6日目 軌跡を辿って
蘇る記憶
すいとは一体?
___その男の子が
祥___お前だ。」
初めて聞いたはずなのに、
何故かストンと入ってきた
これは、間違いなく
俺の話だ
「その写真は本当にたまたま
あの子の中学校へ講演会に行った時に選抜の生徒少人数で集合して撮ったもんだ。
あとそれと___
ちなみに事件の通報者は
照史と菜子だ。」
「...っえ!?」
衝撃の事実に心底驚いた
そこに菜子さんが続ける
「縁って不思議ね。三好くんの写真もだけど
3年前に照史くんとカフェを開いて、そしたらその私たちの店に祥君がうちに来たの。」
次に照史さんが話す
「初めは半信半疑だったけど、名前を見て、目を見て、あの時の男の子だってわかった。
もう即決で採用。この子にはお腹いっぱい食べて欲しいって思ってて、この手でそれが叶えられると。」
最後にばあちゃんも話してくれた
「あなたを引き取った時はどう向き合うか本当にわからなかった。
あんなバカ娘の元に来させてしまって、私自身もあなたの存在を全然知らなくて、あなたにも彼女にも償っても償いきれないわ。
でもあなたはある日突然、何もかも忘れてしまったの。お医者様は精神的ショックからくるものだって。」
なんで___
なんでこんな大切なことを___忘れて...
ひとり悔やんでいると、
三好さんはさらに続けた
「もう1つ。
お前たちを襲った加害者2人はすぐに捕まえた。だが、そいつらは
祥___お前の両親だ。」
___頭が割れそうだ
「お前を連れ戻そうとしたんだ。1度通報されたからな。嫌がるお前をあの女の子は必死に庇った。そしてあの事件が起きた。」
___やめてくれ
「そして昨日学校前で捕まえたアイツは出所したお前の親父だ。」
「は?待てよ。出所って?...人1人死んでるのに
軽すぎないか?」
「............。」
初めて顔を伏せて黙り込んだ三好さん
そこに照史さんが語る
「それが三好が警察、刑事を辞めた理由だ。
そう、あまりにも軽すぎたんだ。
こいつは何度も抗議してた。だがそれは通らなくて挙句の果てには精神疾患と診断された母親は病院で治療を受けてる。牢には入っていない。」
それからは誰も
喋らない
一定な針の音だけが
ずっと耳につく
面会終了時間
そして現実逃避かのように
また眠った___
みんなが帰る直前に
どうしても確かめることがあった
もう十分であったが
確かめずにはいられない
「三好さん。」
「なんだ?」
「その女の子
名前はなんて言うんですか?」
「___すみ。
晴山 澄というらしい。」
♪世界中の希望のせて
この地球はまわってる
『すーみ。
ほら、言ってみ?』
『シュ...シュゥヒ...すひいぃ。』
『......ふふっ。
いいよ、じゃあ__すいで。
ねぇ!せっかくだし___散策しよ。』
『すいぃ、こえナニ?』
『これは猫、黒猫。......名前つけよか?』
『くおいね。』
『そうだね。
......よし!___クロにしよ!』
『ここ、なーに?』
『ここは神社。
ここで手をパンパンってしてお願い事をするの。いい子にしてたら叶えてくれるかもね。
あっ__お願い事はあんまり人に話しちゃダメだよ。』
『......うん。』パンパン
『ここ私の学校。』
『がっこ...ぼくもいける?』
『......わかんない。
でも学校は行けるだけ行くといいよ。
___大学とか。』
『すい。』
『んー?』
『すいは、ずっと、いっしょ?』
『さーどうかな?』
『え......ヤダ...いっしょがいぃ。』
『じゃあ約束ね。
君はちゃんと学校行って、働いて、
ひとつずつ___賢くなって
あとは___優しい人になるの。』
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!』
『うぅっ!...グッ...ゴホッゴホッ!』
『離しなさいよ!返してよ!うちの子よ!
あんたが外に連れてってるんでしょ!
お前も!!早くこっち来なさいよぉ!』
『しつけぇな!!さっさと離せや!
また警察にチクられたら、たまったもんじゃねぇ!』
『おい!!何してんだ!!』
『やっべぇ...おい!逃げるぞ!』
『待ってよぉお!!』
『なんて酷いことを...
きみ!しっかりしろ!』
『ボク、もう大丈夫だからね!
あの怖い人たちもうどっか行ったよ!』
『ばあちゃん......俺、大学行きたい。』
『まぁ大学?ええ、もちろん賛成よ。
でも急にどうしたの?何かしたいことでも見つけたの?』
『いや...ただ___何となく。』
♪今 未来の扉をあける時
悲しみや苦しみが
完全に戻った記憶
残酷すぎる現実
祥はこれからどうするのか?
評価、コメントお待ちしております。