第47話:愛の支えと勇気の証の物語
閻魔大王との戦いは単純な物量勝負だった。鹿角で攻撃、万金丹で回復。MPが尽きたら打ち出の小槌、HPも減っていれば恒河沙の玉。ただひたすら、これの繰り返しである。
敵も恒河沙の玉で回復するが、2個目の打ち出の小槌を使い切ったあたりで勝利した。先ほどの黄泉の塔を抜けるほうが遥かに辛かったので、あまり感慨はない。ともあれ、僕の桃太郎は36段の13歳にして目的を達成した。
そもそも閻魔大王って人間の敵だったか? と思ったのだが、桃太郎の愛と勇気で改心して地獄の裁判官(僕が知ってる閻魔さまだ!)になった、という筋書きだった。本物の花咲かじいさんや金太郎、浦島太郎も無事。最後はかぐや姫に月に招かれ、月の水晶をもらって、スタッフ紹介の後に元の村に戻って、めでたしめでたし。
ファミコンのRPGをクリアしたのはこれで3作目。DQ1はもちろん、FF1と比べても手の込んだエンディング。ちょっと説教臭い感じはするが、「人は小さな力を束ねることができる。愛とはその支え、勇気とはその証」あたりは、記憶に残りそうなフレーズだった。
愛と勇気、今の僕にはぴったりかも知れない。あと半年もしないうちに、僕も13歳になる。
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「おはよ。……早いね」
「おはよう。日々木さんこそ」
次の日、約束どおりに11時に例の古本屋で日々木さんと会った。いや、約束より15分早く着いたのに、もう彼女はいた。
「君も来てくれたのね。久しぶりかな?」
店主のおばさんに声をかけられた。先週は帰省でいなかったし、先々週は雨で行かなかったし、その前は休業していた。4週間ぶりなので、それなりに久しぶりだ。
*
「あ、MOTHERあった。2500円もするのかぁ」
「復刻配信もされていることを考えると、ちょっと高いほうかもね」
MOTHERといえば、いま日々木さんがプレイしているファミコンソフトだ。帰省先で安く買えたと日記で報告してくれた。箱・説明書なしの、いわゆる裸カセットでもこれくらいの値段がするソフトは確かに珍しい。しかも、任天堂から発売されたメジャーな部類のソフトなのに。
「……よかったら、貸してあげよっか?」
おばさんに気を使ってか、耳元で小声で話しかけてきた。彼女の息が耳にかかり、少しだけくすぐったい。
「……いいの?」
「うん。私はもうクリアしたし。タケルさんにも遊んでもらって感想を聞きたいから」
「それじゃ、代わりに桃太郎伝説を貸してあげるよ。ちょうど昨日クリアしたとこだし。興味なかったら別にいいけど……」
この店には桃太郎伝説も置いてあった。値札は500円で、ちょっと釣り合わないけれど。
「いいの? それじゃ喜んで!」
*
結局、この日は何も買わずに貸し借りの約束だけして店を後にした。おばさんに謝ったら、お祭りのためにおこづかいを取っておきなさいと言ってくれた。少し申し訳ない。
向かいの公園のベンチに腰掛ける。今日も、日々木さんはチキンサンドを持ってきてくれた。
「なんか、もらってばっかりで悪いなぁ」
「気にしないで。人に食べてもらうのって勉強にもなるから」
今日のサラダチキンには、醤油とみりんを煮詰めて作ったという照り焼き風ソースがかかっていた。
「うん、おいしい。甘くて優しい味って感じかな」
「パンにからしマヨネーズ塗ってみたんだけど、苦手じゃなかった?」
「平気だよ、納豆にもシュウマイにもカラシ使ってるし」
僕がカラシを食べるようになったのはつい最近なのだが、すっかりおいしく食べられるようになっていた。
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「それじゃ、また夕方。神社でね」
「うん、桃伝も持っていくから」
「私も、MOTHER忘れないようにするね」
それだけ約束して、それぞれの家へと自転車で帰っていった。




