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2章

もちろん、ゲームで自分の容姿を確認したら、次にやることはひとつしかない。アビリティの確認だ。

 アビリティ欄は三つ。そしてボーナスとして「身体強化」が自動的に付与されている。

 私の場合、

 - アビリティ1:クモの糸

 - アビリティ2:大あご

 - アビリティ3:ジャンピングスパイダー

 この三つが設定されていた。身体強化としては「視野角の拡張」「静音移動」などがある。

――試してみるしかない。ゲーマーのサガってやつだ。


アビリティ1:クモの糸

 手から出るタイプではなく、腰のあたりの一部から糸が伸びるようだ。まるで高所作業時の命綱。敵を捕獲するような使い方は難しそうだが、落下防止や素早い移動に役立つだろう。

アビリティ2:大あご

 背中に刺さった双剣型の武器。持ち手の根元には毛が生え、刃は黒光りしている。奇妙な形だが、どうやらクモのあごを模しているらしい。扱いは難しそうだが、威力はありそうだ。

アビリティ3:ジャンピングスパイダー

 発動と同時に、視界が一瞬で上空へ――いや、空が迫ってくる。落下の恐怖を感じながら、着地のイメージを強く思い描くと、ふわりと地面に降り立った。

 メニューを開いて確認すると、説明文が出る。

「ジャンピングスパイダー:自分の身長の約5倍の高さまで跳躍できます。ただし、着地のイメージが不十分な場合は失敗します。」

 その後、数時間かけてジャンプの練習を繰り返した。

 五回目の跳躍で筋肉が限界を迎えること、クールタイムは約20秒――つまり連続使用は五回まで。さらに角度を調整すれば、前方へ大きく移動できることも分かった。


「じゃあ、もう一度だ」

 足に力を込め、ジャンプスパイダー起動。

 視界が一瞬で流れ、空が迫り――そして落下。

 地面の開けた場所を狙って着地をイメージする。

 ――ズコッ。


次の瞬間、四方を土壁に囲まれた暗闇。

 落とし穴だ。理解するのに時間はかからなかった。

 脱出を試みるが、円形の壁では踏ん張りが利かない。アビリティが発動しない。

 上から足音が近づく。穴の主が来た。

 迎え撃つしかない。背中の双剣に手を添えた瞬間――

 上から、二振りの薙刀がゆっくりと降りてきた。

 「おー、珍しいのが引っかかったな。」

 「こりゃ食ってもマズそうだな。つかまって上がってこい。」

 助かった……らしい。

 差し出された薙刀の柄を掴み、引き上げてもらう。

 「助かりました、ありがとうございます。」

 「その毛並み、同族か? にしては見ねえ顔だな。」

 声の主は180センチを超える大男。横幅もある。背中には、私の武器と似たふさふさ付きの薙刀が二本。

 彼の名はジグ。

NPCか? それともプレイヤーか?

 尋ねると、彼は笑いながら言った。

 「俺も初期プレイヤーだ。道理で見ねえ顔だな。初期位置がランダムらしい。」

 そして彼は言った。

 「ここで立ち話もなんだ。村まで来い。プレイヤーに会うのは初めてだ。」

道すがら、ジグは自分のストーリーを話してくれた。

 彼は“村長の孫”として生まれたキャラクターで、強い村長に憧れ戦いを学んだが、うまくいかず。

 娯楽に逃げ、今は門番として外敵(芋虫)を退治しながら食料調達をしているという。

 「今日はそのついでに外に出てたんだ。まさかプレイヤーが落ちてくるとはな。」

 そう言ってジグは笑い、村へと案内してくれた。

 こうして俺は、ゲーム世界で最初の“仲間”と出会ったのだった。




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