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1章

目を開けると、そこは草原だった、

まばゆい光が差し込み、太陽の光が地平線を照らしている

少し高い場所にいるようで、見渡すと草原が円形に広がっていた。


右側は背の方戦で覆われ、風に揺れてざわざわと音を立てている。

左側には柵があり、門の前には門番らしき人影。

その奥には草を束ねて作られた家が八軒ほど並んでいた。

さらに奥には断崖が迫り、その壁面には白い糸で固定された建物――まるでマンションのような構造物がある。

そして崖の頂上には、少し大きめの家が見えた。

……なんだ、この世界は。


そこでふと、思い出した。

そうだ。このゲームは「自分が昆虫の一種になって冒険する」ってやつだ。

蝶になって空を舞うもよし。

バッタになって草を食いまくるもよし。

トンボになって最速の空を駆けるもよし。

アリになって群れと生きるもよし――そんな自由な世界。


本来なら、ゲーム開始時に自分の身長や体重を入力して、種族を選択できるはずだ。

でも今回は、いきなりこの世界に放り込まれた。

バグか? いや、イベント演出の可能性もある。

とにかく、自分が何になったのか確かめたい。


こんなゲームを買うくらいなので、自分は昆虫が好きではある

がしかし・・・……まさか、ゴキブリとかじゃないよな?


そう思いながら、音声認識で呼びかけた。

「メニュー、起動」


ピッという電子音とともに、ホログラム画面が浮かぶ。

――その前に、自分の手が目に入った。


黒地に白いストライプの模様。

……服じゃない。皮膚だ。


よかった、少なくともゴキブリじゃない。

けど、黒い体色って地味な昆虫が多いんだよな。

嫌な予感を胸に、メニュー画面の文字を確認する。


【ステータス】

種族:アダンソンハエトリグモ

特技:ジャンプ


……クモ、か。

この名前、聞いたことがある。

部屋の壁をちょこちょこ動き回ってる、あの小さなクモ。

人間に害はなくて、むしろゴキブリを狩る“益虫”として知られている。


足を見ると、細いのに筋肉のような張りがあって、

膝のあたりにはバネのような構造が感じられる。

立ち上がると視界が妙に広い。八方向くらい同時に見えている気がする。

――すげぇ、これがクモの身体か。

筋肉の使い方が直感でわかるような感覚がある。

まるで身体の設計図が、脳に直接書き込まれたみたいだ。


「よし、まずはあの村に行ってみよう。」

そう呟いて、一歩を踏み出す。

足に力を入れると、地面を蹴る感触が軽い。

まるでバネ仕掛けみたいに、体がふわりと浮いた。

――おお、これが“ジャンプ”か。

小高い丘を下りながら、改めて実感した。

この機構、俺の体によく馴染んでいる。

蝶やトンボみたいに羽ばたく必要もないし、

筋肉を酷使して熱がこもることもない。

クモの体は、案外理にかなっているのかもしれない――。




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