1日目 『光を遮らない彼女』
幽霊の女の子
触れなくても、外灯の光が彼女に遮られることなく自分に浴びてきていることが十分な証明だった。
「......は?」
「は?とはなんだ は?とは。」
少しクスクスと笑いながら、俺の反応を楽しんでいる。
______幽霊?何言ってんだ。
______いやでも、からだ透けてるし...
______だからなんで!?
幽霊なんて信じていないし、彼女がほんとにそうだと言うなら見るのは初めてだ。
でも脳が全力で理解するのを拒否してる。
こんなにも脳をフル稼働したのは久しぶりでショートしてきた。
「おーこんがらがった顔してる。あっはは!」
混乱している俺を置いて1人ではしゃいでる。
足をバタバタしながら肩を揺らすあの子から公園の外灯の光は確かにすり抜けている。
今この短時間でもあの子が照らされることはない。
「...ふぅ。で?本当に幽霊なの?」
「ん?そうだよ。ほら見ててね。」
そういうと手すりから突然飛び降りる
そこそこ高さがある滑り台をなんの躊躇もなく
「あぶねぇ!」
咄嗟に手を伸ばす。
が______
すっ
「...ほら。見ての通り。」
「あ......。」
確かに届いていた手は彼女の身体を掴みはしなかった。俺をすり抜けていった時にわずかに風を感じた程度。
「......。」
「......。」
しばらく沈黙が続いた。
それを破ったのは俺だった。
「本当に幽霊なんだなあんた。」
「お?やっと信じてくれた。」
ベンチに移動して並んで座った。
「君は優しいね。」
「え?なに急に。」
「だってあんな土壇場で必死に受け止めようとしてくれたじゃない?」
「結局受け止められてないけどな。」
「ふふ。そんなことないよ。その行動や気持ちが嬉しかったよ。」
「...そっか。」
こんなまっすぐに言われると少し照れくさい
「それでさ、なんで幽霊のあんたがここにいんの?俺よくここ通るけど初めて見た。」
少し意外そうに話を聞く彼女
「確かに割と最近だよ、ここにいるようになったの。多分だけど今日君に見つかったのは鼻歌が聞こえちゃったのもあるのかな?」
「でも俺は幽霊なんて見ること自体初めてだ。今までだって見えたことなんてなかった。鼻歌だけでそんな急に見えるもんなの?」
そう、一番の疑問はそこ
「鼻歌が理由ではない気がするけどなぁ......
ねえ君、最近死ぬようなことあった?」
「え?......ないけど。」
「ないかー。ほら普段見えない人が急に見えるようになるのって人の死を目撃する、死にかけるような出来事を体験するかもしくは______近いうち死んじゃうとか。」
「何それ怖。知らない。え...俺死ぬの?」
「さあ?それはわかんないけど、前前者ぐらいだといいね。これでひとつ賢くなったね?」
「他人事かよ。あとうるせぇ。」
謎を解くはずが、嫌なことを聞いた気分だ。
彼女とここまで話が弾むのも意外だったけど。
「もうひとついい?」
「なに?」
「さっきも似たようなこと少し聞いたけど、なんでここに来たの?」
「んー?それがねぇ......よく覚えてないの。」
「え?」
「自分が死んだこともそうなんだけど、死に方もどこでだったのかもよく思い出せないんだ。」
「それって成仏できない...みたいな?」
「そんなものかな?
じゃあ私はいわゆる地縛霊!?そうなの!?」
「俺に聞くなよ。」
その後も2人で頭を捻らせたが答えはでない
「そもそもあんたは成仏したいの?」
「それはそんなに拘りないんだよねぇ。」
「じゃあ未練があるって訳でもないのか。」
「でもね!」
「ん?」
突然、興奮気味にぐいっと前のめりなった
ぶつかることはないが、少し身体を引いた。
「思い出したいの!生きてた頃のこと!」
「生きてた頃...。」
「そう!」
パァっと効果音がつきそうな表情で話す彼女
「忘れたままなんて成仏してもしきれないよ。勿体ない!」
多分今後一生聞くことの無いフレーズだな
「そこで今さっき思いついたんだけど?」
「なに?ちょっと嫌な予感するんだけど。」
またニヤつく顔は今度はいたずらっ子のよう
「私の生前の記憶を取り戻すの
手伝ってくれない?」
祥は手伝ってくれるのでしょうか。
この後、登場人物が増えます!