話はお金がかかるのが無駄にリアルだ。
隣の家のおばさんが話していた、南の墓場に迷い込んだ「ピッピ」とは飼い猫かなにかと思ったら、子供の名前である模様。いろいろ聞き込んでいたら「ゾンビもどき」なる不謹慎な若者(?)が圧倒的に強く、初の全滅を食らう。預けてあるお金は減らないので、強気で稼ぐことができそうだ。
デパートでもらったカナリアのひなを動物園に返す必要もありそうだし、墓場に向かう前にあちこちを探索してみることにする。地図を見る限りでもマップはかなり広いようで、遊びがいのあるゲームの予感がする。




