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第5話:王都の闇と真実の処方

夜明け前の王都は、深い霧に包まれていた。宮野華は薬局で最後の分析を行っていた。これまで集めた偽薬のサンプル、組成データ、摂取経路──すべてを照合すると、ある一つの家系と、一人の王宮医務官の影が浮かび上がる。


「……やはり、この二つの影が中心だわ」


クロードが肩を叩く。

「決戦か……俺たち、王宮に行く覚悟はあるか?」


華は微笑み、薬瓶をそっと握る。

「覚悟はできてる。薬で真実を暴く――それが私の仕事」


その日、ルクレールが薬局に現れる。

「宮野華、準備はできているか? 王宮の中心に踏み込む必要がある」


華は頷き、仲間たちと共に王宮へ向かう。廊下を進むたび、冷たい視線と重い扉が彼女たちを迎えた。


倉庫の奥、影の医務官が待ち構える。

「やはり来たか……宮野華。君の推理力は認める。しかし、王宮の秩序を乱すつもりか?」


華は静かに薬瓶を並べ、組成と摂取経路を示した。

「これは単なる秩序の乱れではありません。微量の神経毒が長期的に王族や側近に影響を与え、誰かが権力を掌握しようとしている証拠です」


医務官は一瞬たじろぐ。だがすぐに冷笑する。

「ならば証拠を示してみよ」


華は薬瓶を慎重に混ぜ、組み合わせた処方を作る。その場で化学的に証明可能な方法で、微量毒がどのように影響するかを再現する。薬の変化、色、匂い、反応──すべて現代化学の論理に基づく証明だ。


ルクレールとクロード、リリスもサポートし、倉庫の薬を整理しつつ、証拠を王宮の執政官に提示する。


「これで、偽薬事件の全貌が明らかになります」華の声は静かだが、揺るぎない力を帯びていた。


医務官は追い詰められ、ついに告白する。

「……計画は完璧だと思っていたのに。宮野華、お前には敵わなかった」


王都の夜が明け、窓の外には朝陽が差し込む。偽薬の流通は止められ、宮廷に潜む陰謀も表に出た。


ルクレールは華に微笑む。

「君の力で、王都は救われた。だが、この国の闇はまだ深い」


華は薬瓶を揺らしながら答える。

「それでも、薬で真実を暴く限り、光は見えるわ」


クロードとリリスも笑みを浮かべ、薬局に戻る。薬草畑では、新たな薬の研究が待っていた。


華は小さく呟く。

「この国で、私にできることはまだまだある……。そして、真実の処方は、これからも続く」


微かに青く揺れる薬瓶の光が、王都の未来を照らすように輝いた。

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