初めてのライブハウス
スプラッシュにはいくつかの楽器ソフトがあって
それを合成して1つの曲にするという形だ。
美織は4つのトラックすべてを
エレクトリアル・リズムマシンにして、
高い音と低い音を分けて不思議な曲を作った。
ッタ、ッタ、ッタとリズムを取る。
これで作っている人はどんな曲を作ってるんだろう。
ネットにあるのはみんなワンパターンだ。
直美に聞いてみよう。
電話、電話。
「ねぇ、直美、ネット以外でソフトを使った人の曲を聞くには
どうしたらいいの」
「うーん、ライブかなぁ。なんばとかちっちゃなライブハウス行ってみたら。小さいとこだったら、個人でやってる人も多いかもね」
「わかった。ありがとう」
美織はネットでなんばのライブハウスを調べた。
「アメリカ村? これはだめね。うーん、木津市場の前? ああここだ。一回行ってみよう」
美織はほとんど大国町の木津市場の前にあるライブハウス、モンキーズに行ってみた。
入場料3000円ワンドリンク付き。
まぁこれは仕方がない。
たくさんのフライヤーをもらって扉を開ける。
ズダダダダダ。
入ってみるとスリーピースのバンドがやっていた。
観客は5人。
あ、このバンド、ベースがボーカルだ。
あれ、シンセの音。
これ、打ち込みだ。
美織は耳を絞るようにシンセの音を聞いた。
ギターの人はあまりうまくないわね。
ドラムはわやくちゃ。
へたくそじゃん。
美織は自分のことをほっておいて偉そうなことばかり思っていた。
このバンドが終わり、次のバンドが出てくる。
私、さっきのへたくそなバンドにお金を払っていてたんだ。
金返せバッカヤロー。
と美織が思っていると、
スプラッシュと同じ低温が流れ出した。
ボーカル、ギター、ベースのスリーピースの女子バンドだった。
あのギターの子、見覚えがあるな。
美織は音よりもギターをジーッと見ていた。
バッチリ目が合う。
ギターは照れて目をそらす。
あっはっは。可愛らしい子だ。
でも、同じ年くらいかも。
このバンドが終わり次のバンドが出てくる。
美織はドリンクをもらおうとカウンターに行った。
「すみません。ジンジャーエール」
ジンジャエールを飲んでいるとさっきのバンドのギターの子がやって来て
「西納さん、久しぶり」
と言われた。
誰、この子、うーん、わからない、でも久しぶりって、うーん、苗字も知ってるし。
美織が悩んでいると
「近藤美幸です」
と言った。
え、高校が一緒だった近藤さん? 生徒会長だった近藤さん?
美織の頭の中は混乱した。