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小説フルコース

デザート:夕暮れ、展望台で

作者: 川里隼生

鉄郎てつろうって、怖いものはある?」

 照井てるいさんから、観光客で溢れた東京タワーのルックダウンウィンドウを前にしてそう聞かれた。僕は強がってこう返した。

「少なくとも高い場所は好きだよ。照井さんは?」

「私も高い所は好きよ。じゃ、行きましょうか」

 意地悪なことに、照井さんは僕の手をしっかり引いてガラスの上を歩いた。


 三年前、災害で家族がいなくなった僕を、照井さんの所属するNPOが支援してくれた。そのおかげで僕は今、東京で生活できている。でも、照井さんは僕を時々デートと言って連れ回す。大通りで手作りクッキーの感想を聞いてきたり、一緒にプリクラを撮ろうとしたり。本気の恋愛感情なんて持っていないくせに、まるで恋人みたいなことをしようとする。照井さんのそういうところは、僕は苦手だ。


 強がって甘いものが嫌いと言ったからか、照井さんのクッキーやチョコレートは少し苦い。「ちょうどいい味だと思ったんだけど」と照井さんは意地悪に言う。中学生の僕は、大人の照井さんには釣り合わないのかもしれない。

「ほら鉄郎。夕日が沈むわ」

 照井さんが西の空を見て言う。最近はすっかり日の入りも早くなった。照井さんより少し先に、僕の視界から星が消えた気がする。

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