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第4話:王宮の倉庫と見えざる手

王都の夜は静まり返り、街灯のオレンジ色の光が石畳に影を落としていた。宮野華は薬局の小窓から外を見つめ、昨夜の分析結果を思い返していた。偽薬の複数ルート、組成の変化……背後に組織的な存在があるのは間違いない。


「……次は直接、王宮の倉庫を確認するしかない」


その言葉通り、華はルクレールと共に王宮へ向かった。宰相直属の護衛が門を開け、二人は厳重な警備の中を進む。倉庫の扉を開けると、棚に整然と積まれた薬袋が並んでいた。表向きは、宮廷用の通常の薬だが……華の目は一瞬で異常を捉えた。


「この並べ方……意図的に混乱させてるわ」


彼女は薬袋のラベルと中身を確認し、微量成分の測定を開始する。青い粉末、赤い液体、ほのかな香草の粉。表向きは無害に見える薬にも、微量の神経毒や中毒性の成分が混入されていた。


「組成が一定じゃない……これは、誰かが意図的に調整している」


ルクレールは眉をひそめ、書類をめくる。倉庫の管理記録に不自然な修正が見つかる。

「記録上は正常だが、実際には偽薬が紛れている……。王宮内部の誰かが仕組んでいる可能性が高い」


華は棚の一角に目を留める。そこには、前回分析した青色粉末と同じ成分の小瓶が隠されていた。微かに刻まれた印章……見覚えのある家紋だった。


「これは……宮廷内の誰かが、自分の存在を隠して操作している印……」


その時、倉庫の扉が軽く開き、背後に人影が差し込む。

「……宮野華か」


現れたのは、王宮医務官の一人。彼の瞳は冷たく、薬瓶を手にしている。

「君の推理力は認める。しかし、王宮の闇に踏み込むのは危険だ」


華は静かに薬瓶を手に取り、分析を続ける。

「危険でも、放置はできません。この薬の中毒性は計算され尽くしている。長期的に王族や側近に影響を与える可能性があります」


医務官は一歩後退し、低く唸る。

「……ならば君の言う通りに進めるしかないな。だが、気をつけろ。王宮の闇は、想像以上に深い」


倉庫から持ち帰った薬を薬局で再分析する華。クロードとリリスも手伝いながら、薬の組成や摂取ルートを整理する。


「偽薬は複数家系による連携か……それとも一人の策士か?」クロードが疑問を口にする。


華は答えず、メモ帳に図を描く。王宮の薬の流れ、偽薬の種類、組成の変化……すべてを線で結ぶと、ある一つの家系が浮かび上がった。


「……やはり、この家系が中心にいる。王宮の表には出ないけれど、影で動いている」


リリスは低く歌う。

「毒は人を惑わす。真実は、勇気ある者の手に……」


華は微かに笑む。

「薬で真実を暴く……。今度は、王宮の中心に近づく番ね」


窓の外、王都の月は青白く輝き、薬瓶の中の微かな青光が揺れる。小さな光でも、闇を切り裂く刃になる──華はそう確信していた。

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