表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/19

第3話:第五魔法・初期展開──術者なき魔法の実験

──術者なき魔法。

それは、魔法が“人の意思”を離れ、構造そのものに組み込まれることを意味した。


 


◇ ◇ ◇ 


 


「座標(-3.0, 7.2, 0.0)、存在定義済み。

魔素補助:無し。演算環境:ゼロ層構造。準備完了です」


フィーネが報告し、クロエが魔導端末を操作した。


《命令:展開魔法式・第五プロト(β)》

《術者識別:不在》

《対象:Ω'(x, y, z) = 1における演算処理》

《実行開始──》


 


直後、静寂の空間に、魔力の波紋が広がった。


だが、それはこれまでのどの魔法とも違っていた。


火でも、水でも、雷でもない。


「概念」そのものが、空間に出現した。


「……魔法が……“勝手に発生”した……?」


「違う。“勝手に発生できる場”を、私たちが作ったのよ」


クロエの声には、微かな震えがあった。


「第五魔法の根幹は、“魔法式の実行者”を不要にすること。

条件を満たした空間座標に、“世界構造式”が自動的に魔法反応を起こす……」


「それって、まるで……」


「ええ。まるで“自然現象”のように、魔法が“起こる”。

──魔法が、世界法則に組み込まれるってことよ」


 


◇ ◇ ◇ 


 


それは、単に新しい魔法を生んだという話ではない。

“魔法が自然現象になる”という新しい世界の定義だった。


クロエは記録ノートを開き、そこにひとつの項を追記した。


「第五魔法の実験結果:成功。

術者不在下での魔法発動、および空間演算の自立性を確認。

以降、この技術は“構造発火型魔法”と呼称する」


 


◇ ◇ ◇ 


 


──翌日、クロエは新たな命令式を打ち込んだ。


《第五構造式・Ver.0.97b》

《条件:存在定義済座標Ω'内/魔素圧≧10単位/魔導干渉なし》

《実行:空間式発火・局所加熱》

《タイマー:10分後》


 


それは“予告された魔法”だった。

誰も詠唱しない。誰もトリガーを引かない。

だが、指定された時間に、指定された場所で、“魔法は確実に発生する”。


 


10分後──


《時刻到達》

《条件一致:Ω'(12.4, -2.1, 5.0) → True》

《魔法式発火》

《結果:小規模爆熱、対象破壊確認》


 


「すごい……本当に、“時間と空間だけ”で魔法が起きた……!」


フィーネは息を飲み、クロエは静かに頷いた。


「……これが、第五魔法。

魔法が“自然現象”として成立する、新しい魔法理論」


 


◇ ◇ ◇ 


 


だがその瞬間。


遠隔通信端末がけたたましく鳴り出した。


──【対魔構造監察局・通達】──

「実験区域にて未登録魔法発火を感知。使用者不在の発火記録により、

高位監察対象へ昇格。クロエ=リドモンド氏に対し、理論提出を命じる」


「……来たわね」


クロエの視線は、魔導端末の通信表示を見据えていた。


「第五魔法は、“理解されない魔法”──

ならば、次に問われるのは、“これを人類のものとして認めさせるかどうか”」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ