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2日目 『付き合うよ。』

まだ混乱している祥

それでも彼女の話に真剣に向き合うとする


そんな祥にある人物と再会する


______夢だけど、夢じゃなかった


どっかの姉妹と似たセリフを思い出す。

俺の場合、正しくは夢みたいだけど夢じゃない



ベット上で昨晩のことをまだ覚醒しきっていない頭で思い返す






「記憶を取り戻すの

手伝ってくれない?」


ある程度予想していた提案をしてきた彼女


「手伝いって......やるとしてもどうすればいいの?」

「おや?結構前向きな検討で嬉しいね。」

「やるとは言ってねーぞ。」

「まあまあ。期待しておくよ。」



軽いノリでかわされるが、確かに手伝うにしても彼女自身なにも手がかりがないとできることがないのは事実



「本当にひとつも思い出せないの?」

「いや?あるにはあるよ。」

「なに?」


「私は _すい_。

君、名前は?」



そういえばまだ自己紹介していなかった



「俺は _雨野 祥 あまの しょう_。」




「雨野...祥くん。」


小さい声で俺の名前を復唱する

少しはにかんだような。


______すいは表情豊かだ。



「祥くん...んー祥でいい?」

「別にいいよ。」

「よし!」

「他には?覚えていること。」



自己紹介も終えたことで、本題に戻る


「確か...まだ学生!」

「やっぱり?制服だもんなそれ。」



すいはブレザータイプの制服で青のネクタイと濃いダークグレーのプリーツスカートに白のパーカーを羽織っている。

学生なのは間違いなかったが......



______そんなはやくに


すいの享年の若さに少し同情した



「あとは......あっそうそう、歌が好き!」

「鼻歌歌ってたもんな。生前になんか音楽やってたとか?」

「そこまではまだ...ごめんね。」



惜しいとこで情報が止まる

気づけば1人で悶々と考え込んでいた



そんな俺を静かに眺めていたすいがボソッと


「やっぱり君は優しいね。」

「また急になに?」

「だってやるとは言ってないって言うわりに今すごく考えてくれてる。」

「......あっ。」

「ふふ♪」



急に恥ずかしくなって、立ち上がった。


「とりあえず今日はもう帰る!」

「ありゃ、余計なこと言ったかな。」


自転車を跨ぎ、すいの方を振り返る。


「明日返事ちょうだい。約束。

___待ってるね。」



にこにこと俺に手を振る


______また明日。





明日ってもう今日か......


時間を確認すると

「あっやばい!」


学校の時間が迫っていた。

とりあえずもう少し考えよう。


______どのみち夜じゃないと行けないし




学校も終え、スーパーに買い出しに行く

いつも利用するスーパーの行き帰りには憩の近くを通る。

いつもはあまり遭遇しないけど


「あれ?祥君?」

「菜子さん、お疲れ様です。」

「偶然!買い物?」

「はい。菜子さんも買い出しですか?」

「そうそう!オレンジジュース切れちゃってて、ついでに晩御飯のおかずも。」



見てみると確かに袋はパンパンだった。


「持ちますよ。」

「え?いいの?ありがとう助かる!」


中には調味料もあって女性には重かっただろう




菜子さんと憩の表出入口から入る


「おかえりー...あれ?祥?どしたの?」

「お疲れ様です。そこで菜子さんとばったり会って。」

「荷物もってもらったの。」

「そっかそっか。ありがとうな祥!

飯食ってけよ!」

「いやそんないいっすよ。」

「いいからいいから!」

「ありがとうございます。」



カウンターで待っていると照史さんが見事な手さばきで料理をつくりあげていく。


いい匂いがたちこみ始めた時




「お?美味そうな匂いしてんな。」

「いらっしゃませー。おぉ三好。」

「三好さん!いらっしゃい。いつもありがとうございます。」

「いやいやこちらこそ。」



彼は常連客の三好さん

いつもスーツの上にジャケット代わりの着古されたコートを着ている。


少し口調は荒いがマナーもちゃんとしたいい人でこの店にも3年通っている。




「あれ?君、祥くん?飯食いに来たのか?」

「はい。おふたりのご好意で。三好さんいつもご利用ありがとうございます。」

「なるほどな。隣いい?」

「どうぞ。」


三好さんが席に着いたタイミングで俺のご飯が置かれた。

「いただきます。」

そう言って、照史さんのオムライスを頬張る


「美味そうじゃねぇか。照史、俺にも。」

「はいはい。ドリンクは?」

「コーヒー、甘いの。」

「了解。」



もはや友人のような会話

店長とお客といっても付き合いの長さが伺える




俺がオムライスを半分ほど食べ終わったとき

三好さんと照史さんが仕事の話をしだした。


「はぁああ。全くあの警官どもが。」

「なんだまた揉めたのか?」

「タラタラとした現場捜査だけで結論づけようとしやがる。明らかに刑事案件だろうが。」

「おいおい、あんまりそういう話を部外者の前でしない方がいいんじゃないか?」

「愚痴のちょっとぐらい出させてくれよぉ。」

「そんじゃ聞かなかったことにしよう。」



多分、あんまり長居しない方がいいな



「照史さん、ご馳走様でした。」

「お、お粗末さまでした。

今日ありがとうな!また。」

「祥くーん!ありがとう!」

「いえ。またお願いします。」



「じゃーなー祥。」

「三好さんもお疲れ様でした。」



憩を出て、息をつく


______そういえばあの人、

いつの間に俺の事呼び捨て?



嫌だった訳でないがある女の子を思い出す。

今あの公園で首を長くして待ってるだろう。





「~♫ あっ祥!待ってたよぉ。」

「うん。」


鼻歌を歌って昨日のように滑り台の手すりに座っていた。

今度は昨日のような飛び降りはせず、滑って降りてくる。


「飛ばないの?」

「君が心配してくれちゃうからね。」

「なんだそれ。」



ルンルンと少し弾みながら俺の前に歩いてくる


「返事は決まった?」

「............。」




______退屈で

______平凡で

______良くも悪くも刺激のない

______そんな日々が変わるかもしれない





それと


「うん。付き合うよ。」




もっとすいの話を


「ふふっ。やったね!」



聞きたいと思った。





「やったね。これからよろしく。」

「うん。......何をすればいい?結局昨日はどう動いていくか決められなかったけど...。」

「それなんだけど、ひとついい方法みつけたの!」

「え、なに?」



待ってましたと言わんばかりに楽しそうに話す

すいは「あそこ見て。」といい、指さした方へ見てみると


「...黒猫?」

「そ!」

「猫がいい方法?」

「実はあの猫ね、今日の昼間にこの公園に来たんだけど私あの子のこと知ってたの!!」

「どういうこと?」

「つまり、生前にあの子と会ったことがあったんだよ!あの子を一目見てあの子に関することいっぱい思い出したの!」



これは確かに...いい兆しじゃないか?

全く手がかりがなかった昨日に比べればいい滑り出しだ



「で?あの猫とはどういう関係だったの?」


「あの子の名前はクロ。

人懐っこい子でね、他にも名前があるだろうけど私がクロって呼んでて、生きてた頃もよくこの公園で撫でてたの思い出した!」


「へぇ。俺もこの辺に越してきてしばらく経つけど初めて見たなあの猫。」


「そうなんだ。あれ?この辺の人じゃなかったんだ祥。」


「といってもそんなに遠くないよ。実家は隣の県にあるし。それよりすい、良い話だ。」


「どゆこと?」


「すいはよくこの公園であのクロを撫でてた。公園に来ることは多かったのか?」


「そうだと思う。いっぱい思い出せたから。」


「じゃあかなり高い可能性で、すいはこの辺に家か学校があって馴染みのある所ってこと。

そして、一目見ただけで関わってきたことを思い出せるならこの街をとにかく散策すればいい。」


「...ぉおお!凄い祥!頭いい!」


「おぉ...ありがとう。多分そんな大した推理じゃないけどな。」




目をキラキラさせて、パチパチと拍手する すい

小さい音だけど、幽霊でも拍手の音がするのか


と、新しい発見にも少しわくわくした。




「じゃあ早速明日付き合って!」

「いや今からでもいいんじゃないの?俺は別に夜行動しても構わないけど、学校とかあるなら日を跨ぐ前に帰れれば。」



夜の行動になると時間はあまりかけられない


彼女はほとんどの他人には見えないから、学生の男が連日一人で街を練り歩くような絵面は少し避けたい



「夜?祥、昼間は忙しい?」

「え?昼?」

「うん。昼。」


キョトンとした顔で聞いてくるすい


「幽霊って昼間も出るの?」

「安直な......24時間営業だよ。」



驚いた

てっきり夜しか現れないと思っていた



「それに夜じゃあまり人もいないし、それこそ長期戦になっちゃう。」

「まぁ、たしかに。」

「君が1人喋りながら街を歩き回るなんて奇行扱いされないようにするからさ。」

「............。」



気の毒そうな顔をして俺を見つめる

まぁ、協力すると言ったからにはやり切ろう



「そこは頼んだ。じゃあ明日からな。」

「決定だね!何時ぐらい行けそ?」

「朝に講義が1つだけと17時からはバイトだからその間かな。」

「了解!バイト前に疲れされる訳のも申し訳ないから13時から15時の間は?」

「助かる。じゃあ明日それで。」

「よし!約束。______またあしたね!」



祥は手伝うことを決めましたね。

それに新たに出てきた三好さん


2人のこれからの日課が始まる

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