第25話:幻想終焉とそれぞれの解釈
穏やかな音楽と共に流れるエンディングメッセージを、二人でただ眺めていた。想像していたようなスタッフロールは無いようだ。やがて、ウィンドウの中に白い線が輪郭を形作り、ゆっくり時間をかけて「THE END」の文字を刻んでいく。それが書き上がったところで、ちょうどエンディングのBGMも鳴り止んだ。
音楽が止まった後も、僕はしばらく無言で止まった画面を見つめていた。当初はクリアできるかどうかも自信がなかったのに、最後までやり遂げた達成感。そしてそれを、隣りにいる日々木さんと共有できたこと。この瞬間は一生忘れられない出来事になるような気がする。
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「……ねえ、エルフやドワーフが架空の物語になったってどういうことかな」
しばらくすると、横にいる日々木さんが口を開いた。
「ん、どういうこと?」
「だって、ガーランドやセーラは元に戻ったのに、どうしてエルフたちは消えちゃうの?」
これはたしかにその通りだ。クリスタルの力を奪ったカオス達はまだしも、エルフやドワーフ、ドラゴンたち、「宇宙にまで手を伸ばした」ルフェイン人は、もともとこの世界の住人ではなかったのだろうか。
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「……ファンタジーが終わって、現実の世界に戻ったってことじゃない?」
少し考えて、僕は思いつきを口にした。
「どういうこと?」
「ほら、2000年の時を超えて戦っていたのは君だ、って。あれは文字通りの意味なんだよ。ガーランドやセーラってのは、プレイヤーにとって身近な誰かということなじゃないかな」
カオスによって歪められた世界。それを正すための戦いを終えると、歪みから生まれた存在は、エルフやドワーフといった善も、カオス達といった悪も、全てファンタジーの彼方に消えて、現実の世界では架空の物語だけの存在になる。それこそが最後のファンタジーなのだ、と。
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「うーん、私は違うと思う。FF1の世界の中にもファンタジーと現実があって、ゲームを終えたら『FFの中の現実世界』に戻ってくるんじゃないかな」
「でも、それなら後日談とかあってもいいんじゃないかな」
僕たちは議論を続ける。
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「そうだ、漫画版あったよね?」
「うん、まだ途中までしか読んでない。読んでみようか」
先々週の土曜日、例の古本屋で見つけて買ってきた、海明寺裕による漫画版。二人で読んだけれど、ネタバレが怖くてお預けしていたものだ。
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僕たちはページをめくる。主人公のパフィは「別の世界から来たエルフ」らしい。これは難解である。二人のどちらの解釈にも矛盾する。
「へえ、マトーヤだけじゃなくてビッケやセーラも仲間についてくるんだ」
「飛空船で空中戦、ゲームでも出来たら面白そう」
「ランチャーで戦うバハムートもかっこいいな」
一方、ストーリーの解釈はさておき、漫画としてもしっかり楽しんでいる。
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「うーん、この漫画は日々木さんの解釈に近いかな」
全てが終わった後、彼らは元の世界に戻る。しかしそれは僕たちのいる「現実の世界」ではなく、あくまでもFF1の中の本来の世界という意味だ。
「でも、エルフやドワーフ、ドラゴンにロボットもいるよ」
そう、そもそも主人公である女戦士パフィはエルフなのだ。それは元の世界に戻っても同じ(尖った耳がエルフの印であることくらいは僕でもわかる)。そして、ドワーフ達もルフェイン人のロボットも、平和になった元の世界で暮らしているのだ。
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「結局、プレイした人それぞれの中でFF1の物語がある、ってことでいいんじゃない?」
日々木さんが上手にまとめる。あれから、スマホを使ってエンディングメッセージを改めて確認してみた。「架空の物語」としてエルフやドワーフが語られるが、エルフやドワーフそのものが架空の存在であるとは明言されていない。
つまり、光の戦士たちが戦いを終えて戻ってきた世界にも、エルフやドワーフがいてもいいのだ。漫画のラストシーンでは、様々な種族が分け隔てなくガーランドのヤケ酒に付き合っている。この世界の人間たちにとって、エルフやドワーフは人里離れたところで暮らす未知の種族では無くなった。そう解釈してもいいのかも知れない。
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「それじゃ、またね」
「うん、バイバイ」
一通りの感想戦を終えて、僕は日々木さんを見送った。明日は雨が降りそうなので、古本屋に行くのはやめにしようということになった。次に会えるのは月曜日になるだろうか。
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4月28日(金)
レベル26で再び過去の世界に入る。レベル27で最後の戦い。バマジクで地震を防ぎ、いつものようにヘイスト攻撃。3ターン目に撃破! 《《僕たち》》は、光の戦士になった。




