第43話:天の声で振り返る今と昔日
「ドラクエほどじゃないけど、やっぱり経験値稼ぎは必要かぁ」
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僕は家に変えるとファミコンのスイッチを入れた。希望の都の北東にある雪原で、ひたすら敵を倒しまくっていた。灼熱の弓矢の効果で「びろーん」という謎の妖怪を一撃で倒せるのがおいしい。猿蟹の村の情報があったので、そろそろ猿が仲間になる頃だと思うのだが、レベルを上げないとまともに遠出できない。お金を貯めて防具を充実させながら稼いでいく。
21段になったところで、希望の都の南にある「鬼の爪あと」という複雑な地形の突破を目指す。ここでは黒河童が厄介。アイテムやお金を全て盗んでしまう。灼熱の弓矢まで盗まれて、逃げられた後に別の個体を倒しても取り戻せなかったのには驚いた(後で吉四六さんに話せば再びもらえることがわかったが)。
猿を探すために犬にこまめに命令を出していたが、あまりにもわかりやすい一本松なので使うまでもなかった。しかし、助けてやったのにきびだんごが無いと仲間になってくれないのはちょっとひどいのでは(さっき河童に盗まれたばかり)。
猿が仲間になったものの、ステータスの強化は期待したほどではなかった。やはり地道に金を溜める必要がありそうだ。猿蟹の村では人が消えているので買い物もできず、希望の都で最強装備を整えるのが当面の目標になりそうだ。そういえばスリの銀次も捕まえないとなぁ。
1万両が貯まったので、ここで天の声を聞く。装備品以外にもお金を使う機会が多そうなので、いろいろ試してみようというわけだ。まずは料亭。一番高いフグ料理を頼んだら毒死してしまった。お詫びに金色の毛皮(火鼠の皮衣?)をくれたが、能力アップに繋がるわけではない。実家の不祥事の責任をとって銀次が改心するわけでもない。これはいったん後回しにするのが良さそうだ。
リセットして、今度は寿司とうな重を食べてみる。最強の武器らしき勇気の剣の情報。それ以外の実利はなさそうだ。リセット。今度は微笑みの村の仙人。修行に1万両が必要というのは何かの《《とんち》》かとも思ったが、どうやら文字通りのようだ。放屁の術という、これまたふざけた術を覚えたが、今の段階では使いどころがわからない。
このあたりで夕食の時間になったので、電源を切っておしまい。再開したら武器を買いに行こう。
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「父さん、桃伝ってクリアしたことある?」
「あれは確か中古で買って……いや、友達から何かと交換でもらったんだっけかな」
箱なしのカセットのみであり、父のコレクションの中では状態が悪い方だった。
「確か最強パスワードの裏技があったんだ。一文字だけ入れてスタートボタン。それで……結局クリアはしたっけか。どちらにしても、まともにプレイはしてなかった気がする」
「ふぅん」
「確か、女湯が見られる裏技も無かった?」
「あったなぁ。それも例の最強パスワードでいけたと思う」
母の問いに父が答える。希望の都の女湯、試しに入ろうとしたら年齢を理由に弾かれたのを思い出す。逆に言えば、年齢次第では入れるということになる。
「男湯があったのは桃太郎電鉄のほうだったかしら。あれ見て友達と大笑いしたっけ」
「確か3つくらい隠し温泉があって、友達と探しまくってたりしたぞ」
「クイズみたいなのがあったりしてね」
父と母がどのシリーズの話をしているのか、よくわからない。そもそも本人たちも混同しているのかも知れない。とりあえずわかったのは、この桃太郎シリーズというのは妙なところに力を入れるゲームであるらしいということだ。
それにしても、ゲームの話をするときの両親はいい顔をしている。懐かしい友達の顔でも思い出しているのだろうか。僕は麩の酢の物を口に運びながら、子供の頃に戻ったような両親を見ていた。




