パソコンを買った
美織はスプラッシュを手にして
ふらふらと歩く。
「ねぇ、これ日本橋で売ったら高く売れるんじゃないの」
「あかんって。もらったやつやねんから売ったらやらしいって」
直美が注意する。
酔っぱらった二人は南海電車の難波駅の1番ホームまで
よたつきながら歩き、
なだれ込むように高野線に乗った。
直美の家は美織の家のすぐ近くだ。
小学校の時から登校班も同じだった。
美織の地元は不審者が多いという理由で
小学校へは集団で登校するルールがあったのだ。
駅に着いてふらふら歩きながら改札を出る。
帝塚山の駅のホームは日本で何番目かに狭い。
踏切を渡ってふらふら歩いて教会を越えて
直美の家だ。
「おやすみ。音楽のソフト、ちゃんと使いなよ」
「よく考えたら家にパソコンあるけど、みんなのだ。自分のないわ。買うわ。ノートパソコンを。ヨドバシでええやんね」
「新品か。いいな」
「明日、会社終わってから買いに行くわ」
美織はそう言うと家に帰った。
美織の家は直美の家の三軒隣である。
翌日、パソコンを買いにヨドバシカメラに行った。
美織の会社から中央大通りを通って
四ツ橋筋に出て梅田に行く。
マッキントッシュにするかウィンドウズにするか一瞬悩んだが、
家がウィンドウズだったのでウィンドウズにした。
帰りは御堂筋を南下、26号線を通って
玉出を抜けて帝塚山だ。
家に帰ってさっそく音楽ソフトをインストールした。
ぜんぜん、わからない。
とりあえずエレクトリカル・ドラムマシンをいじくってみた。
長音と短音をいじくれるちょっと変わったリズムマシンだ。
ドラムと一緒にウィイーンという音が流れる。
面白い。
その日はずっとリズムを作って遊んでみた。