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3日目 『2人の日課』

ついに開始した記憶を取り戻す2人のこれから

すいとの交流で祥にある変化が......

「あ!来たきた、待ってたよぉ!」

「......うん。」


本当に昼間でも見える。

新発見のことに驚きつつも元気に手を振る彼女は相変わらずのおかげで落ち着く。


「道案内、よろしくお願いします。」

「じゃあまずはあの商店街から行くか。」

「はーい!」




賑わう商店街を並んで歩いていく

自分はかなり見慣れた光景でも、記憶が無いすいには新鮮だろうな


「みて!果物!美味しそう。」

「あれは小物屋さん?レトロだねぇ。」

「何この置物!あはは」



目についたもの全てに反応して楽しそうにはしゃいでる。そんな様子を見てると、だんだん微笑ましく思えてきた。

だが今の目的は...



「なぁ、楽しいのは何よりだけどよく見ろよ。なんか心当たりあるものある?」

「んー今のとこはないかなぁ。懐かしい感じはするんだけど。」


今ひとつピンと来ていないようなので、もう少し先まで歩いていく。




「あっ...待って祥。」

「ん?どうした?」

「あそこ。行きたい。」

「......神社?」



すいが指さしたのは商店街を抜けてすぐにある小さい神社だった。


「ここ来たことあるの?」

「うん...ある。ここでいつもこうしてお願いごとしてた。」



まさかの出だし早々に当たりだった。

当時を思い出すかのように賽銭箱の前で手を合わせて静かに目を閉じる すい

終わったのかゆっくりと目を開ける



「なに願ってたの?」

「............。ふふっ知らないの?あんまり話さない方が願い事は叶いやすいんだよ。」

「そうなの?でも今更だろ、すいの場合。」

「あっはは!確かに!」


ちょっと失礼だった俺の発言を特に気にすることなくあははと笑いながら境内をおりていく





神社を抜けてからも時間の許す限り街を歩いた。だが残念なことに神社以降の収穫は特になく、2人で肩を落とした。


「うーん。今日はこんなもんだったかぁ。」

「思い出せたのはあの神社のことだけか。結構長い道のりかもな。」



いつもの公園のベンチに2人で並ぶ

そこへクロがやってきた


「みゃァ。」

「あっクロ。今日も美人だね。」

「みゃあああ。」

「なんだよ美人って。」

「え?だってほら、すごく綺麗な顔してるよこの子。しっぽだってスラッとしててさ、こりゃこの辺のオス猫にモテモテだね間違いない。」



「......っはは!なんだよそれ。」

「............。」



会った時から俺の知らない、考えない事ばかり話す

すいに遂に声を出して笑った。

すいも驚いた顔で俺を見つめてる

でもすぐに柔らかい微笑みに変わる


「だってほら毛並みだって野良なのにつやつやだし、クリクリのこの目とか。」

「確かに......ちょっとすいに似てる。」

「えっ...。」



「それよりクロは見えるんだな、すいのこと。撫でれてるし。」

「...ぇ。あぁそうだよ。動物たちには見えてるんだよ。」

「へぇ。またひとつ賢くなったかな俺。」

「そうだね。ついでに私も。」

「何に?」

「君が存外たらしの素質があることを学んだ。」

「は?なんの話し?」



すいは少し拗ねたような顔でこちらを睨む



「いいの!それよりバイトは?もう時間じゃない?」

「あっほんとだ。そろそろ行くわ。」

「うん。今日はありがとう。明日は何時にしようか?」

「明日はバイトないから、講義終わって15時から満足のいく収穫がでるまでは?」

「そんなにいいの?それ賛成。」

「じゃまたな。」

「......うん、またね。」






カフェ 憩


「おはようございます。」

「おはよう、祥。」

「祥君おはよう!」

「おはようございます。すみません、ギリギリになっちゃって。」

「全然セーフだよ。それに今日はずっと落ち着いてるだろうからゆっくり準備していいよ。」

「ありがとうございます。」



いつも通り業務をこなしていく

心なしか今日はなんだかからだ軽い

かなり歩いたし、なんならいつもより疲れてるはずなのに......



すると、


「...祥君、いい事でもあった?」

「え?いい事ですか?」

「うん。なんか今日明るいからさ!」

「え......。」

「俺も思ってたなぁ。雰囲気が柔らかいなぁって。」

「えぇっと...。」



普段の俺はそんなに暗かったのか

いや明るいなんてことはないだろうけど

そうして3人で話していると...




カランカランカランカラン


「たのもお、照史!コーヒーくれぇ。」

「江戸かここは。荒れてんな三好。」

「もうアイツらとやってらんねぇ!

さすがに頭にきたぞ!」

「どーどー。」


いつもより荒れた三好さんが来店した

また仕事の話だろうか、俺はカウンターから離れようとしたが



「......祥!ちょっと付き合え。」

「えっ?俺っすか?」



照史さんにアイコンタクトを送るも

「付き合ってやって」という返事が返ってきた


カウンターにまわり向かいあわせに立つ


「俺でよければ、話聞きます。」

「そうこなくっちゃ!」

「どーぞ。三好さんブレンド。」

「お、サンキュ菜子ちゃん。」



それからしばらく三好さんの仕事の愚痴が始まった。

かなり長いこと愚痴のマシンガントークしてたけど聞いてもあまり不快にならない。




「遺族の気持ち考えてやれって思うのよ。

推測だけの結論じゃ納得なんかできるかよ。」


「自殺を悪くないとは言わねぇ。でも悪いとも言えね。なのに警察は自殺と聞くとやれやれって顔をする。」


「そんなんは1番目につくもんなんだよ。

表情管理もできねぇのになんで警察学校卒業してんだよ。ったく。」





彼の話がとても人への思いやりに溢れてるものだったからだ



「凄いですね...三好さん。それだけ一人ひとりに向き合ってくれてるんですね。」


「.........。」



ボロっと零れた素直な言葉だ




すると、三好さんはニカっと笑って


「嬉しいねぇ。そんな正直に褒めて貰えんのは!」

「いやそんな。」



すると、俺の顔を少し覗き込むように


「祥...お前なんか今日、良いな。」

「え?」

「なんというかこう、素直って言うか柔らかいというか雰囲気が穏やかで。」

「それさっき照史さんと菜子さんにも言われました。」

「やっぱり?そっちの方がいいぜ。いっつも暗い顔してもんな。」

「やっぱそうなんすかね?」

「だが、今日はいいぞ。明るくて。これからはそっちの顔で頼むわ!」



色々話して満足したのか、三好さんは入ってきた時とは打って変わって上機嫌に帰っていった。



それにしても3人もの人に表情のこと言われるとは......

接客業だから気をつけないと



そういえば すいも...

俺が声出して笑った時、驚いた顔をしてた



素直なあの子の性格でも移ったのか?


いやぁー人たらしだったか祥のやつ。

天然は末恐ろしいですね。


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