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いまパートナーがいるかという話になり、パトリックは彼女がいないと言っていた。私が
「じゃあ彼女ほしいとか思わないの?」
と訊くと、パトリックが
「俺もう恋愛とか無理かもしれない」
と言っていたことも思い出す。今思えばその時点で脈なしサインは出ていたのだけれど、私は気づかないフリをしていたのだ。パトリックがバーで人混みから守ってくれたことにだけ焦点を当てていた。そんな私がパトリックに2回失恋した時の話をしようと思う。
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まず1回目に失恋したのは21歳大学3年生の1月だった。電車内でパトリックのお姉さんのインスタグラムのストーリーが流れてきたけれど、ストーリーに上げられた写真ではパトリックの隣に女性が写っていたのだ。その女性がパトリックの彼女であるシンシアだ。
実は1月になったばかりの頃も、パトリックと姉妹とそのパートナーでバハマ諸島に旅行に行っていた様子がインスタグラムのストーリーで流れてきたことがあった。その時もパトリックの隣にルイヴィトンの旅行カバンを持つ女性が写っていたけれど、従姉妹か誰かだろうと思い気にしていなかった。その女性がシンシアだったことを私は後に知ることとなる。
ではなぜシンシアがパトリックの彼女だとわかったかというと、私は興味本位と怖いもの見たさでシンシアのインスタグラムのアカウントを見に行ってしまったのだ。そこは見たくもないラブラブ写真や動画の宝庫だった。
パトリックが何らかの試験(おそらく、昇格試験のようなものだったかと思う)に合格したお祝いパーティーが開かれ、スーツ姿のパトリックと身体のラインに沿った黒い総レースのドレス姿のシンシアが抱き合う様子がインスタグラムのストーリーのハイライトに残されている。それ以外には私が留学していたエドモントンでのデートの様子として、ホテルに泊まった日の朝ご飯の写真やゲームセンターで犬の風船ーー持ち手が犬のリードのようになっており、本物の犬みたいだったーーを引く様子やキス動画などもあった。後は映画デートの時に撮った写真で、空軍の制服姿のパトリックにシンシアが後ろから抱きつく写真も投稿されている。
それらを見た後、私の心にはどす黒い感情が湧き出てしまう。私が留学してたエドモントンでデートかい、とか、私には既読無視だったくせに、とか、もういっそのことうまくいかなくなったら良いのに、とかそういったことを考えてしまったのだ。性格悪いのは承知しているけれど。