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第1話:王都の小さな薬局

王都の朝は、まだ霧の残る石畳の上に冷たく光っていた。宮野華は、薄汚れた薬局の木の扉を押し開ける。そこは転生後、彼女が最初に手をつけた“自分の居場所”――ぼろぼろの薬局だった。


「……ここから、始めるしかないのね」


16歳ほどに見える少女の顔に、現代の薬学知識を詰め込んだ30代の頭脳が光る。棚に並ぶ薬瓶の埃を払い、彼女は小さなメモ帳を取り出した。


「患者の症状、薬の成分、そして……嘘の薬。」


最近、宮廷で偽薬が出回り、多くの貴族が原因不明の病に倒れている。表向きは“偶然の病”と片付けられていたが、華には原因が一目でわかった。薬の成分比率、保存方法、微量の毒素――すべて現代の化学知識で解明可能だった。


最初の患者は、近隣の商人の息子。微熱と目の充血、手の震え。市販の解熱薬では改善せず、診断を依頼されていた。


「ふむ……これは、偽薬のせいね」


華は薬草を取り出し、計量スプーンで慎重に分量を測る。心の中で化学式をなぞり、成分の相互作用を計算しながら、最適な処方を組み立てる。


「これで……体内の毒素を中和するわ」


薬を煎じ、患者に手渡す。数時間後、商人の息子は穏やかな呼吸を取り戻した。感謝の言葉と共に、華は小さく微笑む。


しかし、心の片隅には常に問いがあった――


「なぜ、王都にはこんなに偽薬が……?」


この小さな事件は、宮廷の闇を解く大きな糸の端に過ぎなかった。華は拳を軽く握り、決意を固める。


「真実を、処方箋で暴く……。」


薬瓶の中で光る液体が、まるで華の決意を映すかのように揺れた。

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