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それと同時に、私は死にたいと思うようになってしまった。パトリックに2回既読無視された自分が惨めに思えたのだ。私がカナダ人じゃないからかとか、彫りの深い顔じゃないからかとか、タトゥーも鼻ピアスもないからかとか、そういったことを考えた。というのもシンシアには鼻ピアスがあり、腕や足など見える場所にもタトゥーがあったからだ。じゃあ私も整形してタトゥーを入れて鼻ピアスをつけたらパトリックに振り向いてもらえるのか、と思ったこともある。痛いことが大嫌いなのでそんな勇気はなかったものの。
それ以来、何度もシンシアのインスタグラムを見に行った。もうすぐ大学の後期試験だというのに、勉強に集中できなかった。毎日死にたいと思い、涙も流した。夜はまともに眠れず、ヨーグルト以外は体が受け付けなかった。好きだった人に彼女がいたくらいで死にたいなんてバカじゃないのかと思われるかもしれないけれど、21歳の私はそれくらい苦しかったのだ。パトリックを忘れようと始めたマッチングアプリで7人と会ったものの誰とも交際に至らなかったことや、婚活パーティーに行ったけれどカップリング成立しなかったことで、私は一生独身かもしれないという焦りがあったのも大きかった。
恥ずかしながら学生相談室のお世話になったこともあるし、カナダに留学してた友達に話を聞いてもらったこともある。彼女も失恋経験があるそうで、私の味方になってくれて心強かった。時間が解決してくれると彼女は言ってくれたけれど、確かに彼女の言う通りだった。
私にはパトリックの連絡先を消す勇気がなく、そのままにしていた。けれどある日、パトリックにFacebookでブロックされていたのだ。既読無視されて以来一切連絡しなかったけれど、シンシアと付き合っているからには他の女性の連絡先は削除しようと決意したのかもしれない。あるいはシンシアがブロックしたか、シンシアに言われてブロックした可能性もある。まあ私は彼らではないのでどういう事情かはわからないけれど。
最初はパトリックにブロックまでされた自分を無価値だと思っていた。好きな人にここまで拒絶されたことへのショックもあったのだ。しかし自分からブロックする勇気はなかったので、正直ブロックしてくれてありがとうという気持ちもある。これでもう見ないで済むと思っていたのだ。ついでにシンシアのインスタグラムのアカウントもブロックした。