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令和の中学生がファミコンやってみた  作者: 矢木羽研


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第30話:文化住宅で遊ぶファミコン

 炎の剣を振るって経験値を稼ぐ。場所はドムドラ周辺が良いようだ。少し西の方に行くと死霊の騎士などの強い敵が出てくるが、最短距離で岩山を回れば問題ないことがわかった。


 敵を倒すのは目に見えて楽になっている。1時間ほどでレベル15になり、所持金も14800ゴールドに届いた。さっそく、復活の呪文を記録する。


 えびそびぬ げじはぎぜめふ

 のごのへけ むじこ


 試しにメルキドを目指してみたが、スターキメラにやられてしまったので今日はおしまい。パスワードをハルキに送って、今日の進行を日記にまとめる。


 ---


 レベル12でガライの墓クリア。銀の竪琴を雨雲の杖に交換。太陽の石も見つける。


 僕が見つけられなかった太陽の石を、ハルキはあっさり見つけた。逆に、僕が簡単に見つけられたガライの墓の入口をハルキは見つけられなかった。LINEでパスワードや画面写真を交換しながら遊んだけど、一人じゃ厳しかったと思う。それに経験値稼ぎも自力だと絶対飽きると思う。


 経験値とゴールドを稼いで、レベル14で炎の剣を買う。パスワードを記録しておいて、メルキドに行くまでに全滅したらやり直し。一人だと辛いけど、ハルキと同時にプレイ(同じ復活の呪文で同時にスタート)したから、失敗前提でも楽しかった。


 レベル15になり、みかがみの盾を買うお金も溜まった。続きはまた明日。


 ---


 ここまで書いて思った。日々木さんともこんな感じで遊べたら楽しいだろうな、と。彼女がスマホを持っていないのが残念だ。


 **


「おはよう! ハルキ、ドラクエやった?」

「まだ! ちょっとやることあるから午後から!」


 少し遅く起きた日曜日、友達グループにメッセージを送る。僕のほうも宿題やらを片付けようと思っていたところなのでちょうどいい。


「ドラクエ1、うちにもあったぞ。親父が前に買ったやつ」


 ソウタが写真を送ってくる。Wiiソフトのようだ。


「それ、10年くらい前に出た移植版かな。ファミコンとスーファミのが入ってるっていう」


 ソラが解説する。いつの間にかファミコンに詳しくなっているようだ。


「そうそう、なんかパスワード送ってくれよ、使えるか試すから」

「了解」


 *


「できた! 俺もやってみようかな」


 昨夜の画面写真を送って、しばらくすると返事が来た。WiiUのゲームパッドに勇者はるまきの姿が映し出されている。ファミコン版も、Wii版も、少年ジャンプの復刻版も、パスワードには完全に互換性があるようだ。そもそもソフト自体は同じだから当然かもしれないが。


「今からメルキドに盾を買いに行くところだからな。あと俺ルールで攻略サイトとかのネタバレは厳禁だから!」


 ハルキが釘を刺す。


「マジかよ、そもそもメルキドって何だよ」

「説明書に地図ないの?」

「……ないっぽいな」


 僕は説明書の地図を撮影し、さらにざっくりとしたルートを線で書き込む。


「このメルキドまで死なずに行くのが目的だからな。死んだらゴールドが半分になるから、パスワード入力からやり直し」


 ハルキが補足する。なお復刻版にはどこでもセーブ&ロード機能があるようだが、それも封印している。


 **


「着いた!」


 午後、画面写真が送られてきた。3人体制で回していたのだが、最初に到着したのはハルキである。


「今日、ヒマならうち来ない?」

「行く!」


 僕はハルキの誘いに即答した。


「行くけど、早めに帰るかも」

「俺は逆、行けるけどちょっと遅くなる」


 ソラとソウタも応える。


「じゃ、待ってるからな」


 ハルキは自宅周辺の地図を貼り付けた。


 **


「お邪魔しまーす!」

「おう、開いてるから上がっていいぞ」


 初めて来たハルキの家は割と古い作りで、父の実家を思い出す。声の主は玄関を上がって右の部屋にいて、ソファーに座ってゲームをしていた。家族は不在のようだ。


「ま、適当に座ってくれよ」


 僕は年季の入ったソファーに腰を下ろし、部屋を見渡す。じゅうたんを敷いた部屋はレトロな内装で、木目調のエアコンがいい味を出している。備え付けられた大きな本棚にはこれまた年代物の本がびっしりで、上段には土産(みやげ)物が飾られている。これは昭和の住宅には欠かせなかった応接間というやつだな。


「今からロトの鎧を取りに行こうと思ってるんだけど」

「ドムドラの木を探すんだっけ」


 *


「よう」


 しばらくすると、ソラが入ってきた。すっかり慣れているようで、本棚から黄ばんだ文庫本を抜き取ると、我が家のようにソファーに体を投げ出す。ゲーム画面はちらちら見ているが、本のほうに集中しているようだ。


「とりあえず建物に隣接してる木を片っ端から調べてみるか」

「店の裏とか言ってたし、たぶん奥の方だな」


 敵の種類はメルキド周辺と変わらないようだ。みかがみの盾は守備力10しか変わらないので、相変わらず勝ち目は薄い。ひたすら逃げながら進む。


「あれ、一歩前に戻された?」

「ってことは、今のがボスってことか」


 ただのザコ敵かと思った悪魔の騎士から逃げたら戻されてしまった。つまり、こいつを倒さないとロトの鎧は手に入らないということか。


「どうする?」

「うーん、とりあえず殴るしかないんじゃない?」

「まあいいか、どうせ失うものもないからな」


 もうゴールドは使い切っているので死んでも痛くない。駄目ならまた来ればいいだけの話だ。交互に直接攻撃をして、最後まで生き残ったのはこちらだった。


「そういや、ボスでも音楽は変わらないのか」


 ソラがそっとツッコミを入れる。


「ファミコンだと割とそんなもんかも。FF1なんてラスボスも同じ曲だったし」

「そうなのか? ってことはドラクエも同じかな。こっちのほうが古いんだよな確か」


 足元を調べると、期待どおりにロトの鎧が手に入った。こちらも演出などは特になく、実にそっけない。


「装備は自動的に変更されるのか。守備力は4しか増えてないけど」

「あ、でも毒沼のダメージ受けてない!」

「しかもHP、歩くたびに回復してない?」


 見た目は地味だけどきっちり仕事をする、昭和男のようないぶし銀な鎧だと、僕は勝手に思うのであった。

注:


文化住宅


 ここでは、昭和期に建てられたような和洋折衷の住宅のことである。玄関入ってすぐ横に洋間(応接間)があるという間取りが典型的。なお関西方面ではアパートのような集合住宅の意味で用いられるようだが、ここでは個人宅であるということを念のために補足する。


 *


『ドムドラ』


 ファミコン版の説明書では「ドムドーラ」ではなく「ドムドラ砂漠」となっている。ゲーム内では「ドムドーラ」と呼ばれているのだが、タケルには説明書の表記のほうが馴染みがあるという描写である。

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