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令和の中学生がファミコンやってみた  作者: 矢木羽研


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第42話:五つの秘宝が東と西を結ぶ

仏の御石(みいし)の鉢。

蓬莱(ほうらい)の玉の枝。

火鼠(ひねずみ)の皮衣。

龍の首の玉。

燕の子安貝(こやすがい)


 国語の授業中に少し退屈だったので、僕は教科書をめくって授業とは関係のないページを開き、目についた用語をノートに書き留める。『竹取物語』において、かぐや姫が求婚者に要求する幻の宝物。これらを求めた男たちが破滅していくというのが前半の山場となっている。


 『桃太郎伝説』においても、これらの宝物が登場する。それも偽物ではなく本物として。文字数の都合か「仏のお鉢」などと名前は簡略化されており、金太郎や浦島太郎などの無関係な昔話に結び付けられているが、和風な世界で集めるアイテムとして雰囲気はぴったりだ。


 その一方で、世界観を無視したギャグも満載。特に「微笑みの大地」では、攻撃をバットで打ち返す「赤鬼ホーマー」やら、ギターを持ったアオダイショウの「若大将」(そういう映画があったらしい)やら、なぜかシャンプーしてるか聞いてくる女の子の顔をした「ユキだるま」(当時のシャンプーの宣伝に出ていたアイドル?)やら。「金銀パールプレゼントの鬼」に至っては、名前が長すぎて途中で改行が入っているほどだ(元は、洗剤のプレゼントキャンペーンらしい)。


 チェーンを持った邪鬼の「ジャキ チェーン」は、僕にも元ネタがわかってうれしかった。ちょうど連休中に、いとこ達と祖父コレクションの香港映画を観ていたところだ。アタタタタと叫ぶのは、どちらかといえばブルース・リーのほうだと思うのだが。


 希望の都でもらった紹介状で微笑みの村に入ると中はさらにジョークの嵐。作者同士が仲がいいとは聞いていたが、ここまで直球のドラクエネタがあるとは思わなかった。


 *


「かぐや姫の宝物か。あれ、調べてみると面白いんだぜ」


 休み時間、ハルキに話題を降ったら食いついてくれた。


「燕の子安貝の伝説はそのままヨーロッパにもある。火鼠の皮というのは燃えない石綿(いしわた)のことで、西洋ではサラマンダーの皮だと言われていたんだ。金の枝はドルイドの伝説にもあるし、仏の鉢っていうのは聖杯と関係あるかもな」


「く、詳しい……。さすがファンタジー作家志望」

「これくらいは基礎教養だ」


 当然の知識だとばかりに言ってのけたが、僕にはサラマンダーもドルイドも聖杯もよくわからない。聞いたことくらいはあるのだが。


 *


「さっき言ってた石綿って、これのことだよ」


 移動教室の理科室で、ガスバーナー台の上にある、金網の白い部分を指してソラが言う。ピーカーやフラスコを乗せる部分だ。


「へえ、これが"火鼠の皮"ってわけか……」

「正確にはセラミックみたいだけど。本物の石綿、つまりアスベストは健康被害があるから使うのをやめたんだって」


「そういえば、子安貝ってこれのことだろ?」


 ハルキが、理科室の壁にかかった貝の標本を指差す。ラベルには採取した海岸の名前とともに「タカラガイ」とある。


「あ、そうだったのか!」


 ソラも、タカラガイの別名が子安貝であるとは知らなかったようだ。言われてみれば、安産祈願に使われるのがわかる形状だ。僕はDQ1の「太陽の石」は女性を象徴した形だと思っているのだが、子安貝こそがそれにふさわしい姿かも知れない。


「俺、知ってるぞ! 昔はお金として使われてたんだよな」


 今度はソウタだ。


「お金?」

「ああ。今でもお金に関係した漢字には"貝"が付いてるのが多いだろ?」

 買、貸、質、財、貯……。言われてみればその通りだ。


「なあソラ、ヤドリギの標本とかはないかな?」

「無いね。フィールドワークで探してみようって話は出てるんだけど、木に登って採集するのは危険だから」


「ヤドリギ?」

 僕はハルキに尋ねた。


「ああ、ドルイドの伝説の金の枝だな。ヨーロッパ、それも北欧のほうでは特に重要なんだ。玉みたいな実を付けるから、蓬莱の玉の枝の伝説とも関係があると思うんだよな」


 当然のように答えているが、僕はヤドリギが日本にあるということさえ知らなかった。なんとなく、ジャングルの奥地のようなところに生えているというイメージだったのだ。まして、そのような神秘的な伝説があるとは想像もしなかった。


 幻の宝物というのは、意外と身近なところにある。そして神話や伝説というのは、遠く離れた地域でも共通点が多い。それにしてもみんな詳しい。一つの知識からの連想が次々に繋がっていくのは、横で聞いているだけでもとても楽しかった。

注:


『金銀パールプレゼント』


 キャンペーンが行われていたのは2008年までなので、2010年度生まれであるタケルは(少なくともテレビCMとしては)見ていない。

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